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第1章 「若草群像」
河野博子さん(喫茶チェーン勤務)
(2002年11月22日掲載)
人を喜ばせるのが原点

「笑顔で前向きに」紅茶専門店の運営に汗を流す河野さん=東京都銀座7丁目のマドレーヌ銀座店
 全国に千二百店舗を構える喫茶ビジネス大手ドトールコーヒーが、平成十二年から新たに手掛ける紅茶専門店「サロン・ド・デ・マドレーヌ」。河野博子=東京都世田谷区、平5卒=は、同年四月の入社と同時に、マドレーヌ事業の担当者に抜てきされ、第一号池袋店を皮切りに赤坂、晴海、自由が丘など七店舗を立ち上げた。

 昨年七月から今年五月まで、フラッグシップの性格を持つ銀座店店長も務めた。「夢や希望が形になった思い。開店時には感動した」と述懐する。

 マドレーヌのイメージは「パリの小いきなティールーム」。十七年に及ぶ欧州での生活体験が社長鳥羽博道の目に留まった。「センスを生かせ」と一任され、店舗設計のフランス人デザイナーとの折衝、食器選び、メニュー開発、店員教育など店の誕生から成長まで付きっきりで寄り添った。

 深夜残業も何のその。同僚から「男だったら良かったのに」と評されるほどの働きぶり。背景にあるのは「どんなに苦しくても楽しむこと。それが人を楽しませる」との心掛け。「人生で一番楽しい時期だった」信愛学園高(現浜松学芸高)音楽科の学生当時から、その信念は変わらない。

 父は楽器会社勤務、母はピアノ教師という家庭で、幼少時からピアノになじんだ。中二から信愛高教諭の佐藤安子に歌を習い、そのまま音楽科で声楽を専攻。

 エンターテイナーぶりは学園生活で花開いた。牛山公園での花火大会、結婚した教諭の“記者会見”、学校支給のコート不買騒動、教諭の名が付く金魚の飼育―。あふれる思い出につい、ほおが緩む。

 個の強さは欧州仕込み。四歳から五年間ドイツに住み、高校卒業後はフランス、ドイツ、イタリアで声楽や語学を学んだ。本場のオペラには心躍らせたが、滞在年数がかさむにつれて「音楽で食べていけるのか」との不安も膨らんだ。

 気持ちは趣味の料理に傾き、フランスの料理学校で資格を取得。イタリアでは料理店で修業した。結局、音楽の道はあきらめたが、「後悔はない」ときっぱり。

 音楽も料理も、人を楽しませる点で、同じ通奏低音を持つ文化。「人の喜びはわたしの喜び。それが原点なんです」。

(文中敬称略)
(木、金曜日に掲載します)


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