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長倉は「二十一世紀の日本には、一見矛盾する要素を調和させる“複眼的視点”が必要だ」と強調する。「技術者として活躍できても独創的な仕事が生まれないのは、学問の総合性が欠けているから。かつては理科専攻でも、西田幾多郎の『善の研究』を当たり前のように読んだ」 現在、理事長を務める神奈川科学技術アカデミー(KAST)は、基礎と応用、地域と地球規模といった両面を重視する産官学連携の研究・教育施設。持論が生きている。 長倉は大正デモクラシーと軍国主義がせめぎあう昭和初期を、沼中で過ごした。「二つの価値観がぶつかる緊張感の一方、学問的な成果に対して尊敬を払った時代」と振り返る。 沼津市柳沢生まれ。片道八キロの道を雨の日も自転車で通った。数学の教員伊藤新七郎(故人)と出会い、幾何の難問で頭をひねるうちに考える楽しさに目覚めた。「幾何は補助線をどこに引くかがポイント。線の引き方に気付き、正解した時の満足感が忘れられない」。論理的な思考、一つの解にたどりつく喜びが研究者へと導いた。 忘れられない級友に古谷弘(昭12修、故人)がいる。四年で一高に転じて東大に入り、理論経済学者として歩み始めたが、若くして亡くなった。「先生から“古谷のようになれ”とはっぱをかけられていた。生きていれば世界的な学者になったはず」と惜しむ。 効率や経済が優先され、夢やロマンを見失いがちな時代。長倉は「自然科学の中にはまだまだ挑戦するものがある」と目を輝かす。「物を考えるためには孤独に耐えることが大切。じっくり本も読んでほしい。情熱を持ち勇敢に挑戦することを忘れないで」と後輩たちに呼び掛ける。
(文中敬称略)
【注】カッコ内は卒業年。
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