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| 「どこまで認める?生殖補助医療」 インタビュー(3) (04/05/02) |
| 体外受精、顕微授精などをはじめとする高度生殖補助医療は広がりを見せ、保険の適用されない不妊治療を受ける人のために、自治体による助成制度の導入も始まりつつあります。しかし、他方では子供の出自を知る権利の問題、海外の代理出産で生まれた子供の社会的地位の問題など、考えるべき課題は山積しています。今回は、静岡市の不妊カウンセラーと、国内では受けられない不妊治療を米国で受けるためのコーディネートに携わってきた民間組織の代表者に、当事者のために求められることを聞きました。 |
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―生殖補助医療の発達は当事者にどんな影響を与えていますか。 「生殖補助医療の発達と不妊治療は、終わりのない追い駆けっこ。これまでに不可能だったことが可能になれば、当事者は途中で治療をあきらめることがますます難しくなります。高度生殖補助医療を行う施設は急増しているので、自分が通っている病院で本当にいいのか、排卵誘発の方法は自分に合っているのか、といった不安もあるよう。インターネットで情報があふれているのも不安の一因だと感じます」 ―当事者にどんな心構えが必要でしょうか。 「過度な期待を抱いてはいけないということです。体外受精の妊娠率は20―30%と言われますが、これは70―80%の人は成功しないということ。回数を重ねれば確率は上がるにしても、必ず妊娠できる訳ではないことを認識すべきです。不妊治療には絶対はない。卵管に問題があったり、難しい状況でも妊娠する時はする。おおらかにならないと駄目です」 ―生殖補助医療はどこまで認められるべきでしょうか。 「非常に難しい問題で、結論が出せません。ただし議論の中で違和感があるのは、女性側の治療ばかりが取りざたされること。男性側の治療としては、AID(精子提供による人工授精)に長い歴史があるし、たった一つの精子を選んで受精させる顕微授精も普及しています。一方で卵子提供は遅れて始まり、代理出産も問題ばかりが指摘される傾向がある。協力者の身体的負担が重いのは分かりますが、生殖にどこまで立ち入るかや、子供の出自を知る権利を問題とするなら、男性側の不妊治療にも同じことが言えるはずです」 ―治療方針の決定で重要なことは何でしょう。 「不妊治療はお金や時間がかかり、仕事にも影響が出ます。排卵期のタイミング療法など性交渉の制約もある。治療に踏み出す時点、また治療を次の段階に進める時点で二人がきちんと向き合い、治療姿勢について合意しないとうまくいきません。それから、不妊治療は治療に消極的な方に歩調を合わせ、あせらないでほしい。不妊の原因は卵が悪いと言われたり、精子が少ないと言われたり、いろいろです。ただ、検査では分からない原因もあるし、あくまで双方の問題として考えてほしい」 ―不妊は女性の問題として考えられる傾向にあります。 「男性に原因があることもたくさんあるのに、治療に通うのは女性です。女性が産む性を持つおかげでどれだけ大変な思いをするか、もっと理解されるべき。仕事に行く前に毎日病院に行って排卵誘発剤を注射し、採卵が終われば、受精したか、分割したか、一喜一憂するのは男性にはおそらく計り知れない体験。夫がそこに思いをはせ、言葉をかけることが重要です。二人で精いっぱい努力したという気持ちがあれば、たとえ治療をあきらめても、いい夫婦として生きていけます」 ―自治体が不妊治療に助成金を出す動きがあります。 「かえって不妊の人を追い込むのではないかと不安になります。申請して治療を受けて、産まなければならないというように。中には申請するだけで惨めな思いをする人もいるでしょう。また高度生殖補助医療は施設によって治療内容が異なる部分もあり、一律に助成するのはなじまない気もする。それならむしろ、体外受精の際に誰もが必ず行う、排卵誘発剤を打って採卵するまでの過程に対し、保険を適用するなどした方が理にかなっていると思います」 ―当事者のために、社会にどんなことが求められますか。 「既婚カップルのうち10―15%は不妊と言われ、珍しくありません。不妊は個人の問題でなく社会の問題です。女が子供を産むのは当たり前だからとか、夫が長男だからとか、周囲の圧力で子供を持たなければと思いこんでいる女性は多い。また心から産みたいと願ったのに、かなわなかった人もいる。さまざまな女性の立場を理解し、子供のいない女性を特別な目で見ることなく、女性が産む権利と同様、産まない権利も行使できる社会が求められます」 |
