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第5章「教育者の系譜」

体当たりで生徒と勝負
「体を張って子供と勝負すれば、なんとかなるもの」と話す土屋勲さん=浜松市常盤町のイーステージ浜松内市教育長室
 浜松市の市教育長室を突然、ランの花を持った年配の女性が訪れた。誰かと思えば、小学校時代、大好きだった恩師。つい最近、その恩師の思い出を新聞に書いたばかりだった。「立派になられて。一言お礼を言いに来ました。あなたを教えて教師みょうりに尽きます」。土屋勲(昭35卒、三島町)には忘れられない日になった。

 どうしても教師になりたかった訳ではない。テレビドラマ「事件記者」がはやった高校時代は、新聞記者にあこがれた。「数2は赤点を取ったし、さえなかったですよ」と述懐するが、政経教諭の坂口金光(故人)の「社会だけは優秀だなあ」という言葉に押されるように、静大を出て社会科教師の道に進んだ。

 平成十二年、浜松市立曳馬中の校長から市教育長に。それまで県立高の校長経験者の指定席だった教育長に、義務教育の現役校長から就任したのは初めてだった。現場感覚を重視して、次々に斬新な手を打っている。

 その一つが小学校高学年を対象に、担任以外の教諭が一部教科を担当する教科担任制の導入。「それぞれの専門を教える方が力も入るし、教科の面白さが伝わる」

 子供の基礎学力の低下が指摘されている。それを受け、この二月、市内の小中学校九十六校で、基礎的学力の定着を把握し、授業の方法を吟味するための定着度調査を実施した。

 「ひと昔前とは学力観も違い、何とも言えないが」としつつ、「本当に低下しているのか、継続的に調査を実施することで見えてくると思う。足りないところが分かれば、徹底的に補充する。それが大事」と狙いを話す。

 浜松ならではの教育としては、英語と情報教育の充実を上げる。習熟度に応じて九級から一級を認定するパソコン検定を始めたり、来年度からは中学校のALT(外国語補助教員)を三倍以上の十三人に増員し、英会話能力の向上に力を注ぐ。

 端正なマスクに似合わず、教員時代は荒れた学校の生徒指導で鳴らした。「体を張って子供と勝負すれば、なんとかなるもんです」。

 「荒れた子供ときちんと向き合うこと。そして教師集団が一つにならなければ、学校は良くならない」。教師の力次第、という。「教員としての資質がなかったり、仕事に喜びを感じなければ、どんどん他の道へ行けばいい」と手厳しい。

(文中敬称略、題字は古橋広之進さん=昭和20年卒=)
(火―木曜日に掲載します)

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