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| 「図書館にベストセラーは必要か」 インタビュー (03/11/30) |
| 今回のテーマは「図書館にベストセラーは必要か」です。昨年の書籍の推定販売部数は七億四千万冊で、六年連続で前年割れが続いています。出版関係者や著作者側からは図書館のベストセラー大量貸し出しに対する批判も出ています。静岡市立中央図書館主査として成人図書の選書を担当する坂下朝子さんと、県書店商業組合理事長の斉藤行雄さん(谷島屋書店社長)に、ベストセラー問題を核にして、これからの図書館の目指す方向や、求められる役割について意見をうかがいました。 |
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利用者の多様なニーズに対応 ―公共図書館が同じ本を何冊も持ち、貸し出す「複本」が問題になっています。静岡市の図書館は複本をどのぐらい持っていますか。 「旧静岡市内の七館の合計ですが、最近のベストセラーで所蔵数が多いのは『模倣犯・上』の二十六冊、『ハリーポッターと炎のゴブレット・上巻』の二十三冊など。『五体不満足』は四十冊ありますが、うち十五冊は市民からの寄贈本です。平成十一年に決めたガイドラインで、予約待ちの数に応じて、全館で最大三十セットまで追加購入できるという目安を設けています」 ―なぜ同じ本を複数購入する必要があるのでしょうか。 「利用者の要望にはある程度応えなければなりません。今一番予約が多い『世界の中心で、愛をさけぶ』は全館で九冊所蔵していますが、百件以上の予約があり、八月上旬から待っている人もいます。一方で、ブームが去って利用が少なくなった本は数冊を残して廃棄し、学校や公共施設などにお持ちいただいています。もったいないですが、限られた書架を有効に使うためには仕方がない。どこに上限を持っていくかが大事だと思います。『失楽園』ブームのころから、予約が殺到している本については市民に寄贈を呼びかけ、図書購入費を有効に使うようにしています」 ―図書館の影響で本の売り上げが落ちているという意見に対し、どう思いますか。 「新刊をすぐ読みたい人は買うでしょうし、図書館で借りられなかった人が必ず買うとは限りません。最近は予約待ちが長いという苦情もあまり出ません。図書館の貸し出し増は、図書館の数が増えていることも関係しているでしょう。出版関係者からは貸し出し数に応じて著作者に補償金を支払う制度を導入するよう意見が出ているようですが、税金が使われることになりますから、難しい問題だと思います」 ―価値観が多様化し、出版物はますます増えています。どの本を購入するか、どうやって判断しているのですか。 「取次店が毎週発行する新刊リストなどを参考に、各館の担当者が他館の希望を見ながら、なるべくいろいろな本を入れるよう心掛けて発注しています。さらに全館の担当者が成人図書の選書会議を月二回開き、買い漏れをチェックしています。収集基準に当てはまるかどうか、よく利用されるかどうかは経験や勘で判断する部分も大きい。新聞の書評を読んだり、書店にしばしば通って感覚を磨いている職員もいます。地方の出版情報は地元の新聞から情報を得ることが多いですね。昨年は北部図書館の開館準備もあり、約六万七千冊を購入しました。ほとんどが新刊です。市民のリクエストも新しい本が多いですね」 ―ベストセラー問題は公共図書館の役割の議論ともかかわっています。今後の図書館の方向性をどう考えますか。 「昔の図書館はごく一部の人しか利用していませんでした。図書館をもっと市民に身近にするため、貸し出しを伸ばそうとした時代があり、さらに今はこれまで利用しなかった人にも役立つ図書館を目指しています。来年秋に旧静岡市街中心部の再開発ビルに移転・拡充予定の追手町図書館が目指しているビジネス支援もその一つです」 |
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良書そろえ出版文化下支えを ―図書館のベストセラーの貸し出しをどう考えますか。 「無制限な貸し出しには当然問題があります。最も懸念されるのは、図書館の予算が削減される中、ベストセラーを大量購入することで、そのほかの書籍の購入が圧迫されることです。書籍の中には、少部数発行のため書店の店頭にもなかなか陳列されず、読者の目に触れる機会がない良書があります。全国の図書館が購入してくれることで出版が可能になっている本もある。図書館はそうした社会的、資料的価値の高い本をそろえることを考えてほしい」 ―図書館にはベストセラーを置くべきではないのでしょうか。 「そこまでは言い切れません。程度の問題でしょう。利用者サービスや貸出率の向上を考えるあまり、安易な大量購入に走ることは問題ですが、置くこと自体は否定しません。図書館で本をよく借りる人というのは、書店でも本を買ってくれるのです。図書館でベストセラーを読んだことで、読書に目覚める人もいるかもしれない。