2004/4/23掲載


■シンポジウム「花のある暮らし」
 浜松市旭町のプレスタワーで22日開かれたシンポジウム「花のある暮らし」(静岡新聞社・静岡放送主催)は、浜名湖花博への期待や花への思い、自然重視のライフスタイルなどについて、4人のパネリストが活発に意見や提言を寄せた。花博を一過性のイベントに終わらせないためには、行政任せのまちづくりではなく、家の周りに花や木を植えたり、子供たちに自然の大切さを伝えていくなど、市民一人ひとりができることから取り組む大切さを訴えた。
(コーディネーターは仁科庄一静岡新聞社・静岡放送浜松総局次長)

パネリスト

静岡文化芸術大教授 
宮川潤次さん

樹木医
 塚本こなみさん

女優
 生田智子さん

作家
 嵐山光三郎さん
  色の調和取れた会場/庭園での発見楽しみ
―浜名湖花博の意義や期待をどのようにとらえていらっしゃいますか。また、思い出の花は何ですか。

塚本 庭文化創造館の作り替えと浜名湖館フルレの花の植え替えも担当しました。美しい会場ができましたね。とかく全体の色の調和が取れていない公園がありますが、浜名湖会場はきれいな園で勉強になりました。あしかがフラワーパークには棚面積四百五十畳にもおよぶ藤の花があり、好きな花です。

宮川 楽しい会場という印象ですね。最近のイベントで大切なのは、見るイベントから参加するイベントに変わってきているのがポイント。花博ではプロのガーデンコンクールや地元の学校の庭園があったり、展示以外でも多くのボランティアが参加しています。地元の人がつくり、楽しむ「静岡型のイベント」が今後も根付くと良いと思います。思い出の花は小学生のころに遊んだレンゲ畑です。

生田 会場にはまだ訪れていませんが、旅行が好きなので国際庭園でどんな発見があるか楽しみにしています。東京の実家では九十二歳の祖母がしだれ桜や河津桜を植えていて、日本の庭も好きです。日本の伝統園芸植物を紹介している園芸文化館も見てみたいです。結婚記念日には主人(サッカーJリーグジュビロ磐田の中山雅史選手)からバラの花をもらっているので、写真に収め、ドライフラワーにしているんですよ。

嵐山 海外に行くとフランス、イギリス、スペインと庭がそれぞれ違います。中でも日本の庭とどこか似ている英国庭園が好きです。学生時代、花壇をつくる体験もあり、楽しかった。花博会場が花壇をはじめ全体のアレンジメントをどのようにしているか楽しみですね。小さいころ、すごくきれいな朝顔がある家がありました。朝顔は今でも思い出の花です。

観光振興  「良い環境」望む住民/農家や研究所が連携
―花を観光の目玉にするフラワーツーリズムが注目されています。静岡は特に花の生産が多い県です。いかに花を活用し、観光振興に結びつけたらよいでしょうか。

塚本 例えば河津桜になぜ百二十万もの人が集まるのか。桜の下に菜の花があるから「わっきれい」と思うのでしょう。花木だけではだめで、その足下に何を植えるかが戦略なんです。(浜松フラワーパークのある)舘山寺では桜を山の中に植えているので、表に出せばもっと良くなります。皆が驚くような演出ができたら、大勢のお客に来ていただけるはずです。

生田 今年の正月にドイツに行きました。花屋が並んでいて、アレンジがとてもかわいらしかった。欧州は景観を大事にしていて、街の雰囲気を壊さないように、という美意識を感じますね。ついこの間、主人と近所の桜並木を散歩しました。桜を見るだけで優雅な気持ちになり、花のある暮らしはこんなにも気分を軽やかにしてくれるんだな、と実感しました。

嵐山 昔は日本も街全体に花があり、きれいでしたが、高度成長期にビルが建って汚くなってしまいました。でも最近、日本の新しい住宅地でも街全体を考えて花を飾る傾向が増えてきました。終戦直後は皆「良い家に住みたい」と考えましたが、今は「良い街に住みたい」との気持ちが強いようです。住んでいる人が街全体の環境を考えている“生きている街”のことだと思います。

宮川 これからの観光で注目されるのは「都市観光」と「産業観光」です。都市観光は住む人が自分たちの街を作ることから始まります。産業観光は浜松でも始まっていて、音楽の街作りとして楽器工場や博物館のネットができています。これを花に当てはめ、フラワーパークだけでなく、農家、ビオトープ型の研究所などを結びつければ、花と緑の観光が可能だと思います。街作りが結果的に観光資源になれば、一番良いでしょう。

