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「図書館にベストセラーは必要か」  投稿特集・インタビュー  (03/12/14)


活字離れが叫ばれる中、知的所有権の問題も絡んで、図書館に求められる役割が変わりつつある。真の「読者ニーズ」を探り取り組みが続いている
公立図書館によるベストセラー本の貸し出し問題を中心に、図書館の在り方を論じてきたトークバトル「図書館にベストセラーは必要か」の第三回は、これまでに寄せられた反響の一部を紹介します。また、図書館運営のプランニングにもかかわっている静岡市在住の「情報意匠研究所」主宰平野雅彦さんに、情報化社会の中での図書館の在り方について聞いてみました。

letter  
 図書館で本を選んだり、探すことを楽しみにしている者にとって、図書館にベストセラーが必要ないとは考えられない。図書館でベストセラーを借り、シリーズの次の巻や同じ作者の外の作品に興味を持つこともある。気に入った本は購入して、自分の書棚に愛蔵書として並べたいと思う。

活字離れが進む中でも読者をひきつける書物は必ず売れる。ハリー・ポッターシリーズやデルトラクエストシリーズにもそれはみられる。両シリーズとも児童文学の部類に入るが、子どものころ、読書の楽しみを知ると、本は一生の友となる。日本の児童文学者の健闘と、それらを発掘する出版社の確かな目を期待する。

今後も図書館利用者が増え、より多くのベストセラーが著作者より生み出され、出版業界不況の声が聞かれなくなることを望んでいる。

(掛川市、Y・H、46歳、農業)

fax 本を読む習慣の一助に
 最近の情報流通の発展には目覚ましいものがありますが、目覚ましい割には受け流す傾向にあると思います。自分がある事柄に興味、関心を持ち、対象を知りたい、分かりたい、追求していきたいという思いが起こったとき、読書をしようという心が働き、行動になります。

読書に対する考えは人それぞれ違っているため、図書館にベストセラーの本を置く必要はないと思います。私も図書館から月に七、八冊本を借りてきますが、それはベストセラーではありません。

先日もある会合で、高校生の本離れが話題になりました。確かに小中学生のためになる本は紹介されていますが、高校生対象のものは出ていません。いつもそうありたいとは望みませんが、時には高校生向きの本の紹介コーナーをほしいと思います。

しかし、図書館そのものになじめない人、これから図書館を初めて訪れよう、本に触れてみようと思う人にとっては、ベストセラーの本コーナーがあっても良いと思います。そのことが本への架け橋となり、読書が習慣になるとすれば、こんなにうれしいことはありません。

(吉田の万太郎、65歳、無職)

letter 「歴史」重視した経営を
 文化施設の乏しい沼津市だが、中央図書館は他市に誇れる。しかし、南北に長い当市で、この図書館を常時利用できる市民は限られている。少子化の今、各地区小学校に空き教室があるが、そこへ書籍を分散し、移動図書館のように月ごと巡回させてもらえると、老人には福音である。

先日、図書館の試写室で樋口一葉を取り上げた古い映画を見た。明治以来、女性の権利向上に奔走した女性を思い、映画と重ね合わせて感動した。図書館は過去と現在、未来をつなぐ鎖でもあるから、時代を代弁するベストセラー本や話題の漫画も多少置くことは良いと思うが、多くは不要。それより太古から現代に至る歴史の流れを重視した経営をしてほしい。児童文学書の美しい挿絵は情操を育てるが、言葉の不備を絵で補う漫画本は、図書館にはそぐわない。図書館で読む本は美しい日本語、正しい外国語で書かれた本が良い。

若いころ感動した文学書が、もう一度手軽に読める。そんな図書館経営を考えてほしい。

(沼津市、野田章子、80歳)

fax  
 図書館にベストセラーは必要ありません。邪道です。

ベストセラーには二つの意味があります。短期間に十万部以上売れた本(予想外も含めて)と、長年にわたって売れ続けている本です。問題になるのは、前者で、外国映画のテレビ放映と同様に、発売後二年間は書店と話し合って購入を控えるべき。書店側は、口コミで買ってくれるお客さまをもっと増やす努力をすべきです。

図書館の役割は、(1)三歳児から本と楽しく遊ぶことを教える(2)不登校生徒と元教師が向かい合って、本を通じてこれからの人生をじっくり語る(3)将来性のある文化、学術の徒に情報を提供する(4)シルバー世代に生きる喜びを与える(5)資料的に高い価値のある本を見抜く目利き司書を育成する(6)忙しい現代人のためのダイジェスト版を整備する(7)起業や新規事業の手助けや応援のための情報提供をする―場所だと思います。

