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南米やイスラエル、ルーマニアなどで個展を開くなど世界的に活躍の場を広げている銅版画家柳澤紀子(61)=高11回、掛川市=。 芸術の世界に足を踏み入れたきっかけは、小学生の時に母親が買い与えてくれた油絵のセットだった。女性の自立を常に意識していた母親は「教育だけは身から離れない」と、画材や画集の購入、美術鑑賞には金を惜しまなかった。 中学時代から「将来は芸術の道に」と決め、祖母古橋いつ=高女4回、故人=の影響もあり、身近に感じていた浜松市立高に進学。美術部に入部し、文化祭で舞台装置を作ったり、展覧会で何度も表彰を受けたりした。 休日は東京の美術予備校や美術館に通った。東京芸大に進学し、三年の時、転機が訪れた。駒井哲郎氏の作品に出合い、「銅版画の物質感や禁欲的な感じにひかれた」。 結婚や子育てなどでほとんど創作活動に取り組めない時期もあったが、今はほぼ毎日、アトリエにこもる。制作に取り組まなくても、アトリエで過ごすことでアイデアがひらめく。「今が芸術家として精神的に一番充実して制作に打ち込める」 自分の手で銅版を彫り、自分の手で紙に刷る作業を丁寧に進める。「現代のメッセージを体に込め、発信したい」と話す柳澤は自分の国の文化にもこだわり、和紙を作品の中に取り込んでいる。「身体を媒体にした作品づくりをしているので、肉体にしかないものを作品に取り入れたい。作品のどこかに温かさや救いを表現したい」と柳澤は語る。 一方で、インターネットが普及した現在の若い世代の感性やバーチャルの世界も気になる。若い世代と空間や時間を共有しながらも、自分の世代しか表現できない作品を発信し続けている。 柳澤は十年ほど前から、和紙、アクリル、エッチングなどを駆使したミックスメディアを取り入れた作品を制作している。今年、山口源大賞を受賞した「水邊の庭」は柳澤が今後も取り組み続けるこだわりのシリーズだ。 二十一世紀は男女が同じ目線で、良い個性を引き出し合える社会を望む。柳澤は「あくまでもアーティストとして生きたい。『納得のいく作品を作った』と言える人生を過ごしたい」と話す。 (文中敬称略)
(水、木、金曜日に掲載します)
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