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| 「他人事ではいられない! どうなる裁判員制度」 検証 (04/02/08) |
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二〇〇×年、静川岡雄さんの家のポストに静岡地裁から手紙が届いた。「あなたは裁判員候補者に選ばれました。○月×日静岡地裁に来てください。正当な理由なく応じないと、罰則(過料)が科せられます」という内容だった。 静川さんが会社の上司に事情を話すと、「一日なら仕方ないけど、何日も休まれるのは困るよ」とくぎを刺された。地裁に行くと、裁判官から「被告人や被害者と関係はないか」などと質問された。事件の関係者は裁判員になれないという。 静川さんは「仕事が忙しいので辞退したい」と申し出たが、裁判官からは「よほどの事情がないと認められません」と許可されなかった。 静川さんは裁判員に選ばれ、他の裁判員や裁判官と共に、法廷で検察官や弁護士が行う証人尋問や被告人質問を聞いた。検察、弁護側とも主張に筋が通っているように感じる。法律の解釈などで分からない点は裁判官が説明してくれた。静川さんは迷った揚げ句、「有罪に足りる証拠はなく無罪」と意見を述べたが、多数決で被告人は有罪と決まった。 量刑を決めて審理は終了。日当や交通費を受け取って帰宅した静川さんは、「これで良かったのか」と疑問を感じ、インターネットの掲示板に意見を書き込もうかと思ったが、「守秘義務違反」に問われるという罰則を思い出し、やめた。 |
| 負担大きく批判も |
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政府の司法制度改革推進本部は一月二十九日、裁判員制度の骨格案(法律原案)を公表した。裁判に国民の感覚や社会常識を反映させようというのが裁判員制度の狙い。英米独仏はもちろん世界で約八十カ国が何らかの形で実施している「国民の司法参加」だ。二月中に関連法案が作成され、国会に提出される見通しだ。 英米の陪審制では国民から選ばれた陪審員は有罪か無罪かの事実認定を行うだけで、刑は裁判官が決めるのに対し、裁判員は選挙権のある二十歳以上からくじで選ばれ、プロの裁判官と共に、被告人の有罪・無罪や、有罪の場合は刑も決める。人数構成は「裁判官三人、裁判員六人」を原則とし、例外として被告側が罪を認めている場合などに限り「裁判官一人、裁判員四人」での審理も可能としている。控訴審は現行通り裁判官が行う。 裁判員制度の対象となる重大事件は年間約二千七百五十件。裁判員六人、裁判員に欠員が出た場合の補充裁判員を仮に三人とし、辞退などを見込んで必要な数の五倍の候補者を裁判所に呼ぶと仮定すると、全国で年間約十二万四千人が裁判員候補者になる。二十歳以上七十歳未満の人口は約八千五百万人なので、約六百八十五人に一人の割合だ。 裁判員には旅費、日当、宿泊費が出るが、金額は決まっていない。現在、検察審査会の審査員の日当の上限は約八千円。裁判員には守秘義務が課せられ、違反すれば懲役刑か罰金刑を受けることもあるため、国民の負担が大きいという批判もある。 いかに裁判員に分かりやすく、迅速な審理を行うかも重要だ。初公判前には裁判所、検察、弁護側が事件の争点などを整理するが、裁判員は参加しない。大半の裁判は数日以内で審理が終わる見通しだが、オウム真理教裁判のように長期化しやすい大型事件をどうするかは、まだ明確に決まっていない。 |
裁判に参加する国民にとって、気になる点を政府の司法制度改革推進本部に聞いた。 ―開始はいつごろ? 五年ぐらいの準備期間をイメージしている。国民に対する周知啓もうを相当行う必要があるし、裁判所の受け入れ体制の整備も必要。連日開廷するので、検察官や弁護士の仕事のやり方や配置も変わってくるだろう。供述調書の作り方や証人尋問の方法なども、裁判員に分かりやすくするために、トレーニングする必要がある。 ―辞退できる条件は? 個人事業主で仕事を休むと会社が動かなくなってしまう、海外出張が決まっていて他の人に代えられない、などの場合は許可される可能性がある。育児や介護を代わる人がどうしてもいない場合や、家族の葬儀、自分の結婚式でも辞退が認められるだろう。 ―守秘義務の範囲は? 評議の内容が表に出ると、自由な話し合いができなくなるため、裁判員は評議の経過や評決の数、その他の職務上の秘密を漏らしてはいけない。「裁判の流れが分かりにくかった」などの単なる感想は話しても構わないが、「あまり議論がなかった」と言うのは、違反に当たる可能性が強い。自分がどういう意見を述べたかも話してはいけない。自分の意見を話してよいことにすると、全員から聞けば、評議の内容が分かってしまうからだ。 |
