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「面白かった」「歌がうまかった」。終演後、児童は声を弾ませながら感想を口にした。体中に響く生の歌声に、気持ちの高まりを感じているようだった。 同市教委が市民オペラ協会に委託して実現した「小中学校オペラ巡回教室」。平成七年から十四年まで八年間で、市内九十六の全公立小中学校を訪問した。 市教委職員(当時)の日置美恵子が「生の音楽を子供に聞かせたい」と市民オペラ協会に相談したのがきっかけ。同協会では二期会の渡部成哉=昭44卒=と黒田晋也=昭48卒=を講師に招いたオペラの勉強会が進行中で、受講生の実地研修の場を探していた事情から、日置の申し出を快諾した。 「劇場での演奏とは違う。自らの意思で集まった客ではない。本物を見せなければ『こんなにつまらないものか』と、一生オペラ嫌いになってしまうかもしれない。責任の重い仕事だった」。浜松学芸高音楽科講師で、同協会理事長の玉川昌幸は言う。「子供たちに受け入れられるかが最大のポイントだった」。 いきおい黒田の演出はコミカルさを強調した内容に。公演は二部構成ながら、子供の集中力を切らさないため途中休憩を挟まずに続けた。八年間連続で出演したソプラノ歌手岸(旧姓山本)智子=昭53卒、浜松市蜆塚=は「子供の反応はとても正直。こちらの演技に気が入っていなかったら、すっと離れてしまう。子供に育てられたという思いが強い」と述懐する。 教室に携わった学芸高の卒業生や講師は計十人。かかわった期間は各自で異なるが、長期にわたり舞台経験を積んだメリットは大きい。若手歌手の芽が育つ傍ら、未来のオペラファンの種もまかれた。「劇場に足を運ぶ一つのきっかけを作ることはできたと思う」。黒田の表情には達成感がにじんだ。
(文中敬称略)
(木、金曜日に掲載します)
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