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―米国での代理出産の仲介を先駆的に行ってきましたね。 「米国で初めて代理出産にかかわった弁護士との出会いから、米国での不妊治療を望む人たちを支援するようになりました。医療スタッフとともに投薬管理なども含め、米国での治療をコーディネートしています。今年で十六年目ですが、これまで五十三組に代理出産を世話し、双子、三つ子を含めて六十七人が生まれています。卵子提供による体外受精もコーディネートしていて、四百人近くが生まれています」 ―代理出産に問題を感じる体験もあったと聞きます。 「代理出産の契約に際しては、代理母に何かあれば直ちに駆けつけるという誓約がありますが、出産が早まったり、不測の事態になったりした時、依頼者の口から最初に出るのは、大抵の場合『仕事で急には無理』という答え。自分たちで産むのなら何を置いても入院するし、駆けつけるでしょう。依頼者夫婦の身勝手にも見える振る舞いに何度か接することがあり、代理母の体は産む道具ではない、という思いも膨らみました」 ―それは解消できる問題でしょうか。 「代理出産はお金を払えばいいというものではありません。代理母とその家族との間に、心づくしの人間関係を築くことができなければ駄目。その意味で日本と米国は遠すぎ、言葉の壁も大きい。代理出産が国内でできるならば、かなり解消される部分があると思います。ただし、やるなら全国一律に可能にしなければ。学会の会告を無視した長野の根津医師のようなやり方は、患者を混乱させます。希望があっても全部を引き受けられる訳ではないだろうし、患者の期待感を変にあおらないか心配です」 ―しばらく代理出産の相談を受け付けなかった時期もあるそうですね。 「難しい面ばかり痛感するようになり、いったんは代理出産のコーディネートをやめようと考えました。しかし中止を公表したとたん、代理出産に望みをつないで子宮を摘出したのにとか、そのためにお金をためてきた、などといった切実な声が多く聞こえ、完全に扉を閉ざすことはできないと思い直しました。現在は年間数件を扱っています」 ―現在は代理出産についてどんな考えですか。 「法律を作り、禁止をしてしまえばそれまで。子宮のない人が、合法的に遺伝上の子を持つことはできなくなります。倫理的な問題や、子供の出自を知る権利をどう考えるかなど、多くの壁があるのは分かりますが、本当にそれらの問題をうまくクリアする方法がないのか、真剣に考えるべきです。実施に条件を付けたり、関係の法律を整備したりして、当事者の気持ちを切り捨てない方向で検討してほしい」 ―日本の不妊治療の現状をどう見ますか。 「治療期間が長すぎますね。不妊治療はお金も時間も体も負担が大きい。四十代後半の人が、ぼろぼろになって駆け込んで来ます。米国の医師は日本人の患者の治療歴を見て、なぜ結果の出ない治療をこれほど長くやるのかと驚きますよ。長くなればなるほど、赤ちゃんを抱くこと以外考えられなくなっている人が多い。余裕がなくなり、利己的になります。不妊治療を十年も十五年も長引かせてはいけません。そうなると、産まなかった場合のその後の生き方も難しくなる」 ―不妊治療を選択する時に考えるべきことは何でしょう。 「本当にそこまで子供に執着しなければならないのか。夫婦や親族関係など、それまでふたをしてきたものを開けてみることも必要です。その上で取るべき道を考えなくては。大事なのは夫婦の合意の下、納得いくまでやることです。最後の手段として代理出産に挑戦し、途中で採卵ができなくなって子供は得られなかったけれど、自分に与えられた運命として子供のいない生活を受け入れられるようになった人もいます。生殖補助医療の進展で、今ではかつてなら考えられない治療も可能ですが、よく考え、話し合った上でどうしても子供を望む夫婦に、少なくとも情報を与えるのは医療関係者の務めだと思います。現実に選択肢があるのに、選ぶなというのは残酷なことです」<> |
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■次回(5月9日=日曜日)は「どこまで認める?生殖補助医療」投稿特集 生殖補助医療をどこまで認めるべきかは分からないとしながら、女性側の治療に比べ、男性側の治療は批判にさらされてこなかったと指摘した柴田さん。代理出産の問題を痛感しつつ、心から子供を望む人のために、可能な限りの手段を残しておくべきだとした鷲見さん。立場はそれぞれです。結論を出すのは困難ですが、あなたはこの問題をどう考えましたか。次回は投稿特集です。みなさんのさまざまな意見表明を期待しています。 |