<16>

 第3章 農業に生きる 

茶(1)

地域茶業の振興に貢献
 沼津茶の礎は明治時代、愛鷹山ろくの払い下げに心血を注いだ江原素六翁が築いた。茶農家たちはその意思を引き継ぎ、地域茶の発展に研さんの日々を送る。

 沼津手揉(もみ)保存会は発足から約二十年。製茶機械には出せない手もみ茶の妙味を、後世に伝える使命を担う。会長の仲西由雄(昭35卒)=沼津市青野=は会員四十七人の中でただ一人、師範資格を持つ。「さっぱりとは違う、涼しい香りと甘みがある」と手もみ茶の普及に懸ける。

fujinomiya
手もみ茶の魅力を笑顔で語る仲西さん=沼津市青野
 熱気漂うホイロの前で茶葉を揉み込む作業は、長年培った技術と腕力の集大成。仲西が肉厚な両方の手のひらで茶葉を力強く転がすしぐさに、会員の注目が集まる。「まだまだこれから。外観や滋味、香りを競う全国手もみ茶品評会で一等をとるまで、引退はできない」と奮い立つ。

 卒業後旧国鉄に進んだ仲西は、民営化の動きを機に農業へ転職。「自由が利くし気も楽になった」と農業で生きることを誓った。保存会には発足初期から参加し、昭和五十八年の献上茶謹製で一気に隆盛を極めた活動を支えてきた。年七回の手もみ講習会は会員の出席率も高く、仲西は「ここ数年若手や女性の参加が目立つ」と意欲的な後継者の成長に目を細める。

 平成十三年に静岡市で開催した「世界お茶まつり」など茶の国際交流が進む。仲西もイタリア遠征して手もみを実演するなど、茶のPRに積極的だ。

 素六翁の遺徳にちなんで昭和六十年に始まった献茶式も保存会の恒例行事の一つ。副会長の片山武士(昭38卒)=沼津市根古屋=の茶園で一足早く朝摘みしたハウス栽培の茶が使われる。手もみ用の高品質の茶作りに片山の維持管理にも余念がない。

 県茶業会議所専務理事の勝又章(昭33卒)=静岡市=は、平成十一年に発足した「県茶品種普及協議会」の会長。緑茶の主力品種「ヤブキタ」に並ぶ新品種の開発・普及を推進する。国の補助を受け、三カ年計画で県内の茶生産体制の抜本的改革に取り組んできた。

 勝又は「県内で九割を占めるヤブキタ偏重は、流通と経営面で弊害がある。品種の幅を広げて多様化する消費者のニーズに対応していきたい」と茶業発展に目を注ぐ。勝又は県立農林短期大学校長、県農業試験場長なども歴任した。

(文中敬称略)

【注】カッコ内は卒業年。


静岡新聞へ