![]() | <9> |
「駿河のクレマチス」を全国トップブランドにのし上げた渡辺園芸(長泉町南一色)。国内生産シェアは五割を超え、北は北海道、南は鹿児島の市場まで出荷する。創業者渡辺偉(昭47卒)は「市場の半分を占めれば、将来どんな品種が当たるかを先読みし、ブームの流れを自在に操ることができる」と豪語し、激変する流通形態にも柔軟に対応する。
石油ショックがまだ尾を引く昭和四十九年、クレマチスに特化した渡辺園芸を創業する。寒さに強いクレマチスは、ボイラーを動かす重油が手に入らなくても大打撃を被ることはない。園芸の主流のパンジーやシクラメンでは「日本一になれない」。クレマチスが手間の掛かる育成法で生産者も少なかったことに着目した。 出荷時期の三―五月は昼夜を問わず働いた。二トントラックで東京から大阪までを運び回り、眠気が襲うと車内で仮眠を取った。市場にも飛び込みでセールスをかけた。たとえ値段をたたかれても人脈作りのために売った。「眠気に襲われないように食事も控えた。二十代は寝なくても死なないことが分かった」と渡辺。若さを武器に猛スピードで走った。 渡辺は「オンリーワン企業」を目指す。約三百五十種七十万株の苗木を育成し、もう一方の大黒柱クリスマスローズと合わせて二百万株の出荷を視野に入れる。新品種の開発、栽培技術の特許申請、分社化と果敢に新規事業に挑戦し、信頼されるブランド作りに燃える。「周囲と同じことを考えていたらだめ。逆の発想をしなければ」と約四十人の社員にもゲキを飛ばす。 県花と緑生産者協議会長、県農業法人協会副会長として生産農家をまとめ、四月に吉田町で開催する緑・花・祭や三年後のしずおか国際園芸博覧会への供給を一手に引き受ける。 ここ数年、外国産が安価で輸入され、競争が激しいが、安売り合戦はしない。「日本人の心は日本人にしか分からないはず。消費者の心を揺さぶる商品を作れば負けない」。渡辺は余裕とも受け取れる笑顔をのぞかせた。
(文中敬称略)
【注】カッコ内は卒業年。
|
引佐高の100年 富士宮農高百年 御殿場高 躍進の百年 静岡新聞へ |