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「フリーター400万人時代を考える」   インタビュー(1)  (04/05/16)

 今回のトークバトルは「フリーター400万人時代を考える」です。長引く不況や雇用形態の多様化で、企業が正社員を削減しているのに伴い、フリーターが増加する勢いは止まることを知りません。このままで本当に良いのでしょうか。高校と中小企業との交流会を開いている県中小企業労務改善団体連合会の梅原秀夫会長と、就職率五年連続100%を誇る県立松崎高校の阿部太郎校長に意見をうかがいます。


 県中小企業労務改善団体連合会
梅原 秀夫会長
県中小企業労務改善団体連合会 梅原 秀夫会長

うめはら・ひでお氏 県重機建設業工業組合長、静岡西部建設代表取締役。64歳。
「1人前」までの労苦嫌う傾向

 ―若者の早期離職が問題になっていますが、実際はどうですか。

 「われわれの業界では、新卒の新入社員の七、八割が一年以内にやめていると思います。意欲があるかどうか、仲間とうまくやっていけるかどうかを判断して採用するのですが、やめていく若者は、仲間がいなくなってしまうことが多い気がします。若者は会社の中でいろんな人と接触して、話を聞いたり質問したりして成長するもの。最近は会社以外での付き合いをみなが嫌がる傾向にあるので、仲間づくりが難しくなっているのかもしれません

 ―新入社員の教育はどのように行っているのですか。

 「組合関連の学校に一年間通わせて、作業主任者、建設機械運転者などの資格を取らせます。それから一人前になるまでには五年や七年はかかりますが、今は我慢できない人が増えている。最近は結婚式で親が『嫌になったら帰ってきなさい』と言うようだが、フリーターも同じ。親も子供に『仕事が嫌だったらやめればいい。生活はみてやる』と言っている。高卒の新入社員がいきなり高級車で出勤してきたという話も聞きます。親が子供に『就職するなら買ってやる』と言って、だましだまし働きに行かせているのでしょう。そういう時代なんです」

 ―企業が正社員をどんどん減らしていることをどう思いますか。

 「いかに安い物を作るかを考えて、労働条件を下げないと、製造業や小売業は競争に太刀打ちできません。会社を担う人はわずかにし、後はパートやアルバイト、派遣社員でいい。そういう形をスマートに取り入れていくのが“勝ち組”になり、器用にこなせない会社が倒産するのでしょう。今はやりの激安ラーメン店には、職人は必要ありません。マニュアル化されているので、一週間で店長になることもできる。この問題は時代を経過しないと解決しないと思いますね」

 ―一部の幹部社員だけでは、技術の伝承ができなくなる恐れがありませんか。

 「技術や技能は時代によって変わっていくものです。今は鍛冶屋、かご屋といった職業はほとんどありません。建設現場でも左官業、塗装業、タイル業などの需要は減っています。建設工事も簡単にできる工法がどんどん開発されています。将来どれだけ需要があるかを考えると、職人は文化財としてしか残らないのではないかとも思います。もちろん割り切れないところもありますが」

 ―中途採用についてはどう考えていますか。

 「うちの会社では三十歳ぐらいと五十歳以上の中途採用が多いですが、社会保険が欲しいとか、生活のために働くとかいう目標があるので、新卒より定着率が良く、期待しています。採用の際は資格と人間性を重視します。ずっとフリーターだったからと言って、いきなり断ることはありません。学歴も気にしません。どんな会社でも意欲のある人は育てたいと考えていると思いますよ

 ―高校との交流会はどのように行っているのですか。

 「二年前から職業訓練課程を持つ公立高校の校長や就職担当教諭らと懇談しています。高校生の就職率の悪化に対処するため、産業界と高校との相互理解を深めるのが目的です。交流会の結果、高校生はすぐやめるから採用していなかったが、今度は採用してみるという企業も出てきました。高校も地元企業に目を向けてくれるようになったのはうれしいですね。若者のフリーター志向は時代の流れとあきらめないで、地道な努力はしているつもりです」

 ―最近、高校や大学などが取り入れているインターンシップ(就業体験)をどう思いますか。

 「今は三日間や一週間の体験が主流のようですが、半年かせめて三カ月ぐらい体験しないと、仕事のことは分からないと思います。建設現場では資格の問題があるし、いつ事故が起きるか分からないので、体験させる作業を用意するのも難しい。子供たちにとっても学校の単位になるとか、目的を持って臨む方が効果的ではないでしょうか。でも、子供たちがさまざまな仕事を見学することはとても有意義なことに間違いありません」


