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第2章 人物誌

(2003年7月23日掲載)
広重さながらの立体感
木版画
 牧野宗則氏

「創世」(右後方)と牧野宗則氏=静岡市内

 「北斎・広重からの華麗なる展開」と銘打った木版画展が平成四年五月、東京都内の「浮世絵 太田記念美術館」で開かれた。木版画家牧野宗則(63)=昭33卒=の作品展だった。

 朝日が昇る直前、混沌とした闇の世界に差し始めた秩序の光、その中に力強くそびえる富士山を描いたという「創世」、微妙な光の中に漂う優しい花の命の在処(ありか)を表した「なでしこの花」など数十点が展示された。鮮やかな色からぼかしまで画面の色合いは変幻自在に変わり、作品は広重さながらの立体感にあふれていた。

 浮世絵の技法を踏まえた創作版画は大きな反響を呼び、会場は多くの人たちでにぎわった。副館長の永田生慈(52)は牧野をこう評する。「浮世絵の彫り、摺(す)りといった高度な技法をきっちりと身に付け、その上で創作版画を自在に制作されている」

 中学生の時、浮世絵の摺り師に出会った。百貨店の浮世絵展の実演だった。浮世絵の美しい色や細い線がどうやってできるのか知りたくて会場を毎日訪れた。ある日、摺り師が「そんなに好きなら実際に摺ったほうがいい」と摺り台に上げてくれた。

 プロの世界に感激し、それがきっかけで、静高時代、春、夏休みになると京都の摺り師の元を訪れ、摺りや彫りを学んだ。高校生活の思い出をまとめた版画集もつくり、卒業式前日、同級生らに配って喜ばれた。

 家業の傍ら、版画を続け、三十歳代半ば、プロを目指すことを決意した。全国各地の画廊を回り、作品を扱ってくれるかどうか打診した。「美術学校を出た訳でもなく、先生もいないし、必死に作品をつくった」。静高の美術教師大村政夫(日展参与、故人)の教えが役立った。「奥行きをつかみ、重量感を認識して写し取れ、五感で感じ取れ、です」

 次第に作品を取り扱う画商、展覧会の開催が増加し、木版画家牧野の名前は全国に着実に広がった。「師も弟子もいないから、制約がない。感動したことに取り組むことができる。自分らしさにのめり込める」

 自ら描き、彫り、摺り上げる。「修得した伝統のからを破り、可能性を追究する」。創作意欲にあふれる。

(文中敬称略)

(火、水、木曜日に掲載します。)



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