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終章「学芸の未来へ」
音楽科
(2003年5月15日掲載)
マネジメント能力育成

主体的に定期演奏会の練習に取り組む音楽科生徒。演奏の機会を自ら演出する力を育てる=浜松市下池川町の浜松学芸高
 阿部舞子(三年)はピアノの伴奏家になるのが夢だ。「今は教わっている身だから良いけれど、このままでは音楽の仕事はできないという緊張感がある」。音楽の専門課程を持つ高校は全国に八十余りを数える。ただ才能に恵まれているだけでは、演奏家として成功することは難しい。その漠然とした不安と焦燥は生徒全員の意識に通底している。

 音楽科が今重視するのはマネジメント力の育成だ。専門教育で得た技術を発揮するため、演奏の機会と環境を作る「社会性」を育てる。定期演奏会の企画運営などを生徒に任せたり、希望者が期日と発表曲を自由に設定する学内演奏会を実施するなど、自主性を重んじた取り組みが新機軸となりつつある。

 「学校の行事などで伴奏を頼まれるとうれしい。音楽をやることに自信が沸いてくる」。学内外での度重なる演奏活動は、阿部の向上心に養分を与えている。

 フルート専攻の鈴木健二郎(同)は昨年、大手企業の音楽財団が開く夏期セミナーに合流。水戸室内管弦楽団で首席フルート奏者を務める工藤重典に学んだ。「フルートで人間の感情を表せるようになりたい」と鈴木は言う。工藤の一言一句に大きな刺激を受けた。

 刺激の源は一流奏者に限らない。「同じ目的を持つ人と仲良くなり、情報交換できた」。木管五重奏のレッスンも経験した。「他人の演奏を聞き、やっと自分の吹きたい音が分かってきた」とほおを緩める。

 コンクールへの参加も推奨している。ピアノ専攻の大平智代(同)は、一年次から毎日音楽コンクールなどに挑戦してきた。「目標に向かって真剣に練習する機会を大切にしたい」。

 コンクールではミスのない演奏が要求される。「技術を付けようとそればかり練習していたら自分の作りたい音楽を見失ってしまった」。気持ちが煮詰まり、演奏が乱れた時期もあった。

 「それでもピアノが好き。それに尽きる」。自分を見詰め、原点に立ち返り、壁を乗り越えてきた。「好きなことだけやって生活するのは大変。でも、やっぱり豊かで楽しい人生を送りたい。どんな形でも音楽にかかわっていたい」。

 音楽科が本当に養いたいマネジメント能力は、音楽を「生きる糧」としてマネジメントできる能力だ。

(文中敬称略)
(木、金曜日に掲載します)


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