<32>
第3章「表現に挑む」
吹奏楽コースのチューバ三重奏
(2003年2月21日掲載)
個性発揮し金賞獲得

東海大会に向け技術を磨く鈴木君(手前)、栗原君(中央)、加藤君=浜松学芸高
 二月十六日、愛知県幸田町民会館。「最高の演奏をしようぜ」。気合を掛け合い、きりりと締まった表情でステージに立った三人が抱える楽器はチューバ。全長一メートル超、重さ十キロの金管が放つ迫力は相当なもの。客席のざわめきに気分を良くしながら、いざ演奏へ―。「ブォン」。三色の重低音がホールを震わした瞬間、三人にひらめくものがあった。「良い音だ。これはいける」。

 吹奏楽コース三年加藤翔太郎、二年栗原良紘、一年鈴木伸吾は、少人数の楽器編成で全国の頂点を目指す「全日本アンサンブルコンテスト」に、チューバ三重奏という珍しい形態で挑戦。西部地区予選、県大会を勝ち抜き、五県代表二十六組が集う東海大会に駒を進めた。

 加藤と栗原は浜松曳馬中、鈴木は同与進中の吹奏楽部でチューバに出会った。講師土屋史人は中学時の三人を教えた経験があり、「絶好の好機」と三重奏の編成を思い立つ。昨年九月にプロでも演奏が難しいというネリベル作曲「ルーダス」の楽譜を与えた。

 トランペット級の高音から、通常より深度を増した低音まで含む三楽章五分の構成。とりわけ曲の難易度を高めているのは「ベルトーン」の導入だ。八分音符の短音を順番に吹き分け、一つの旋律を編みだす手法で、わずかなリズムのずれが曲の破たんを招く。

 連日、放課後に約一時間の練習。スローテンポで演奏して音を合わせ、徐々にテンポを上げてアンサンブルを仕上げた。加藤は「人の音を聴いて演奏する技術が身に付いた」とはにかむ。音量豊かな後輩二人に引っ張られ、持ち味の柔らかな音色にメリハリが付いた。

 バンドの求心力は身長一八〇センチを超す巨漢の栗原だ。「チューバの華やかな音を見せつけたい」と並々ならぬ意気込み。押しの強い性格が音楽にも反映され、リズム感と音圧は人一倍。「音楽は聴かせるもの。説得力のある音が出た時、達成感を覚える」という。

 三人の結束力は大きな武器。特に鈴木は加藤と栗原にあこがれて入学しただけに、「演奏する幸せ」をかみしめている。「互いに信頼し合っているから、調子を合わせなくても全力で吹ける」と手応え十分。

 技巧派の加藤、力強い演奏の栗原、感受性豊かな鈴木。三つの個性が相まって、野太い重低音は波打つように幸田町民会館に響いた。全国大会出場の切符こそ逃したが、結果は金賞。「やってきて良かった」「感無量です」。吹っ切れた晴れやかな表情を浮かべ、三人はステージを降りた。

(文中敬称略)
(木、金曜日に掲載します)


静岡新聞へ