  松崎高
 阿部 太郎校長
松崎高
 阿部 太郎校長

あべ・たろう氏 昭和48年、沼津工高から教員生活をスタート。平成12年、川根高教頭、15年から現職。53歳。
働く意味、自ら考え就職を

 ―高校生の就職氷河期と言われる中、平成十一年度から五年連続で就職率100%を達成している松崎高校では、どんな指導を行っているのですか。

 「本校は一学年三クラスで、昨年度は三十七人が就職しました。JR東海や東京電力、クイーンズ伊勢丹、東京急行電鉄などの大手企業に就職した生徒もいます。八十人は進学し、進路未決定者はいません。特に就職指導だけに力を入れているのではなく、普段の学校生活全般で、『働くとは何か』『なぜ勉強をしなければいけないのか』を考えさせるようにしています。進学するにしても、その先には就職があるからです」

 ―もう少し具体的な流れを教えてください。

 「企業や大学・短大の見学は一年生の夏休みから行い、見学申し込みは極力生徒自身に任せるようにしています。生徒は当初電話をかけるだけで苦労しますが、社会の厳しさに接し、勉強やマナーの大切さを実感します。そのようにして職業観や人間観を育てているので、高校生の求人が解禁される七月一日には、三年生は希望する会社や志望動機が固まっているので、素早く行動できます。『高校生は採用しない』という企業に何度も見学を申し込み、その結果、求人票を出してくれたこともあります」

 ―どうしてこのような指導に行き着いたのですか。

 「十年ほど前までは生活指導上の問題を抱えた生徒もいて、必ずしもうまくいっていませんでした。へき地ですから求人数がもともと少なく、生徒が希望するような大手企業は求人票が来ないので受験すらできない状況でした。七月一日に求人票が来てから、どこにしようか考えるという形を続ける限り、行きたい会社に行けることはありません。それよりも自分がやりたい仕事を自分で調べる方がいいと、平成九年ごろから学校全体で企業や大学の見学に取り組むようになりました」

 ―若者の早期離職が問題になっています。高卒の五割が就職後三年以内に離職するそうですが、松崎高校の場合はどうですか。

 「早期に離職するのは、一学年に一人いるかいないかです。自分で就職先を決めれば、学校や親のせいにできませんから、困難があっても長続きするのでしょう。フリーターになってはいけないとか、あえて指導はしていませんが、フリーターになりたいという声は聞きませんね。アルバイトが責任のある仕事を任せられないことや、生活が安定しないことは生徒もわきまえています。行きたい会社に行けるのであればフリーターになる必要はないのでしょう」

 ―さまざまな職種・学校の中から、進路を選択するためには、どんな指導を行っていますか。

 「学年別の進路ガイダンスは生徒の自主運営が特徴です。さまざまな分野の職種や学校から、各学年十五―二十人程度の講師を呼びます。だれを呼ぶか考えることから始まり、講師との交渉も生徒が行います。ガイダンスで生徒が興味を持てば、企業や学校の見学につなぐことができます。高校の低学年では特に、生徒の興味の対象は何かを考えた上での進路指導が必要です。それがないと、単なる偏差値教育になってしまいます」

 ―最近は雇用形態の多様化で、正社員は減る傾向にありますが、やはり正社員を勧めますか。

 「ここ五年間に就職した生徒はすべて正社員です。最近は契約社員しか採用しない業界もあるので、そうするしかないなら認めますが、気楽だからフリーターで良いというのは問題です。自分が生きるためには他者の生産物を消費しているのだから、自分もだれかのために生産するのが人として生まれた宿命だと言いたいですね

 ―松崎高校の進路指導は全国的にも注目されています。誇らしいですね。

 「生徒が有名企業に就職することで、地域も喜んでくれていますが、本当にそれでいいのかというのが次の課題です。現状は、東京に派遣するために人材を育てているようではありませんか。そうではなく、この地域を豊かにする人材をどうつくるか。本校の使命にかかわることですから、地域と一緒に考えていきたいと思っています」

 フリーター 内閣府の定義によると、学生と主婦を除く15―34歳のうち、パート・アルバイト(派遣などを含む)と働く意思のある無職の人を指す。この基準に当てはめると、フリーターの数は平成13年に417万人で、同世代の約2割に当たる。就職後3年以内に中卒の70%、高卒の50%、大卒の30%が離職するという「七・五・三現象」や、若年の無業者の増加も問題になっている。




■次回(5月23日=日曜日)は「フリーター400万人時代を考える」インタビュー(2)
 インタビューはいかがでしたか。厳しい経済状況の中で若者を採用している企業の苦悩がうかがわれる一方、松崎高校の例からは若者の職業観を育てる具体的な方法が見えてきた気がします。次回も引き続き、「フリーター400万人時代を考える」インタビューです。一度フリーターになると、正社員になるのが難しいことがデータ的にも裏付けられています。脱フリーター策などについて関係者にうかがいます。


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