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第1章 「若草群像」
佐野 秀治さん(版画展新人賞)
(2002年11月28日掲載)
縛られず自由に創作

自作の絵本を広げる佐野さん=浜松市下池川町の浜松学芸高
 車のバンパーに鉛筆でペイントしたり、絵の具で染めた布を洗濯機にかけて作品化したり―。浜松学芸高美術造形科にいたころの佐野秀治=東京都葛飾区、平9卒=は「行動自体が美術表現」とばかりに、熱っぽく創作活動に打ち込んだ。現在は東京芸大大学院で絵画を学び、今年四月、日本版画協会展で協会賞に次ぐ山口源新人賞を獲得。内面から噴き出すような表現意欲を栄養分に、若い美術家の芽が吹き出そうとしている。

 「何にも縛られず、自由にやった。ここまでさせてくれる高校って、ほかにはない。今考えても勢いあったなあ」

 自画像、モチーフ、鉛筆デッサン。授業で美術のイロハを学びながら、自宅でも創作の手を休めない。自転車のスタンドに空きビンをくくりつけ、極彩色のコラージュを施して「ああ、格好いい」とうっとり。

 美術館や画集で巨匠の作品に触れ、「これどうやってるんだ?」と感動しつつ、手法をどんどんまねして自分の表現手法に加えた。級友や先輩は良きライバル。「友人の成長をすごいなあと眺めながら、メラメラと燃えていた」と振り返る。

 伸び盛りの創造力を支えたのは、担任の山内真由美や油絵教諭の千葉広一ら。受験美術とその他を分けて指導し、面白いものは面白いと認めた。「先生と会話をする中で、やる気が生まれた」と感謝する。

 東京芸大美術学部で油絵を専攻。周囲の技術に圧倒され、落ち込んで絵を描けなくなった時期もあった。踏んばれたのは「絵のほかに、自分には何もない」との気持ちがあったから。

 「世の中で、絵はそれほど役立つものではない。作家になっても売れるのはごく一部の人。でも、単純にやりたいからやっている。夢中で続けられるものがないのは、寂しいので」

 日本版画協会展の入賞は意外だった。「特に力を入れたわけでもないのに、何で取れたんだろうと不思議に思った」という。作品がどう評価されるかは分からない。心から納得できる傑作をものした経験もない。「だから、自分がいいなと感じる作品を一つでも作りたいんです」。

 来年三月、大学院修士課程を修了する。将来の進路は「言わないでおこう」と笑う。どんな未来図が描かれるのか、当の本人にも未知数だ。

(文中敬称略)
(木、金曜日に掲載します)


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