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第3章「表現に挑む」
教員による作品展・演奏会
(2003年2月28日掲載)
生徒と結ぶ“競作関係”

教員展を訪れた生徒に作品を紹介する今明さん(右)=浜松市早馬町のクリエート浜松
 冒険心が素直に現れた絵画だった。高さ三メートル、幅一メートルに及ぶ大きさ。海の揺らぎをイメージした不定型なキャンバス。水滴に包まれるように描かれた、両目を伏せる母親の容姿と幼児の赤ら顔。人間の生命力を余すところ無く描いた美術造形科教諭今明秀仁の母子像は、二月にクリエート浜松で開かれた「美術造形科教員作品展」のハイライトの一つとなった。

 ベニヤ板を切り抜いてキャンバスを作り、下地の布を張り付け、絵の具を塗る。作業は授業の合間を縫い、三年生の教室で行った。「作品が仕上がる過程を生徒にも見せたかった。教師も皆と同じ目線で、同じ美術をやっているんだということを感じてほしくて」。

 作品下部の格子模様や光沢を含んだ色使いが彩りを加える。「自分には無い手法。生徒の作品から引用させてもらった」という。教師もまた、教え子の創造力に触発され、作家としての腕前を磨いている。

 油絵、彫刻、日本画など講師陣八人の作品六十点が並んだ展示会。花、昆虫、田園風景など自然の造形美を活写した作品が多く、会場内の空気は総じて瑞々しい。今明の同僚瀬下雄高松本雄介は「高校生の躍動感、若々しさに刺激を受けた結果」と口をそろえる。

 同作品展は二度目の開催で歴史は浅いが、音楽科教員の演奏会「信愛コンティヌオ」は昭和六十一年から十一回を数える恒例行事。電子音楽科教員の演奏会も三回開かれた。

 校長中村誠は「高校の教員は指導者であると同時に表現者でなければならない。実力がなければ教えられないし、生徒や市民の目にさらされることで日々の緊張感が生まれる。生徒の中にも敬意を払う気持ちと、表現者同士の一体感が芽生えるはず」と狙いを打ち明ける。

 受験の節目もあり、生徒の創造力は高校時代にピークを迎える。「研ぎ澄まされた大胆な着想と感性は、つい計算して絵を描いてしまう自分を戒めてくれる」。十四年間、油絵の指導を続けてきた今明が無数の生徒と結んだ“競作関係”は、作家としての新鮮さを維持する触媒としても働いた。

 「今回の作品はぼくらしい表現になっている。このまま絵を書きためれば個展を開けるかもしれない」。高校生にも引けを取らない若々しい笑顔がこぼれた。

(文中敬称略)
(次回は3月20日からです)


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