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| 新聞・テレビ・ラジオ連動企画 「合併の主役は誰?」 対論(2) (04/04/04) |
| 静岡新聞社と静岡放送の連動企画「トークバトル・合併の主役は誰?」の第2回は、平成の大合併について対照的な意見を持つ小西砂千夫関西学院大教授と、小原隆治成蹊大教授のインタビューを紹介します。「市町村(まち)の在り方」をテーマに、市町村合併の意義や全国の良い事例、悪い事例についてうかがいました。 |
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―平成の市町村大合併を批判しているのはなぜですか。 「合併が必要な理由にほぼ何一つ納得いきません。最近、総務省は公式には分権の受け皿として必要なんだということを強調しているが、分権改革は通達行政などの国のしばりを外そうということであって、決して自治体の仕事を新たに増やそうということではない。既に今ある仕事をするには自治体が小さすぎるから合併するんだという理屈をはっきりさせる必要がある。ところが、今ある仕事の中で、自治体が単独で行うのが大変なのは、介護保険、清掃行政、広域消防、救急医療、水道など、いくつかしかない。自治体のサービスのすべてではないし、今も一部事務組合や広域連合という制度がある。もしそれで対処できないならば広域連合サイズの人口十万―二十万人程度の相当大きな合併をしないと無理であり、理屈が通らないと思います」 ―分権受け皿論が成り立たないとすると、どういうことが言えるのでしょうか。 「平成の大合併は国の財政再建を進めるためのものだとも言われていますが、総務省は公式には全く認めていません。私は分権受け皿論よりも財政再建論の方がはるかに理屈があると思う。政府の八十兆円予算の中で、五十兆円が一般歳出。残りのうち十五兆円が交付税の特別会計に入っていく。十五兆円で国債を返している。今、一般会計で国債の新規発行が三十兆円あるのに、返済分は十五兆円しかない。正常じゃないのは誰だって分かる。増税が嫌だったら交付税を削るというのは正しい理屈なのに、合併特例債を大盤振る舞いして、その借金を返すのに交付税をつぎ込むという信じられないことをしているのです」 ―合併特例債の発行は一時的なものだから、長期的には問題ないという意見もありますが。 「今、特例債を使って合併バブルの事業を行っていると、財政上のモラルハザード(倫理欠如)が行政体質に染みこみ、自治体にとって長期的にマイナスの打撃を与えると思います。熊本県の天草二市八町の合併では特例債が始まる前だったが、合併が決まっているのに役場や議事場などの箱物の建設合戦になった。合併前に借金しまくって、貯金を使い切るのは合併の一種の常識です。それはなぜか。人口が同じサイズの自治体AとBがくっついたとすると、一人当たりの借金も貯金も合併前の半分になるからです。だから特例債を中心としたアメをちらつかせるほど、自治体としては合併はよく理屈が分からないけれど、とにかく得して損しなければいいということになりがちです」 ―議員の在任特例にも批判が噴出しています。 「議員の在任特例の適用は六割ぐらい。非常に批判が強いのでだんだん縮んできたが、一年ぐらい前だと大体の所で特例を使っていた。議員数は遅くとも二年後には減るんだからいいじゃないかという意見もあるかもしれないが、そうは問屋が卸さない。広島県福山市では在任特例は使っていないが、失職した町議二十七人を行政諮問委員に任命し、月二十五万円を支給している。在任特例の方が住民に見えるからまだましなくらいです。新しい市町村合併特例法案には、旧市町村単位の合併特例区が盛り込まれた。首長が選任するその長や協議会構成員には、間違いなく以前の首長や議員が選任されるでしょう。構成員に『報酬を支給しないことができる』となっているが、絶対に出しますよ。それでは何のための合併なのかということになります」 ―合併しないで財政効率を上げるには、どうしたらよいと思いますか。 「専ら自治体がサービスを提供するというやり方はやめて、住民が自分たちでできるサービスは自力で供給するやり方ができないか。長野県の栄村、下條村、泰阜村など、実際に実績を上げている自治体がある。道路を造る時に、国土交通省の規格通りにするのではなく、幅員も狭くていい、直す距離もわずかでいいと考えて、自治体が材料や道具をそろえ住民参加で工事を行う方が、国の補助金をもらうより安上がりで済む。このような自立する自治体こそ、今後の市町村のモデルになると思います」 |
