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農事組合法人「富士農場サービス」代表理事の桑原康(昭46卒)は世界に知られる豚の人工授精の第一人者。昨年、国内最大級の家畜改良施設「富士A・Iセンター」を富士宮市北山に建設した。世界の優良血統雄豚百五十頭、雌豚百五十頭を衛生的な環境で飼育し、豚精液の全国宅配、種雄豚や人工授精用機材の販売などを行う。 豚精液の全国宅配は昭和五十年代後半、日本で初めて事業化した。当時は人工授精の普及率が低かったため、家族や仲間は「そんなことが商売になるはずはない」と否定的だった。「人が駄目と言うことほどやってみたくなる」のが桑原の真骨頂。着実に販売経路を築き、五年前には採算軌道に乗せた。 凍結が難しく、保存がネックだった点も希釈保存剤の改良でクリアした。桑原らが開発した「マルベリー3」は昨年の全ヨーロッパ畜産器材展で千三百社中二位になった。 桑原は「ここまで来られたのは地域の協力があったからこそ」と、産地の伝統を挙げる。富士地区は、昭和初めにかけて県内一の豚産地。現在の出荷量は県内十位だが、「人材は全国で五本の指に入るほどレベルが高い」と胸を張る。 ノルウェーやオランダなどでは豚の人工授精普及率が八割を超えるが、日本はまだ二割に満たない。桑原は「よりおいしい豚肉を消費者に届けるためには人工授精による個体改良が最も効果がある。せめて五割から六割程度まで普及させたい」と意気込む。人工授精の有効性を理解してもらうため、全国各地での講演や専門誌への執筆、学会発表にも力を注ぐ。 佐野静夫(昭44卒)は富士宮市大中里で自然養鶏を実践する「青見牧場」を営む。風通しがよく、明るい鶏舎には大規模養鶏場のような一羽一羽を囲うケージがない。鶏はのこぎりのひきくずや、わらが敷かれた上を自由に走り回る。「平飼い」と呼ばれる飼育法だ。 鶏卵用の「ネラ」種(オランダ原産)や肉鳥「駿河若シャモ」種など約八百羽を飼う。無農薬飼料にこだわり、抗生物質などの添加もしない。あくまで自然にこだわった鶏卵は「黄身がはしでつかめる。生がおいしく、かつ安全」。佐野の自慢の品だ。 佐野は「循環型農業」の確立に最終目標を置き、鶏卵とともに、肥料に鶏のふんを使った有機野菜も販売する。そのほとんどが直販だ。付加価値を付けた加工販売にも力を入れる。「自家製有機野菜に米、シャモ肉と卵で、究極の親子丼を作ってみたい」と佐野。ことし就農した長女智子(平10卒)と力を合わせて夢の実現にまい進する。 (文中敬称略) 【注】カッコ内は卒業年。 |
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