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与えられた時間は十五分。どんな手段を講じても良いから、率直に感情を吐き出す。自分と向き合い、言葉を探り、上手に気持ちが伝わらないもどかしさと戦いながら、腹の底に眠った自意識を引っ張り出そうとする。その努力こそ、音楽表現の原点ではないか―。田中の狙いはそこにある。 電子音楽科一年、長尾未來の「十五分の世界」をのぞいてみる。鑑賞した映画は「ロミオとジュリエット」。両家の抗争にほんろうされ、かなわぬ恋は二人の死を招き寄せる。「家の戦争が二人を引き裂いた。それでも一緒になったんだから、愛の力は強いよね」。 戦争と愛の力。二つの言葉から連想したのは「ヒロシマ」だった。「放射能がばらまかれ、六十年は緑が生えないと言われた。でも、前に広島に行った時、緑はあった。原爆を作ったのも人間なら、緑を戻したのも人間。人間は強いね」。 原爆から米同時多発テロに話題が移り、命の重さに思いをはせる。「何かの縁で生まれ、人に出会って、人生っていいよね。殺人とか、犯罪があふれてる。命を奪うなんてやっちゃいけない」。 どうしたら犯罪を止められるのか。必死で頭の中を探る。「例えばコンビニで万引しようと思っている人が、店内放送で自分の曲を聴いて思いとどまってくれたらすごいじゃない。音楽にはその力があると信じたい」。 最後に長尾はピアノの弾き語りで自作曲を披露した。つたない演奏だが、ありったけの意志が詰まった力強い旋律は、彼女独自の世界だった。 回を重ねるに連れ、生徒の言葉は豊かさを増していった。「一つの物事を見る時、自分の中にある意識すべてが関連してくるのが分かった」「自分の表現したい世界が、こんなに小さなものとは思わなかった」。級友に思いをぶつけることで、あいまいだった自意識の形が磨かれてゆく。 「意見を言う生徒の顔は輝いている」。田中は目を見張る思いで、若者の成長を見つめている。
(文中敬称略)
(木、金曜日に掲載します)
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