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第2章 人物誌

(2003年8月13日掲載)
一貫し「教育柔道」を主張
日本武道国際連盟副会長
 杉山庄治氏

イタリアの柔道振興に尽力してきた杉山庄治氏

 「マエストロ―情熱の源」と題された一冊のイタリア語の本がある。表紙を飾る道衣を着た無心の表情の横顔は、イタリアで四十年にわたり柔道指導を続けてきた杉山庄治=昭27卒=。二百ページに及ぶ半生記は、今年七十歳を迎えた杉山のために、門下生らが内証でまとめた。

 終戦直後の昭和二十一年、旧制静中に入学した杉山は、静岡中央署の道場で柔道に出会う。新制高への移行期、六年間の在学中に柔道部を創部。卒業後も六年にわたり指導に通い続けた。仮教室の廊下や爆撃で破壊された吹きさらしの講堂跡など、恵まれない環境での練習だったが、このころの柔道部は全国大会出場も果たしている。

 恩師の勧めで渡欧したのは、大学卒業後の昭和三十三年。小沢征爾らもいたパリの日本館に住み、フランス各地で講習会を開いた。翌年にはイタリアの道場に専任講師として招かれ、現在の拠点トリノへ。間もなく現地に道場を開設した。

 門下からは、全イタリア大会の優勝者やナショナルチームのメンバーなど、国内トップ級の選手を次々に輩出。周辺道場でも積極的に指導し、トリノを含むピエモンテ州をイタリア柔道の中心地として盛り立ててきた。

 イタリアで道場主になったころ。老若男女さまざまな門下生を相手に、どう教えるか迷った。「それまでは正面から組んで投げ飛ばし、体で教えてきた。強い選手を育てるにはいいが、子どもや女性に対して、まして言葉の壁がある状態では通じない方法でした」

 糸口を求め、毎夏、講道館で開かれる「形」の講習会に通い始めた。高段の師範や仲間との交流の中で、「柔道について何一つ知らなかったと思い知った」と振り返る。

 「道衣をつかみ、相手の動きを感じ、お互いを知り合う。そこに生まれるのは、自他共栄の精神です。柔道の本質は勝ち負けではない」

 現在、日本武道国際連盟副会長兼欧州総責任者。柔道がオリンピック競技として世界に広まる中、一貫して選手の育成だけにこだわらない「教育柔道」の重要性を主張してきた。

 柔道を志すすべての人に、温かいまなざしを注ぐ。視覚障害者を励ました言葉がある。「あなたがたは幸せです。柔道は見えることによってごまかされたり、勝手に判断してしまうことが多くあるが、つかんだ手を通して相手の動きを知ることに習熟すれば、絶対に間違いがない」

(文中敬称略)

(火、水、木曜日に掲載します。)



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