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第1章 卒業生の思い

(2003年5月20日掲載)
日本の心と伝統を具現
建築家
 高木滋生氏(67)

日本の心を建物に取り入れる高木滋生氏=静岡市内

 高木滋生(昭29卒)。美術系大学を目指していた高校時代、美術教師の大村政夫(故人、日展参与)が高校生のために開放した自宅のアトリエに通い続け、デッサンを繰り返した。

 同じ志をもつ静高生ら十人ほどの生徒がアトリエに集まっていた。大村は手が空いた時に指導したり、作品を講評したりする以外は、口を出さなかった。生徒たちは自主的に学び続けた。

 正月も寒さを我慢して屋外で建物を描き、三年間で制作したデッサンなどは約二百点に上った。「ドームのある市役所は何回も描いたので、今も見なくても描くことができる」。石こうデッサンの木炭を消す食パンが買えず、安価なコッペパンで代用した。ひもじくなると、床に落ちた真っ黒なパンくずを口にしてデッサンに励んだ。

 大村の教えは独創的だった。「具象芸術ではなくデザインを学べと指導され、基礎となる構成原理やモダンアートを教えてくれた」

 昭和三十四年、東京芸大建築科を卒業し、間もなく建築設計事務所を設立した。県内を拠点とし、地域に根差した設計を心掛ける。駿府匠宿、サールナートホール、県立美術館など手掛けた建築物は数多く、都市景観大賞(全国)など数々の賞も受賞した。「大村先生のアトリエから今の人生が始まった。素晴らしい師に恵まれたと思っている」

 「大村先生はゆとりや潤いを大切にされ、優れた作品をつくるためには社会性と感性が必要だと話されていた。今思うと、そうした面がないといい建物はできない」。ガラス戸を戸袋に収納すると庭と連続性を持つ居住空間が広がる住宅など日本の伝統美を再現した作品も多い。「日本の心をできるだけ建物に取り入れ、表現したい」

 欧米各国の街並みの美しさに比べ、国内は古都などを除いて景観が見劣りする。「欧米は町を公共の場として大事にしている。建物も街並みに調和し、美しさが保たれている。日本は公共心という意識が成熟していない。勝手に思い思いの建物を造り、景観を損ねてしまう」

 かつて、静岡市の中心部には粋な黒塀の民家が見られた。「建物は文化も育てる。街並みに奉仕するという考え方をもってほしい」

(文中敬称略)

(火、水、木曜日に掲載します。)



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