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―市町村合併に賛成の立場をとっている理由は何ですか。 「合併の主な目的は財政効率化ではありません。市と町村では職員数が全然違いますが、権限の差はあまりない。あくまで平均的にですが、『仕事と組織の規模のバランスがとれていない』と言えます。一例ですが、自治体が公募債を発行するには、やはり金融知識のある職員がいた方がいい。分権の時代には究極的には条例の形で、どういう自治体運営をするかを示す必要がある。条例作成には、法務に詳しい職員がいた方がいい。これらは平均的な自治体がみな不得意にしてきた分野です。職員数が少なくてもできるという自信も実績もある自治体がある一方、やはり小規模の厳しさを自覚している自治体もある。後者の場合は、『良い相手があるなら合併した方がいい』わけで、どんな合併もいいとは限りませんが、どんな合併も悪いとは思いません」 ―合併しなくても、複数の自治体が共同で事業を行う「広域連合」を活用すればよいという意見に対しては、どう考えますか。 「広域連合にぴったりする事務はあります。例えば介護保険の認定。小さな自治体がみな専門家を雇うのは大変ですから。消防、病院、ごみ処理、斎場なども共同でできる。ところが予算編成や条例作成は共同ではできません。自治体経営の本題にかかわる意思決定とか、財政運営のノウハウは共有できません。広域連合では対応できないことがある。合併の狙いがお金だとすれば、広域連合でコストを下げるので十分となるが、お金の話は合併の目的のあくまで二番目ですから」 ―全国の市町村合併の中で良い事例を教えてください。 「良き合併とは難しい利害調整を克服することだと思います。良き合併かどうかの判断には時間がかかるので今の時点では判定できないが、良き合併が意識されている合併はあります。例えば今年十一月に山梨県の七町村が合併してできる北杜(ほくと)市。『八ケ岳市』という案があったが、七町村もあると八ケ岳に遠い所もあり、新しい市名を作った。名前はごく一部に過ぎないが、良き合併には目配りや気配りが大切。新しい自治体でも地域間バランスが引き継がれていけば、十年ほどたてば『良い合併』と言われるでしょう。みんなが税金を払っているわけで、その中でバランスをどう取るかが地域政治だと思います」 ―今国会で審議中の新しい合併特例法案に盛り込まれた「合併特例区」をどう評価しますか。市の下にさらに区を設けると、事務が煩雑になるという批判もあります。 「特例区は『合併するのなら地域自治を大事にしたい』という地方からの声に応えて作った制度。平成十年ごろから、合併を推進すると同時に、自治を強化する必要性はずっと議論してきた話。今回さらに進んだ形になった。簡素で効率的な行政と自治の徹底は両立しにくい。国としては自治への目配りとして制度を作ったということでしょう。三位一体改革については、『どうせ国がやることは地方切り捨てだ』と見るか、それでもこれだけできたのは前進と見るか、これは大きく違う。小泉さんだから所得譲与税の形で基幹税の移譲ができたと見るか、小泉さんですら国庫支出金の見直しがあの程度かと見るかの違いです」 ―地方分権時代の自治体のモデルとなる市町村の例を挙げてください。 「例えば、北海道ニセコ町。自治体関係の全国研修などに、ニセコ町の職員が積極的に参加している姿を見ます。人口四千五百人というニセコ町の規模だと、職員が一人で何役もやっているので、財源的にも人手の問題として研修に人を出すのは大変で、よほどそれが大切だと思っているからだろう。逢坂誠二町長には目の前の仕事よりもっと大事にすることがあるという意識があると思う。ニセコ町も合併協議をしているが、逢坂町長は『今の国の合併政策はいかにもご都合主義である』と厳しいことを言いつつ、自分の町の問題としては、やるんだったら良い合併をまじめに目指している、その使い分けがよいバランス感覚だと思います」 |