危ぐすべきは、インターネットによって、パソコンで本を読まれるようになったら、書店が不要になってしまうことです。この方が大きな問題でしょう。

(静岡市、新井泰、62歳、自営業)


「情報意匠研究所」主宰
平野 雅彦さん
「情報意匠研究所」主宰
平野 雅彦さん


ひらの・まさひこ氏 広告や施設運営のソフト計画などのプランナー。静岡市図書館協議会委員で、来年秋に静岡市中心部の再開発ビルにオープンする予定のビジネス支援図書館の運営計画にもかかわっている。
新ビジネス発掘を支援

―図書館の現状をどうとらえていますか。

「図書館は病院と並んで利用頻度の高い公共施設ですが、活字離れやデジタル化の波、知的所有権問題、長引く不況による資料費の減額などの渦中にあり、転換期にあると言えるでしょう。ベストセラー問題は図書館の在り方を見直す良いきっかけになるのではないでしょうか」

―図書館によるベストセラーの貸し出しについてはどう思いますか。

 「作家や出版社を保護するために、貸し出し猶予期間を設けるという案には反対です。図書館の本は税金で購入されていることを忘れてはならない。貸し出し猶予は市民の知る権利を妨げる結果にもなりかねません。ただし、一部ベストセラーなどの『大量の複本』に関しては、作家や出版社を何らかの方法で保護する必要があるでしょう。だが、今の図書館の予算では無理な話。図書館の予算を増やすためには、一冊の本がどれだけ経済効果を生んでいるか、評価基準を設けたら良いかもしれません」

―平野さんがかかわっているビジネス支援図書館とはどんな図書館ですか。

「ただビジネス書をそろえるのではなく、経済と文化を同時に活性化させるためのプログラムを提供するのがビジネス支援図書館。ビジネスマンだけに特化したサービスを実施する訳ではありません。現代社会ではどんな年代の人でも経済の中で生きている。図書館が企業と市民を結びつけることで、新たなビジネスが生まれる可能性がある。そのためには問題と問題、情報と情報を結びつけて新しい解決策を導き出せる司書なり職員、外部協力者が欠かせない。私はそういう人を『オムスビスト』と呼び、非常に重要視している」

―活字からデジタルへのメディア革命に、図書館はどう対応すべきでしょうか。

「活字やデジタルになっていない情報は山のように存在します。地域には歴史の小さな目撃者、地域固有の特別技術者、語り部などが住んでいる。図書館はこれらをデータベース化し、市民に提供すべきです。例えば、図書館が小学校や中学校で毎年実施する夏休みの自由研究をアーカイブ(記録保存)して市民にも広く公開したらどうでしょうか。市民からいろいろなアドバイスをもらえば、研究テーマが深く掘り下げられるし、翌年度に継続的な調査を実施することも可能になりまする。川の汚染、昆虫の分布の変化、まちの様相の変化などは、時系列でまとめてこそ初めて価値が出る物です」

―図書館の利用率をもっと上げるにはどうしたら良いと思いますか。

「市民が生活の中に図書館を組み入れ、親しんでもらうための戦略を立てることが重要。ビジネスマンやOL向けに開館時間を延長するなどのサービスが問題部分に直接メスを入れる西洋医学的治療法なら、全体の気の流れを良くする東洋医学的な視点とも言える。私は現在、市民を対象に図書館を利用した『ブックツアー』を実践している。『装丁が気になった本』『一生読まないだろう本』など、あるルールを持って一定時間のうちに図書館の中で本を探す学習を兼ねた遊びです。近くワークブックにまとめる予定でいます」



■2003年を漢字1字で表すと?  イラク戦争、総選挙、阪神タイガースの快進撃など、今年も激動の1年でした。日本漢字能力検定協会は12日、今年1年を表す漢字に「虎」を選びましたが、皆さんが考える今年の漢字1字を、簡単な理由を添えてお寄せください。年末のトークバトルで紹介します。
■次回21日=日曜日は「図書館にベストセラーは必要か」 投稿特集

投稿特集とインタビューはいかがでしたか。平野さんは図書館に対し、ビジネス支援や地域情報の記録保存という機能を求めたり、「ブックツアー」という新たな楽しみ方を提案したりしています。投稿では、ベストセラーをきっかけに読書をする習慣が育てばいいといった肯定的な意見や、過去から未来への架け橋になるべきであって、「売れ筋」を追う必要はないのではないかといった主張がありました。次回のトークバトルも「図書館にベストセラーは必要か」をテーマに、みなさんからの投稿などを紹介します。感想や意見をお寄せください。


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