静岡市立南中では本年度、三年生の公民の授業の一環として裁判員制度について学んできました。一連の授業の仕上げとして、三年二組の代表十一人が行ったパネル討論の様子を紹介します。討論後、クラス全員に導入の是非を尋ねたところ、意見はほぼ半々に分かれました。
―裁判員制度の導入で公正な裁判ができると思いますか。まず反対派の人、どうでしょう。 山崎舞子さん 無作為抽出ではやる気のない人が選ばれるかもしれない。また、法律の素人である一般市民では駄目だと思う。感情的になり、被害者ばかりに同情して、判断が偏る可能性もある。 岩崎美加子さん 司法はある程度専門家に任せるべき。素人ではえん罪が増える可能性もある。市民の意見を取り入れたから公正になるとも言えない。アメリカのO・J・シンプソン裁判(※1)では、陪審員の評決が黒人と白人で分かれたと聞いた。 中塚心君 市民に公正な判断は難しい。 宗岡美鳩さん 司法の市民参加は大事だが、現実的には荷が重すぎると思う。 長島瞳さん 選挙の投票率が低いのを見ても、一般の関心が十分得られるとは思えない。
―賛成派の意見はどうですか。 遠藤健太郎君 市民は感情的で駄目だと言うけれど、生の気持ちが反映されるのはいいこと。反対派の人は、裁判官は常に正しいと思いこんでいる。裁判官にも誤りはある。 小林彩乃さん 市民は裁判官とは違った視点から意見が出せるはず。裁判員に選ばれたからには真剣に考えるはずだ。 三華良太君 法律の専門家でない市民にも分かりやすいよう、何を判断するべきかきちんと説明があるはず。大丈夫だと思う。 山梨由次郎君 授業でも取り上げた薬害エイズ裁判(※2)の無罪判決には、納得がいかなかった。国民の意見を取り入れれば違った見方も出るはずだ。裁判への関心も高まる。 望月真愛さん 専門家にしか見えないことがあるのも確かだが、市民にしか見えないこともある。 ―制度の導入で司法権の独立が損なわれるのではないかという見方についてはどうですか。 岩崎さん 憲法では、裁判は裁判官が独自の良心で判断することになっているはず。 遠藤君 憲法の基本理念は国民主権なのだから、市民が入ることに問題はない。
―裁判員の中立についてどう考えますか。 岩崎信義君 裁判員が権力者の干渉を受けないようにすることが必要だ。 遠藤君 国民はメディアなどに流されやすく、適正な判断をするのが難しいという声もあるが、だからといって国民主権を尊重しなくていいということにはならない。 ―三審のうち一審だけ市民が参加することについては。 岩崎さん 一審の参加だけでは中途半端だ。二審、三審でひっくり返されてしまうことだってある。 三華君 一審だけでも市民の気持ちが聞ければそれでいいのではないか。 岩崎さん 気持ちを聞くだけでなく、結果にきちんと市民の意見が反映されなくては意味がない。 (※1)O・J・シンプソン裁判 一九九五年、元全米フットボールNFLのスターで黒人のO・J・シンプソンが、先妻とその恋人を殺害したとして逮捕、起訴された裁判。被害者二人が白人だったことなどから、人種問題がクローズアップ。陪審員の構成は十二中九人を黒人が占め、評決は無罪となった。 (※2)薬害エイズ裁判 血友病治療の権威だった安部英元帝京大副学長が、エイズウイルス汚染の危険性がある非加熱製剤の投与を部下に命じ、患者を死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた裁判。東京地裁は「危険性は予見できなかった」として無罪を言い渡し、検察側は控訴した。 |
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■次回15日(=日曜日)は「他人事ではいられない! どうなる裁判員制度」 インタビュー 裁判員制度がスタートすれば、「自分は悪いことはしないから、裁判なんて関係ない」とは言っていられません。静岡市立南中の生徒の中には、「将来、裁判員をやってみたい」という感想もありました。次回のトークバトルも引き続き、「他人事ではいられない!どうなる裁判員制度」がテーマです。裁判官、検察官、弁護士にインタビューし、政府骨格案の評価や今後の課題などについてうかがいます。 |