<5>完

 夢を拓く (平成6年度―15年度)

新しい商業教育求め


大成功だった初の「市商デパート」
 快晴のその日、静岡市の午前九時の気温は八・八度。師走の寒さの中、開店三十分前の八時半には、既にデパートとなる校舎入り口にはズラリと客が並んでいた。

 平成十二年十二月九日。十一代校長鈴木奎次の発案から七年を経て、ついに「市商デパート」が開店した。「おはようございます」「いらっしゃいませ」。何度も何度も練習した大声の挨拶で客を迎える実行委員の生徒たちは、苦労と不安の日々が報われた感動で涙ぐんだ。

 担当教師の一人梅原圭二は「生徒たちがプロとしてデパートを経営しなくては、商業高校ならではの新たな教育的成果は生まれない。単なる体験学習と違うことを教師や生徒に浸透させるのに時間をかけた」と強調する。

 初代社長を務めた大森昭仁=平13卒=は仕入れ先開拓の苦労が忘れられない。「最初は文化祭の模擬店ぐらいに思われた。企業に何回も足を運んでやっとビジネスとして取り組んでいることを理解してもらった」。そんな時に何より頼りになったのは、各企業で頑張っている先輩たちだった。

 デパートの本格的な準備が始まったのは前年六月。店舗(売り場)は二十八と決まり、実行委員を中心に全生徒が営業・経理・企画宣伝・仕入・販売・人事・会場管理などを分担した。販売研修ではプロの指導を受け、店先にも立った。

 九、十の二日間の営業成績は来客一万六千人、売上二千五百五十五万五千七百二円、総利益三百七十二万八千四百六十一円。売上目標の二千万円を軽く突破した。大森は「終わった後の達成感、感激を生徒だれもが強烈に感じた」と振り返った。

 「市商デパート」は商業教育の柱に育ち、十三代校長中村羊一郎はその成果を携え、「高大連携推進」を打ち出した。これは生徒・教師だけでなく市民も参加する、県内の大学と共催のビジネス講座として実現。交流を通じ、商業高校で簿記検定資格を取得して大学で専門教育を受ける優位さもアピールした。

 常に新しい商業教育を求めて果敢に挑戦してきた五十年間に巣立った卒業生は一万五千二百七十三人。「ねばりの市商。その言葉通り地道に努力する人ばかり」と同窓会長の望月数男=昭33卒=は誇らしく思う。

 二十七日には関係者三千人が静岡市のグランシップで記念式典を開き、良き伝統の継承と新たな挑戦に歩み出す。

(敬称略)

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