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第2章 人物誌

(2003年7月24日掲載)
造形の神髄をつかむ
木版画
 浦田周社氏

作品「帰山」と浦田周社氏=静岡市内

 木版画家浦田周社(かねたか)(63)=昭33卒=は昭和五十年夏、静高時代の恩師、元工芸教師水野光太郎(故人)から手紙を受け取った。手紙には、臨済寺に戻る。托(たく)鉢僧の一行を表した作品「帰山」に対する、ある僧侶の感想がつづられていた。

 水野宅で作品を目にした僧侶はこう話したという。「実に見事に各々の心持ちと作法を描写している。先頭の三人ほどは足取りもしっかり登ってゆく。つぎの数名は托鉢の経験もいまだ浅い若い僧であろうか、すっかり疲労して隊伍(ご)も乱れがちである。最後に進む僧は一団をまとめる重要な役を持った経験僧で温厚、沈着な風姿がよくうかがえる。最前の三人僧が石段の中央を進まずにやや左寄りであることは全く作法にかなった描写である。当山の和尚以外は何人も中央を昇降してはならない」

 僧侶は浦田の鋭い洞察力と描写力を作品の中に見いだしていた。水野は僧侶の眼力に敬服するとともに、造形の神髄をつかんだ浦田を称賛した。

 浦田は江戸時代から続く浮世絵処「版隈」五代目儀一の長男として生まれた。父親の手ほどきで、小さいころから版画に親しみ、中学時代に学校生活の様子などをまとめた版画集も出した。静高卒業後、家業を継ぎ、浮世絵の伝統技法を駆使した創作版画の世界に没頭した。

 五十一年、文化庁から重要民俗文化財保存技術保持者に認定され、浮世絵木版画彫摺技術保存協会員となった。県内外の自然、風俗などを精力的に表現し、平成三年、東大寺二月堂の修二会の行法を表した力作「達陀松明」が日展に入選した。その後も日展入選を続けた。「静高の美術教師、大村政夫先生が散歩の折、立ち寄り、『頑張っているか』と声をかけてくださった。励みになった」

 十年、静岡新聞日曜版で県内の宿場町を色鮮やかに描いた「東海道道中記」を連載し、十三年には東大寺修二会千二百五十回記念で作品を展示し、注目を浴びた。

 木版画の情趣を、より際立たせるため、プラチナや金銀箔(はく)をまくなど創意工夫を忘れない。「体力維持に心掛け、制作三昧(ざんまい)。後世に、潤う作品を残したい。己、発奮せよ、革新の意気に燃えよ、ですよ」。創作意欲もたくましくまい進する。

(文中敬称略)

(火、水、木曜日に掲載します。)



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