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スイカ

量より質、食味で勝負


連作障害を防ぐ台木の研究に貢献する芹沢正弥さん=函南町平井
 三島・函南スイカ組合は毎年六月になると、地元の障害児たちに丸々と太った初成りスイカをプレゼントする。子供たちは恒例の贈り物を「温かいスイカ」と呼び、ぎこちない手つきで精いっぱいの礼状をしたためる。組合長川口正美(昭29卒)は「生産者と子供たちが互いに励まし合う年中行事。子供の喜ぶ姿を見て、来年もスイカを作ろうと頑張れるんです」と目を細める。

 「平井甘露スイカ」は近隣市場で、常に最高値で取引される高級銘柄。昼夜の温度差が激しい山間地特性に恵まれ、糖度が乗りやすいのが特徴だ。特産地を支える組合員は二十五人で、そのうち六割を田農OBが占める。川口は「組合全体で量より質を重視している。食味で他産地に負けることはない」と言い切る。

 ハウス面積で一番の芹沢正弥(昭40卒)は、連作障害を防ぐ台木の研究に力を入れる。「理想のスイカを求めると本当に難しい。まだ未知の領域が多いから」。栽培技術にかけては周囲から一目置かれる存在。昨年から、地元の園児を対象に苗木の植え付け体験を始めるなど、地域活動にも貢献する。

 杉崎正則(昭45卒)は組合で初めて、本格的な立体栽培に取り組む。スイカを土にはわせず、高さ約二メートルの骨組みからつるす。平地に比べ、真ん丸の形状と消費者の好む“シャリ感”があり、「スイカの潜在能力を引き出せるようになった」。

 平成七年、先進地の高知県で一カ月の研修を終えた杉崎はすぐに、温度、水管理施設を完備した約五千平方メートルの大型ハウスを整えた。「人がやらないことをやる」が持論。オリジナルの出荷箱やシールを作り、「自分の作品に誇りを持ちたい」と組合の中で一人だけ東京市場に出荷する。無農薬・有機栽培に力を入れるのも付加価値を付けるためだ。

 平井にスイカ専作の道を切り開いたのは岩本文彦(昭23卒)。昭和二十九年、平井地区でまだ二台しかなかった三輪自動車を購入し、趣味で作ったスイカを熱海や多賀まで売り歩いた。道端に車を止めて「田方のスイカだよー」と声を上げると、すぐに人だかりができた。あっと言う間に百個を売り尽くした。「これで味を占めた」という岩本はスイカ専作にいち早く切り替え、翌年、久保田勝美(昭30卒)芹沢直(昭30卒)らと共に平井スイカ組合の立ち上げに動いた。

 若手には、栗田稔(昭56卒)芹沢清孝(昭56卒)らがいる。

(文中敬称略)
 【注】カッコ内は卒業年。

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