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第1章 卒業生の思い

(2003年4月8日掲載)
思い途切らせては駄目
作家
 村松友視氏(62)

作品とふるさととのつながりを語る村松友視氏=静岡市内

 村松友視(昭34卒)。静岡高に入ると硬式庭球部に入部した。コートを平らにするローラー引きと球拾いに明け暮れる毎日だった。ある日突然、コート横のプールから大きな声が響いた。「女みたいなことやっていていいのか」。繰り返されるあざけり。間もなく、退部した。「毎日、言われて、そうなのかという気分になった」

 進学先を文系と決めてから、理系を選んだ友人と会う機会が減った。一人で静岡市内の骨とう屋をぶらぶらする時間が増え、詰め襟の学生服姿で古銭などを品定めした。店主が褒めた。「あんたいい趣味だね」

 大正から昭和にかけて活躍した祖父の作家村松梢風(明40卒)が本県出身だったことから、卒業まで祖母と清水で暮らした。「梢風の孫というBGMがいつもどこかに流れていた。大人の中にいて骨とう趣味も身に付いた」。子どものころから両親ともに死亡したと聞かされていたが、母は生きていることを知った。「心にぽっかり穴が開いたようだった」

 慶応大学を卒業後、中央公論社に入社し、作家、芸術家との交流が広がった。その一人、コピーライターの糸井重里がプロレス関係の寄稿を持ち掛けた。書き上げたのが「私、プロレスの味方です」。

 「私―」が評判を生み、執筆活動に本格的に取り組んだ。昭和五十七年、「時代屋の女房」で直木賞を受賞した。「海外取材から戻ったばかりの時だった。角川の『野性時代』編集部にいた見城徹さんから、絶対に書かないと駄目と言われ、締め切り間近に急きょ書き上げた。作家と共同作業をして登場人物の個性を鮮やかに演出するすごい編集者だった」

 「時代屋ー」は、古道具屋に突然、現れた女性を軸に展開する。「意識して書いた訳ではないが、後で考えると主人公の真弓は天女のイメージ。ふるさととつながっている。時代屋も静岡の骨とう屋の影響かな」

 静岡を主舞台にした本紙朝刊小説「悪友の条件」(平成九年四月一日―十年三月三十一日)も話題を呼んだ。「運命は自分では決められないが、思い続けていると、何らかのきっかけで思いが実現することがある。偶然の積み重ねで作家になることもある。思いを途切らせては駄目」

(文中敬称略)

(火、水、木曜日に掲載します。)



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