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| 「図書館にベストセラーは必要か」 討論 (03/12/07) |
十一月二十七、二十八日に静岡市内で開かれた全国図書館大会静岡大会でも、この問題が取り上げられました。「著作権をめぐる最近の動向―公貸権問題を中心に」をテーマに、前園主計山梨英和大教授の進行で、五人のパネリストが交わした熱い議論の様子を紹介します。 |
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■三田誠広さん 公立図書館貸出実態調査結果を見ると、三つの問題点がある。第一点は権威ある賞を受賞した本がほとんど図書館に置かれていないこと。第二点はベストセラーの問題。「模倣犯・上」は二年間で三十六万回借りられている。発行部数と比べると、三人に一人は図書館で借りて読んでいることになる。仮に図書館で読んだ人の1%が書店で買ったとしても、著者の宮部みゆきさんはある種の損失を被っていると言える。推理作家協会は発売後六カ月間の貸し出し猶予を求めている。 第三点は著作権使用料の問題。推理小説は犯人が分かればいいので、本の所有にはあまり意味がない。だから新古書店が流行している。著作物を読んで情報をもらった人すべてが著作者を支えるシステムを作らないと、読者の立場からも不公平。国や地方自治体が何らかの補償金を払うことも考えて良い。欧州ではほとんどの国で補償金制度が確立している。 ■平井彰司さん この問題は不況で本が売れなくなったということを超えている。メディア革命を前に、著者、出版社、図書館など活字出版に携わるわれわれが動けなくなっていることが問題ではないか。出版社の多くにリストラや経営危機が伝えられる。今までは出版界全体で大きく売れる物があり、需要が多くない本を流通させる支えになっていた。だが、コミックやベストセラー小説が売れなくなると、スペースを割いて地味な本を置いてくれた書店が立ち行かなくなる。われわれにとっては死活問題だ。 メディア革命によって受け取る側も変容している。著作物は一度公表されたら全体の財産だという考え方がコンピュターソフトウエアの世界から始まり、最近の若者に多くなっている。この考え方がはびこると、「本を読むのにお金を払わなくていい」「一番安い所で払えばいい」となる。著者への敬意という著作権のベースがなくなることを危ぐしている。 ■山本順一さん 図書館と制度について考える時、公共図書館は無料でなければならない、刹那(せつな)的な議論をしてはならない、法や制度は不変でない―という三点を忘れてはならない。今までの議論で、どこかずれていると思ったのは、消費者を見ているのかということ。女子学生の生活実態を見ると、まず携帯で次は化粧品。生活費を引いた後、どれだけお金が残るか。出版は構造不況業種と思った方がいい。可処分所得の中でどれぐらいのマーケットを維持しうるかという問題だろう。 また、日本の著作権ビジネスを考慮に入れる必要がある。例えば「タイタニック」は小説を出しながら、映画の方がはるかにもうかる。米国ではメディアミックスのような形で著作物を売りにしている産業の形態に移っている。図書館としては日本の産業構造全体を前に向かって動かしていく制度設計を視野に入れていくべき。 ■手嶋孝典さん 町田市では貸し出し上位百冊の図書購入費総額に占める割合は4%しかない。決して人気のある本ばかり集めている実態はない。今回の全国調査でも裏付けられた。利用者が求める資料・情報を的確かつ迅速に提供することが図書館の基本的機能。公立図書館が学術書やいわゆる良書はもちろん、エンターテインメントも含め、利用者の求めに応じて貸し出すことが活字文化に触れる機会を広げ、結果として本が売れることにつながる。 図書館設置率は自治体の半分程度。公貸権を導入すれば、図書館未設置地域から「自分たちは利用できないのに、なぜ税金で負担しなければならないのか」という議論が出る。ライブラリー価格についても、自治体の図書購入費が減っている中では、仮に消費税程度であっても、その分、本が買えなくなる。貸し出し猶予期間も、仮に閲覧用に一冊程度そろえたとしても、知る権利を保障することにはならない。 ■酒川玲子さん 今までは複本が本当に多いのか、お互いに水掛け論になっていた。共通データを基に話し合おうと調査を行った。図書館協会としては公貸権の実施はまだ時期尚早だろうという結論を持っている。 図書に関しては、借りて読むからいけない、買って読むから良いと軽々に言うべきではない。ただし、図書館が買う本を選ぶ段階で図書館員の力が若干落ちていると感じる。今回の調査でも「司書もお金も選書基準もないので、選書は業者に任せています」という意見があった。お金が少なくなると、本を買う判断が厳しくなる。きちんと行う努力と力量を考えていくべき。 図書館の中には新刊の貸し出し猶予期間を設けても良いという意見も出ているが、地方では新しい本を注文しても、すぐに入ってこないので、整理して貸し出すのに二、三カ月かかるのが現状。出版流通の問題を抜きにして考えてはいけない。
