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第2章 人物誌

(2003年10月7日掲載)
胸に刻んだ「今に生きる」
図書印刷社長
伊藤勝氏

座右の銘は「LIVE TODAY」と言う伊藤勝氏=沼津市大塚の図書印刷沼津工場

 「LIVE TODAY(今に生きる)」―半世紀余り前、教師の口から出た一言が、一生を通じて座右の銘になった。

 凸版傘下の印刷会社図書印刷(本社東京)社長の伊藤勝(昭30卒)は静岡市横内出身。静岡師範付属小中学校を経て静岡高へ。同期にヤマハ発動機社長の長谷川至がいる。

 一年生の時、英語担当の小泉保教諭が授業冒頭、唐突に言った。

 「七間町にオリオン座という映画館が出来た。館内の壁に書かれたLIVE TODAYってどんな意味か知ってるか」

 連合軍の占領下から独立を回復して一年余り。享楽的なアメリカ風の考え方だな―当時はそう思ったに過ぎない。

 静岡大文理学部卒業後、働き口を求めて凸版印刷に入社。六年後の昭和四十一年、香港凸版印刷公司へ製造責任者として赴任を命じられた。同僚が同情の目で見た人事だった覚えがある。しかし、このとき、脳裏に浮かんだ言葉が「LIVE TODAY」。

 「サラリーマンは自分の舞台も職務も会社から与えられる。自分がセレクトできないなら、その道でおれらしくやってみよう。会社のためとかじゃなく修業の場が与えられたと思って。今をいい加減に生きるやつに明日を語る資格はない、今を思い切って生きろ―先生の言った意味はこれかなと思った」

 三十歳から六年間、リーダーズダイジェストやニューズウイークの東南アジア版の印刷など世界的な事業に没頭した。

 「一番エキサイティングでものすごく充実した人生。最も勉強になった時代だ」

 沼津市大塚に半世紀の歴史を持つ沼津工場がある。同市が白隠禅師の故郷であり、「自己の今すなわち今に生きよ」という言葉を残していることを最近知った。禅師の師正受老人も同じ趣旨の言葉を語っている。

 座右の銘の歴史的厚みに触れて横文字を初めて公にする自信がついた。

 印刷産業はIT(情報技術)を軸に歴史的な大きな曲がり角にある。

 「ITを踏まえて生活文化へのかかわり合いをより深く追求する。そこに新たなビジネスがあるはずだ」

 不況の苦境や就職難にぶつかっている後輩たちに「今に生きる」指針として、「自分のために自分を鍛えろ」という言葉を贈る。

(文中敬称略)

(火、水、木曜日に掲載します。)



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