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冨沢志帆(二年)は親指と人さし指を合わせて窓を作り、一面の空と海に構図を付ける。「港らしい空気感」を切り取る工夫だ。片山春子(同)が見詰める先には、船室に漁具を運ぶ漁師の姿。港の景色に「人が働く純粋さ」を思い重ねる。 スケッチ会は、全学年が参加する唯一の行事。友人と談笑しながら写生した高柳あゆみ(同)は「かちっとした感じじゃなくて、自由な絵が描ける」と言う。釣り人や漁師はただモチーフとなるばかりではない。「『何しているの』と声を掛けてくれた」。多くの生徒が口元をほころばせた。 年一回のスケッチ会が始まったのは平成十一年春。講師陣が教育方針の転換を試みた年だ。「学校は予備校ではない」。有名美大の入試対策に特化した授業計画に疑問の声が上がり、「自由な美術を行うすき間」の必要性を再確認。各種コンクールへの応募や美術館の鑑賞、市民イベントへの参加など、対外的な活動に活路を求めた。 千葉こずえ(三年)は昨年十一月、県高校総合文化祭・美術工芸部門に出品し、優良賞を獲得した。提出期限を過ぎても完成に至らず、絵を運ぶ車の中で描き足した労作「朝」は、朝日を浴びて活力を得る自らの姿を模写した油絵だった。 「自分だけの価値観を他人に認めてもらい、自信が持てた」。芸大への進学を希望する。「受験でも『これが自分の絵』と言える作品を描きたいと思う」。 浜松市東田町の浜松まちづくりセンターの公募に応じ、開館一周年記念の壁画を手掛けた宇佐美友理(同)は「自己満足にならず、見る人が楽しめる絵にしたかった」と話す。表面に綿やスポンジを張り付け、触って楽しむ仕掛けも施した。 美大受験は年を追って変わりつつある。確かな技術だけでなく、受験生の心の豊かさを推し量る傾向が顕著だ。「美術の手ごたえを生みだすコースを作れば、おのずと結果がついてくる」(今明秀仁教諭)。生徒の創作意欲に構図を付け、将来像をスケッチする―。講師陣の確信は力強い。
(文中敬称略)
(木、金曜日に掲載します)
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