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| 「65歳定年制を考える」 対論 (03/11/9) |
| 定年延長などで企業に原則として六十五歳までの雇用を義務づけるため、法改正に向けた協議が進んでいます。厚生年金の支給開始年齢の引き上げに伴い、年金受給までの雇用を確保する目的ですが、厳しい経営状況に苦しむ企業側からは、強い反発も出ています。厚生労働省の「今後の高齢者雇用対策に関する研究会」で座長を務め、六十五歳までの雇用確保を提言した諏訪康雄法政大大学院社会科学研究科教授に雇用延長が求められる背景などを、県中小企業団体中央会の梶本忠恒副会長に企業の現状を聞きました。 |
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―六十五歳定年の実施を求めるのはなぜですか。 「年金制度改革により、厚生年金の受給開始年齢が、二〇二五年度にかけて段階的に六十五歳まで引き上げられるためです。六十歳定年では、仕事も年金もない収入の空白期間が生じてしまう恐れがあります。すでに現在、雇用と年金(定額部分)の間には一年のギャップがあります。来年度には二年に広がる。さらに〇七年からはいわゆる団塊の世代が還暦を迎えますが、この世代が雇用不安に陥ることの社会的インパクトは大きい。ますます消費を落ち込ませ、デフレを長引かせることになりかねません。早急な対応が必要です」 ―研究会ではどんな議論がありましたか。 「年金の受給開始は将来、もっと上がる可能性もある。六十七歳という数字が示されていますが、いずれにしても現時点では最終的な到達点は見えず、これから先も繰り返し同じ問題に直面しそうです。より普遍的な解決策として、六十五歳までの雇用でなく、米国流に一律定年そのものをやめるべきだという議論もありました。しかし、定年制の撤廃は少なくとも現状では難しいという結論になった」 ―日本の社会事情を勘案したということでしょうか。 「米国では、企業側が年齢を理由に従業員を解雇することは禁じられていますが、能力不足を理由に解雇するのは当たり前です。一方、日本では、年齢による給与や地位の差は当然という考えが依然支配的で、企業もいったん人を雇えば簡単に解雇できない。職種や能力という基準が確立していない上に、年齢という基準を取り払ったら、労働市場に大混乱が生じるでしょう。また定年制には事実上、それまでの雇用保障の役割もあり、なくせばかえって雇用全般に悪影響が出ることも考えられます」 ―企業からは経営を圧迫するという悲鳴も聞こえます。 「誤解がありますが、六十五歳定年を今すぐ実現しろと言っているのではありません。少なくとも六十五歳までは、意欲がある限り働くことのできる環境づくりが必要だと言っているのです。企業の実情に合わせ、段階的に取り組める余地を残しておかなければなりません。当面は、いったん退職してもらい、給与などの条件を変えて再雇用するとか、別会社への転籍という形で雇用を保証する方法もある。給与をもらいながら職探しができるようにしたり、コンサルティングやスキルアップにつながる訓練の場を提供し、再就職を支援するのもいいでしょう」 ―高齢者が若者の職を奪ってしまうという指摘もあります。 「高齢者と若者では働きたがる産業や企業にずれがあります。若者が興味を持つのは、過去の優良企業より、今は多少不安定でも、これから伸びていきそうな産業です。若年労働者の職を確保しようとするなら、新規産業の開拓こそがむしろ重要。日本のサービス産業従事者は、現在労働人口の三分の二未満で、米国などに比べると10%程度少ない。単純に計算すると五百三十万人の雇用を創出できることになる。IT産業もまだまだ開拓の余地があります」 ―企業にばかり負担が強いられるという声についてはどうですか。 「もちろん高齢者自身の意識改革も求められます。働き続けたいと考えるなら、技術革新に対応する努力は必要。年功序列に頼らず、年齢という枠組みを超えてきちんと仕事上のコミュニケーションができる力を身に付けるのも当然です。国で支援していくべき部分も多くある。労働者の高齢化が進めば、例えば立ち作業を座り作業に変えるとか、エレベーターを取り付けるとか、職場や社会の環境整備が必要になってくる。そこは社会全体で負担していかなければならない部分でしょう」 ―痛み分けが必要ということですね。 「年金制度が無実化して、年を取ったら頼れるのは自分だけ、という事態が社会として理想的かどうか。考えるまでもありません。企業戦士として日本の成長を支えてきた人たちが、年を取って放り出されるようなことになれば、企業や社会への信頼は揺らぎます。知恵を持って高齢化のリスクを分散する仕組みを考え、お互いがお互いへの思いやりを持って、活力ある高齢社会を実現する努力をしていくしかないのです」 |
