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第6章「独創に生きる」

趣味の世界で勝負する
「本業は不明」と語る水野良太郎さん。仕事は漫画やエッセーなど幅広い=東京都内
 ミステリーファンなら、フランスで活躍したベルギー出身の推理作家ジョルジュ・シムノンのベストセラー「メグレ警視」シリーズの表紙イラストを覚えているかもしれない。西高時代、独学でフランス語をかじった水野良太郎(昭30卒、東京都)の代表作の一つだ。漫画やエッセーなど多彩な分野で活躍する今も、フランスにゆかりの仕事は多い。

 四日市に生まれ、鈴鹿で終戦を迎えた軍国少年は、夢を失い、「趣味で生きていく人間になろう」と決意。西高に入学すると、好きなことにのめり込んだ。

 新聞部で漫画を描きつつ、映画館に通い詰め、フランスの巨匠ルネ・クレマンの「禁じられた遊び」などに心を動かされる。「洋画を中心に年間百六十本は見ました。家に帰れば辞書を頼りに、ペーパーバックにかじりついた。米軍放送もよく聞いたし、スラングには誰より詳しかった」

 元来がちょっとあまのじゃく。英語一辺倒の周囲を見て、「違うことをやってやろう」と成子のカトリック教会にいたフランス人神父からフランス語を学ぶ。毎週二時間、三年間休まず通い続けた。ここで身につけた素養が、その後の仕事につながった。

 自らを「多趣無芸の本業不明」と評する。武蔵野美術学校(現武蔵野美術大)在学中に、「文春漫画読本」や「漫画読売」などでプロデビュー。このころから、NHKのテレビ番組「カメラ・リポート」のリポーターを務めたり、日本テレビの人気ワイド番組「イレブンPM」に出演を重ねた。

 現在は本のさし絵などのほか、紀行文やエッセー、書評などを手掛ける文筆家としても活躍し、趣味が高じた鉄道模型に関する著述も多い。著書に「漫画文化の内幕」(河出書房新社)、「鉄道模型の愉しみ」(東京書籍)など。日本ペンクラブ会員でもある。

 「物書きになって面白いのは、自分の体験が、何もかも仕事に直結すること」。二十歳そこそこの若さでデビューしたころ、先輩に連れられはしごした銀座のクラブも、人間観察の場だった。「社用族がお得意さまだったころ。人の金で大きな顔してるなあ、とかね」

 「入院して痛い思いをしようが、それが原稿になる。書いて元を取ろうと考えると興奮して、大変さも忘れてしまうほど」と常にプラス思考だ。

 同じ分野のOBにはほかに、小学館の学習漫画など児童向けの作品を手掛ける小林たつよし(昭49卒、本名小林辰禎、鎌倉市)がいる。

(文中敬称略、題字は古橋広之進さん=昭和20年卒=)
(火―木曜日に掲載します)

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