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第1章 卒業生の思い

(2003年5月1日掲載)
放射線治療の質を追究
癌研究所物理部長
 伊藤彬氏(58)

質が求められる時代だと指摘する伊藤彬氏=東京都内

 伊藤彬(昭38卒)。百年近くにわたり、がんの研究、治療に取り組む癌研究会(東京都豊島区)の一角に癌研究所がある。放射線治療の基礎研究を担当する物理部の部長を務めて十四年になる。

 「思い切った言い方になるのですが、一九五〇年まではがんは不治の病だと苦しみ、二〇〇〇年まではなぜ、がんになるのかと研究した時代、二十一世紀になってがんは治る病気になった」。がんをめぐる歴史を大きくくくった。

 静高時代はバレーボール部に所属した。九人制から六人制への移行期で、新戦術を熱心に習得した。放課後、コートで汗を流した後は図書館で教科書を開いた。「運動と勉強を両立させたかった。エネルギーと気力に満ちていた時期で、やり抜くことができた」。当時の諏訪卓三校長が印象深く、「見識が広く、生徒のことを考えてくださった。頑張り過ぎてノイローゼ気味になった時、寛大に包んでくれた」

 東大に進み、原子力工学科を選択した。「長年、結核治療に携わっていた父が、私が小学生のころに死亡した。民事裁判でレントゲンの放射線を浴びたことが原因と認められた。父のようなことは繰り返してはならない、放射線の安全な利用を研究しようと決意した」

 東大医科学研究所で中性子線を利用したがん治療を十数年、研究したが、思うほどの結果は得られなかった。「希望と現実は別。一筋縄ではいかなかった」。平成元年、癌研究所に移り、放射線治療の効果を向上させる研究に打ち込んだ。数年後、中村祐輔生化学部長(当時)らの研究に加わった。チームは家族性大腸腺腫症の原因遺伝子の固定に成功し、世界の注目を浴びた。「発がんのきっかけとなる重要な遺伝子の発見に協力できて感激した」

 外科的手術と比べ、患者への負担が少ない放射線治療の重要性は増し、癌研究会への期待も高まる。「体の中は臓器や骨などがあり複雑。その中のがんの部分だけに必要な線量の放射線を照射し、それ以外には照射しないという高度な治療が求められる。コンピューターを駆使してより的確な治療計画を立てている」

 質の時代を強調する。「放射線治療もそうだが、量より質。質が高く、価値も高いものを創りだすことに挑戦する必要がある」

(文中敬称略)

(火、水、木曜日に掲載します。)



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