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―六十五歳定年制をどう考えますか。 「現状では、義務化には大反対です。デフレが長期化し、海外企業との競争も厳しくなる中で、企業は経費をできるだけ抑えたい。人件費は最も経費効果が大きく、生産性の高い現場をつくることは、いかに人を減らすかにかかっているといっても過言ではありません。また一方では若者の雇用対策も求められ、二重の負担になる。強制しようとすれば、ただでさえ冷え込む企業の雇用意欲をさらに落ち込ませることになりかねない」 ―雇用延長の必要性についてはどんな認識を持っていますか。 「年金と雇用の接続は社会的な問題。少子高齢化など社会環境の変化も相まって、積極的な雇用が求められてくることは十分理解しています。現在でも多くの企業が、使用者の責務と必要性において、定年延長や再雇用などにより雇用継続に努力しています。われわれの会社も六十歳定年ですが、六十五歳を過ぎても技術顧問として残ってもらっている人材もいる。定年を過ぎても価値のある技術を持つ労働者については、正しく評価しているつもりです」 ―将来的には六十五歳定年を容認しうるということでしょうか。 「いくつかの条件がクリアされなければだめでしょう。六十歳を過ぎると体力、能力の個人差が大きくなる。すべての従業員を抱えろと言われても無理。賃金を下げるなどの雇用条件の変更を認めること、必要に応じて一定の解雇権を認めることが求められます。これまでの立法は労働者の保護ばかりが強調され、企業はどんな従業員でも解雇できない。企業にとっては分が悪すぎます。さらに雇用延長に対する国の助成制度を充実させることも必要です」 ―定年制のあるべき姿をどう考えますか。 「年功序列、終身雇用制など日本的な雇用慣行は崩壊し、成果主義、能力主義が浸透しつつある現在において、極言すれば定年制は無意味とも言える。仕事を長く続けたいのであれば、各自が自己責任で能力の向上と知識の獲得に努力していくべき。雇用延長はむしろ、個別の労使交渉や相互努力で進めるべき問題です。また、平均寿命が延びていること、年金支給開始年齢が引き上げられたこと、働くことは同じレベルでは考えられない。人生をいかに過ごすかは個人の問題で、本来国が口を出すべきことではありません」 ―将来的には労働力人口は減少していきます。雇用の見通しをどう考えていますか。 「いい人材は大企業に吸収されて、中小企業にはますます人が回ってこなくなるでしょう。労働力人口が減ると競争の原理が働かなくなり、質の低下も懸念されます。中小企業は特に、熟練した高齢者に活力を与えてもらう時代になるのかもしれません。六十歳でも能力があれば働き続けてもらう、二十歳でもブラブラしているならやめてもらう。昔は平均年齢が若ければそれだけでいい会社と言われたが、これからは違うでしょう」 ―企業にとって雇用延長のメリットは少ないのでしょうか。 「個人的には、雇用延長は労働意欲を高める意味で、効果があり得ると思っています。特に大企業では五十代半ばになると、子会社や下請け会社なども含めて、人材を外へ出すケースも多い。つまりそこからが労働者にとっては再挑戦、企業にとっては人材の再選択の時期になる。六十歳定年では、最後の職場は腰掛けで終わってしまうが、十年あれば、企業も高齢であっても主要なポストを与えることができるし、本人の能力も十分発揮できる」―若年労働者の質は変わってきましたか。 「実力が低下しているのを感じます。現場の技能は確実に落ちてきている。職業的な技能を身に付けるには人の何倍も苦しんで努力することも必要ですが、つらいことをしたがらない。高卒では就職して三年の間に半分が離職するという数字もあります。そうした状況に就職難が相まって、若者のキャリア形成はまったくうまくいっていません。若年者の雇用にこそ、いっそう力を注ぐべきだと考えます」 |
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■次回(11月16日=日曜日)は「65歳定年制を考える」投稿特集 次回は引き続き「65歳定年制を考える」をテーマに、投稿特集をお届けします。65歳定年は法的に義務付けられるべきでしょうか。今回の対論では、年金の空白が社会不安を招くという指摘に対し、定年時期は本来国が決めるべき問題ではないという反論がありました。あなたはこの問題をどう考えますか。また、何歳まで働き続けたいと思いますか。意見、感想を聞かせてください。 |