―図書館の予算が減少する中、公貸権導入は本の読者を減らすのではないか。 三田 最も基本的なことは人権。読者には本を読む権利、著者には報酬を求める権利がある。お金がないから公貸権実現は時期尚早という意見には反論したい。 山本 国際図書館連盟(IFLA)の公共図書館ガイドラインでは、公貸権について図書館資料費を使ってはならないと示してある。 平井 このような話し合いはレンタルブック業者やマンガ喫茶とも行っている。怖いのは本を読むのにお金がかからないというイメージを読者に与えること。 ―公貸権を導入すれば、複本の制限は不要ではないか。 三田 今回の調査で複本はほとんどないことがはっきりした。ただ、いくつかの図書館では多くある。人口に応じて複本の数を制限するなど、何らかの歩み寄りができるならば、公貸権についてもじっくり話し合うことができるのではないか。 ―公貸権の内容をもっと教えてほしい。 三田 システムはさまざまで、具体的な議論はこれから。英国では基金を設け、貸し出しサンプル調査に応じ、金額に上限を設けて著者に支払っている。金額も北欧では年間の図書館の資料購入費の5%、英国はもっと低い。要は気持ちだと思う。 ―貸本業者に著作権料の支払いを義務づける著作権法の改正は、図書館とは全く別の問題ではないか。 三田 推理小説を貸すレンタルショップの隣に図書館があり、無償で貸していればレンタル業者が苦情を言うだろう。レンタルショップと図書館のすみ分けができれば、図書館も推理小説をたくさん置く必要がなくなる。民間企業でカバーしきれないものでやっていくのが図書館の本来の使命ではないか。 手嶋 民官のすみ分けという話だが、基本的におかしい。公立図書館には無料の原則がある。お金を出して買えない人が利用できない図書館の在り方が本当にいいのか。人気のある本は半年以上待っている実態があり、複本問題はそう簡単にいかない。 酒川 日本の図書館はまだまだ足りない。町村の図書館設置率はやっと39%。資料費は約六十億円。図書館が少なくとも倍になれば、百億円程度の創出はできる。町に書店も図書館もない所があることを視野に入れながら、この問題を考えなければならない。 |
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公共貸与権 議論の経過 現行制度では、書籍や雑誌の貸し出しは、図書館も貸本屋も、著作者に対する著作料の支払いが免除されている。音楽CDについては、図書館のように無料で貸し出す場合は同様に著作料を免除されているが、民間のCDレンタル店のように有料で貸し出す場合は、著作者の「貸与権」が認められ、レンタル店は著作権料を支払う。 近年、漫画や推理小説などを大量にそろえて貸し出す大型ブックレンタル店の出現を背景に、書籍だけが無制限に貸与できることに対し、著作者が著作権の不当な侵害にあたるとして制度改善を求めていた。文化庁は十月、書籍についても著作者に「貸与権」を認める方向で、著作権法を改正する方針を固めた。 一方で、図書館によるベストセラーの大量貸し出しが、書籍の売り上げに影響を与えるとの声をきっかけに、図書館での書籍の貸与について、出版、活字文化保護のため、著作者への補償金を支払う制度(公共貸与権=公貸権)を導入すべきという主張がされ始めた。 文化庁文化審議会は、平成十三年から、図書館の貸し出しに対し、著作者に何らかの形で補償金を支払うかどうか検討を進めてきた。図書館側は「図書館には読者層を広げ、本の購買意欲を促進する機能もある」などと、著作権に不当な損害は与えていないと主張してきたが、今年一月、審議会の経過報告は、補償金を課す方向で法改正を検討すべきとした。 具体的な補償方法としては、欧州などで導入されている国家基金からの支出のほか、図書館が貸し出し用図書を購入する際、一定の金額を上乗せする「ライブラリー価格」などが提案されている。
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■次回14日(=日曜日)は「図書館にベストセラーは必要か」 投稿特集 次回のテーマも「図書館にベストセラーは必要か」です。5人のパネリストの討論を通じ、この問題が活字からデジタルへのメディア革命や知的所有権問題と密接にかかわっていることが見えてきたようです。図書の収集・貸し出しを主とした図書館の在り方は、今後も変える必要がないと思いますか。それとももっと大きく変えるべきでしょうか。図書館の魅力を高めるためのアイデアを含め、ぜひご意見をお寄せください。 |
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■「2003年を漢字で表すと」募集 今年も残りわずかとなりました。皆さんにとってはどんな年でしたか。京都・清水寺の暮れの恒例行事にならい、「今年を表現するにふさわしい漢字(1文字)」を皆さんから募ります。選んだ理由とともにお寄せください。 |