本を読むことは習慣ですから、図書館の貸し出しが伸びることは、むしろ本の売り上げを後押ししてくれると考えます」 ―貸し出しが伸び、書籍が買い控えられることはないのですか。 「図書館と書店は共栄するものです。児童書がいい例。児童書の売り上げはここ数年非常に好調ですが、これは二〇〇〇年の『子ども読書年』に合わせ、図書館や学校、企業などが協調して取り組んだ、朝読書や読み聞かせなど、読書推進キャンペーンの波及効果だと考えています。それ以前、児童書の売り上げは十年近く下降線をたどり、書店では児童書の売り場を減らしてコミックを増やしていたのですが、ここ数年児童書の売り場を広げる書店が増えました」 ―読者の掘り起こしが大事ということですね。 「その通りです。新生児健診の時、自治体の予算で読み聞かせの仕方の解説や本のセットを配布する『ブックスタート事業』というのがあります。イギリスで始まった運動ですが、読書の習慣化に非常に有効だという統計があり、県内でも少しずつ導入が始まっているところです。こうした取り組みは書店だけでできることではありません。定着には、図書館ボランティアの支援も必要です」 ―著作者側は図書館での新刊の大量貸し出しを問題視し、補償金制度の導入を主張しています。 「出版の好況、不況ということとは切り離して、大きな意味での文化政策として、導入の方向で考えるべきです。非常にもうかっているベストセラー作家というのはごく一握り。そうでない作家が生活していけなければ、出版の多様性は確保できません。社会のデジタル化が進む中でもあり、知的所有権を含めて著作権の保護には真剣に取り組む必要があるでしょう」 ―出版不況といわれる現状をどう見ますか。 「出版物の売れ筋がベストセラーや情報誌、タレント本など軽いものに集中し、そのほかの出版物が出しにくくなっている。地道にいい本を出している出版社が立ち行かなくなっています。書籍は典型的な多品種少量の消費財。出版物の多様性が保てなくては、豊かな出版文化を持つ国とは言えません。本にかかわるものには出版文化を守る役割があります。図書館には良書をそろえてその役割を果たしてほしいし、わたしたちも一体となって努力したいと思っています」 |
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ベストトセラー 都市部は平均3.5冊 日本図書館協会と日本書籍出版協会は十月、公立図書館の複本や貸し出しの実態について初の調査結果を発表した。図書館と出版社、著作者が共通の基礎データを作るのが調査の目的。 回答を寄せたのは全国の公立図書館の約四分の一に当たる四百二十七自治体の六百七十九館。平成十一年と昨年に刊行されたベストセラー、芥川・直木賞の受賞作品など計八十点について、所蔵冊数や貸し出し回数、予約件数を調べた。調査結果によると、「五体不満足」「模倣犯」「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」は別格で、三点平均で一館当たり四・七八冊を所蔵していた。他のベストセラー十八点の平均は一・五五冊だった。 自治体の規模による地域差もはっきりした。文芸ベストセラー十一点の一館当たり平均所蔵数は、政令指定都市を除く人口三十万人以上の都市では三・五冊なのに対し、町は一・三冊。ただ、人口当たりに換算すると、自治体の規模が大きい方が所蔵冊数は少なくなる。 |
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図書館予算は減少傾向 県内の公立図書館は、県立中央図書館一館と市町村立図書館五十四館。市町村立図書館の設置率は74%で、ほぼ50%の全国平均に比べて高く、全国でも十指に入る。平成十七年度には、金谷町で新設予定がある。 一方、図書の専門家である司書の配置については、昨年度で44・5%と全国平均の48・9%よりも、若干低い水準にある。 図書購入に充てる資料費は、二〇〇一―〇二年度にかけて二割近く減り、県立を含む県内公立図書館の合計で前年度比83%に落ち込んだ。県立図書館については、前年度並みを保った。 図書館予算の縮小は全国的な傾向。〇二年度にかけて岩手、千葉、富山、福井、滋賀、兵庫の六県を除くすべての都道府県で減少し、全国の公立図書館の予算合計は過去初めて減少に転じた。 |
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■次回12月7日(日曜日)は「図書館にベストセラーは必要か」討論 ベストセラー問題は27、28の両日、静岡市内で開かれた全国図書館大会静岡大会(日本図書館協会など主催)でも取り上げられました。次回は引き続き「図書館にベストセラーは必要か」をテーマに、同大会での議論の様子などを紹介する予定です。みなさんは図書館と書店をどのように使い分けていますか。また、読書人口を増やすための効果的な方法などについて、意見、感想もお寄せ下さい。 |