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デザインの素晴らしさと共に、多民族国家のインドネシアでは、模様が部族の世界観や慣習、島の歴史を反映していることを知った。「ただの装飾ではなく、精神的な世界が隠されている」と奥深さに魅きつけられた。以後、約三十年にわたり毎年、インドネシアの島々の染織を訪ね歩いた。 今年三月、旅の集大成として「染織列島インドネシア」を出版。三年ほどかけて執筆した力作だ。「私が出来ることを考えた時、彼らのことを書いて紹介しようと思った」と感謝の気持ちがこもる。 渡辺は東京・杉並の染織工房「イカット」を主宰し、二十人ほどの生徒に染織を教えている。自然をモチーフにすることが多く、柔らかな色遣いが目を引く。年に一度、テーマを決めて作品展を開いている。 東高時代、心理学にも興味を持ったが、染色作家だった父親が生前、「これからの女性は一生できる仕事を持った方がいい」と話していたことを知り、渡辺は「美しいもの、創造の世界もいい」と美大への進学を決めた。 女子美大芸術学部工芸科を経て、織物会社に三年勤める。量産の面白さも知ったが「自分の作りたいものを作りたい」と創作意欲が高まり、退社。その後、かすりの着物を製作する会社で嘱託のデザイナーとして働くが、「着物の会社では年間二百柄が必要。だんだん自分が空っぽになってくる」と行き詰まりを感じたころに、知人の織物作家からインドネシア行きを誘われた。 「旅は最初に会った人の印象で決まる」と振り返る。初めてのスンバ島では、村のリーダーが渡辺らを歓迎し、代々伝わる布を快く見せてくれた。インドネシアの奥地を訪ねる旅は危険も苦労も多かったが、「日本人から見れば“ないないづくし”の生活でも、これだけ心豊かに暮らせる」と胸打たれたことが、何より忘れられない。
(文中敬称略)
【注】カッコ内は卒業年。
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