癒し  育てるうれしさ実感/人間らしさの"象徴"
―花を見ると心が落ち着いたり楽しくなったりと、花には癒やし効果があります。これを生かす方法はありますか。

宮川 花の癒やしは街づくりの延長にあります。花で街を飾ることに関しては、誰も文句を言わないでしょう。花を見てもらい人が滞留するような、歩く楽しさのある街、絵になる街に住みたい。そこで何より大事なのは住民が自分たちで作ること。そうしてできた花や緑地は、誰が見ても気持ちよく、優しさに包まれるんです。

塚本 あしかがフラワーパークには四年前、中学でいじめられていた少女と、家族とも話せなくなったうつ状態の青年が「働かせてほしい」と入ってきました。一カ月後、少女は歓声を上げながら仕事をしているんです。青年は一年後には、親を連れて海外旅行をするまでになった。二人の姿を見て、植物には何て素晴らしい力があるのか、人間性の回復力もあるんだと気付きました。

―花博では「新たな暮らしの創造」をテーマにしています。花とともに楽しむライフスタイルのために、何かアドバイスをいただけますか。

嵐山 好きな花や合う花、合わない花が人それぞれあります。僕は原種の花が好きなんだけど、野生の花が好きな方もいる。ある程度、花を決めて楽しめばいいんじゃないでしょうか。

生田 花ではないんですが、最近、近所の農家の一画を借りて畑を始めました。育てるというものが、こんなにうれしいのかと実感しています。自分なりに自然と花とのライフスタイルを楽しみたい、と考えています。

宮川 自然のサイクルの中で生きることを、いろいろなところで提案させてもらっています。高度成長期以前の(環境の)良さは、みなさんもよくご存じのはず。それをどう復元していくか。言い換えるといかに人間らしく暮らすか、その表現として花や緑が象徴になると思います。

 みやかわ・じゅんじ氏 51年岐阜県生まれ。静岡高、東京芸大建築科卒。デザイン研究所に入社後、独立。2000年、静岡文化芸術大助教授に就任、04年4月から教授。まちづくりデザイン、屋上緑化が専門。

 つかもと・こなみ氏 49年磐田郡福田町生まれ。高校卒業後、会社勤務を経て造園家と結婚。会社を設立し、環境緑化コンサルタントを行う。現在あしかがフラワーパーク園長を務める。女性初の樹木医。

 いくた・ともこ氏 67年東京都生まれ。高校時代に田原俊彦の相手役で映画デビューして以来、映画、テレビ、舞台、ラジオ、CM、雑誌などで幅広く活躍。夫はサッカーJリーグジュビロ磐田の中山雅史さん。

 あらしやま・こうざぶろう氏 42年浜松市生まれ。月刊「太陽」編集長を経て独立、作家活動に専念。「素人包丁記」で講談社エッセイ賞受賞。1年のうち8カ月は国内外を旅行するほどで、旅行記も多数。
基調講演から作家・嵐山光三郎氏
 
■心に残る名も無き花 記憶を呼び覚ます力

 浜松の駅に降りると、ふるさとに帰ってきたとの思いがあります。静岡県の花博というのはいいですね。富士山もあり、一番花博が似合います。母親の郷里が(浜松市)中野町で、戦争中に疎開していて、そこで私は生まれました。

 戦争の時にはさすがに花に目がいかなかったですね。今のイラク戦争の映像を見ると、花が全然写っていない。バグダッドには何度か行ったことがありますが、実際は花がいっぱいある所なんです。花を「きれいだな」と見られることは、平和だということですね。花は弱いものですが、心に訴える力がある。“花は銃よりも強し”です。

 花博ではモネの庭のハスを見たい。「ふるさとの 池のにおいや ハスの花」。良い句ですね。私が作ったんですが。中野町の家にハス池があり、そこで寝転がって漫画を読むのが幸せでした。これを思い出して、句を詠むことができました。

 心に残るのは名も無き花。田んぼの横の花。秋の彼岸花も好きです。農家の軒先の梅なんかは思わず立ち止まりますね。あぜ道の花を見ながら弁当を食べる。人間の幸せな時間の典型ですね。

 母が持ってきたムクゲが東京の自宅の駐車場に咲いています。その花が車の上に落ちるのを見ると「ああ浜松だな」と思うんです。花は美しく、気持ちが癒やされる。と同時に、記憶が一つの花の中に宿るんですね。それが花の力だと思います。