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 宣誓する伊藤主将 |
「十六」。
平成二年春、甲子園組み合わせ抽選で主将の伊藤孝充(平3卒)が引き抜いたくじ番号には、特別な意味が込められていた。
選手宣誓―。全国に何十万人といる高校球児の中で、この大役を務められるのは一年にたった二人。春と夏、それぞれの開会式で日本中の視線が一身に集まる晴れの舞台だ。浜商は春夏通算十四回目の出場でついにめぐり合った。
あの日、浜商が宿泊に利用していた兵庫県宝塚市の旅館「若水」のロビーには大画面テレビが用意され、選手の母親たちが陣取っていた。抽選は進めど進めど、「十六」は誰の手にも掛からない。「もしかして」「引くのでは」。そして伊藤の番。右手を動かした次の瞬間、伊藤の満面の笑みが「若水」の画面に映し出された。「やった」「本当に引いた」。彼の表情だけで「選手宣誓」を確信した母親たちは、手を取り合って喜んだ。
開会式当日。伊藤の両親、茂さんと貴子さんは関係者に招かれ、バックネット裏でわが子の様子を見守った。近くには式のゲストとして、当時まだ角界に入りたての若貴兄弟の姿も。茂さんは「夢心地というか、ふわふわした気分だった」と振り返るが、「でも昨日のことのように覚えているよ」と話す。十四年の歳月。フェンスを通して見えた息子の様子は「何とも言えない緊張した面持ちで忘れられない」。
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開会式。伊藤は名前を告げられると、小走りにホームベースに向かった。背後に出場校の全主将が各都道府県優勝旗をかざして半円を作っている。伊藤はその中央に陣取り、切り出した。それは、三年間の厳しい練習を回顧しながら、ナインとともにありったけの思いを詰め込んだ宣誓文だった。
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「全国高校球児の夢、あこがれの甲子園に集まったわれわれ選手一同は、感謝と愛情の気持ちを大切に力強くさわやかに戦い、今後の人生の踏み台として飛躍することを誓います」 (文中敬称略)
(水曜日に掲載。題字は沼倉昇校長)
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