トークバトル Eメールセッション その他の意見 Eメール投稿規定 紙面バックナンバー
ウェブラインへ


「フリーター400万人時代を考える」   インタビュー(2)  (04/05/23)

 今回も引き続き、「フリーター400万人時代を考える」がテーマです。政府は昨年、フリーターや若年失業者対策のために「若者自立・挑戦プラン」を策定し、本年度から本格的な取り組みが始まっています。最近の行政の取り組みについて、静岡労働局の今野文平職業安定部長にインタビューしました。また、フリーターやひきこもり、非行などの青少年の就労支援に取り組んでいる「青少年就労支援ネットワーク静岡」代表の津富宏県立大助教授にも、若者の就労支援の在り方をうかがいました。


 静岡労働局職業安定部長
今野 文平さん
静岡労働局職業安定部長
 今野 文平さん

こんの・ぶんぺい氏 昭和50年、労働省に入り、主に職業安定、職業能力開発業務に携わった。厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策課を経て、ことし4月から現職。49歳。
求人、求職がミスマッチ

 ―県内にはフリーターや失業中の若者はどのぐらいいるのでしょうか。

 「フリーターの正確な数の把握は難しいですが、政府が昨年六月に定めた『若者自立・挑戦プラン』では全国でフリーターが二百万人、そのほかに若年無業者や失業者が百万人いると試算しています。県内の若者の失業率は調査対象数が少ないことから公表されていません。全国の今年三月の完全失業率は4・7%なのに対し、十五―二十四歳の失業率は11・8%で、非常に高い。県内の失業率は全国より低い傾向があるので、若者の失業率も同じだと思います。一方、同年代の求人倍率は一・二五倍で、若者の求人は結構あると言えます」

 ―何だか不思議な現象ですね。どうしてこのようなことが起きていると思いますか。

 「まず、若者の就業意識に問題があると思われますが、雇用の面においては求人側と求職側がミスマッチを起こしているのは事実でしょう。例えば臨時・短期的雇用や派遣・請負・パートなど就業形態の多様化に、若者の希望が合わないとか、就職希望先が本人の持つ技能のレベルに合っていないとか。また、面接を受ける以前の就職に対する姿勢に問題がある若者もいます」

 ―就職できない若者に、ハローワークではどのような対応をしていますか。

 「仕事をする心構えが不足している人に対しては随時、セミナーを開催するなど意識啓発に努めています。希望が高すぎる場合は、『この仕事にはこういう技術が要求される』ということを説明し、できるだけ本人が納得する形で相談を進めています。しかし、現実には、就職することの厳しさを身をもって経験しないと納得しない人もいるのも事実です」

 ―「フリーターは本人の勝手」というとらえ方もありますが、政府が「若者自立・挑戦プラン」を定めて、フリーターをはじめとする若者の雇用対策に乗り出したのはなぜですか。

 「あるアンケートではフリーターの40%が正社員になれないのでやむを得ずフリーターになっていると答えています。いずれわが国社会の中枢を担っていく若者に、しっかりした職業能力が蓄積されないと、日本の経済基盤が崩壊しかねません。フリーターとそうでない人との間に、生活基盤の欠如による所得格差が広がるのも問題です。それで文部科学省、経済産業省、厚生労働省が共に若者自立・挑戦プランを策定し、官民協同で対策を始めることになったのです」

 ―具体的には新たにどんな施策が始まるのですか。

 「本年度から若者就職支援センター(ジョブカフェ)や日本版デュアルシステムといった制度が全国的に始まります。支援センターは相談、研修、職業紹介など、若者を対象とした雇用関連サービスを入り口から出口まで提供し、若者が気軽に利用できる施設です。県が主体となって、六月に静岡、沼津、浜松の三カ所にオープンする予定です。日本版デュアルシステムも県が主体となって現在、準備を進めています

 ―静岡労働局では若者対策で最近力を入れていることはありますか。

 「在学中の対策としては、昨年度からジュニア・インターンシップを強化しています。高校生が就業体験を通じ、職業観を育成する事業で、昨年度は十八校千百八十六人が体験しました。卒業後の対策としては、若者のトライアル(試行)雇用制度があります。三カ月間の有期雇用から入り、常用雇用に結びつけていく事業です。平成十三年十二月に開始し、昨年度は製造、サービス、販売などさまざまな業種で千十九人が参加し、74%が常用雇用へ移行しました。非常に効果がある事業だと思います。本年度も企業の皆さまに積極的な活用をお願いしています」

 ―働く意欲がないとか、ハローワークに行くのが怖いという若者には、どう対処したらよいと思いますか。

 「とにかくハローワークなり、若者就職支援センターに一度来ていただきたいですね。あいさつができないとか、コミュニケーションをとることが苦手な若者については、家庭や学校も含めた関係機関で連携を図り、対処していくことが重要だと思います」


 青少年就労支援ネットワーク静岡代表、県立大国際関係学部助教授
 津富 宏さん
青少年就労支援ネットワーク静岡
代表、県立大国際関係学部助教授

 津富 宏さん

つとみ・ひろし氏 平成14年、フリースペース主宰者、就職情報会社社員、電気工事士受験指導者などと「青少年就労支援ネットワーク静岡」を設立した。44歳。
社会性を養う訓練 必要

 ―「就職できない」「仕事が長続きしない」という若者が増えています。従来の行政施策の問題点は何ですか。

 「一番問題なのは、これまでの雇用安定行政が『人は仕事をしたいものだ』という前提だったことです。問題の本質は若者が仕事を『怖い』と思っていることなのに、ハローワークでは『どんな仕事をしたいか分からない』という人に対し、適性や興味を検査して求人を紹介するだけで、意欲の問題まで手が入らない。その結果、就職におじけづく若者は拾われないという悪循環に陥っています

 ―従来の職業訓練や資格取得講座に欠けていたものは何ですか。

 「私は少年院の教官を務めていましたが、少年院では溶接の資格取得など、さまざまな職業訓練カリキュラムの裏に、個人のためのカリキュラムが同時進行しています。実は、重要なのは裏のカリキュラムです。これは人の話をきちんと聞く、分からなかったら質問する、一日の段取りを考えてから仕事を始める、あいさつをきちんとする、必ず掃除で終わる、自分のことだけでなく忙しい他人を手伝う―などの課題を個別にくみ上げたもので、本人に意識させて進歩を援助します。しかし、厚生労働省が従来用意してきた仕組みでは、こうした社会性を個別的に伸ばすための裏のカリキュラムの重要性が十分に認識されていません」

 ―非行少年とフリーターやひきこもりの若者に、どんな共通点があるのですか。

 「職業不適応の本質的問題は社会性の欠如です。大学生でも同じで、微妙な差で就職内定をたくさんもらえる人ともらえない人がいます。その差が“コミュニケーション能力”です。人の話をちゃんと聞いて、人間関係を作って、距離を縮めることができて、自分も相手も心地良い関係をある程度作れること。その能力が弱い。一度就職した後でひきこもってしまう若者も多いですが、対人関係が良ければ、簡単には仕事はやめないものでしょう」

 ―青少年就労支援ネットワーク静岡はどんな活動をしているのですか。

 「昨夏には仕事がうまくいかない人を対象にワークショップを開きました。ワークショップの本質は話し合いの過程自体にあります。履歴書を書く練習をした時、十人の参加者の多くは学歴・職歴を書くところで立ちすくみました。過去を認めたくないのでしょう。しかし、参加者が他者とコミュニケーションしながら対人距離を縮めていく時、自分を認められるように変わっていきました。その結果、二人がすぐに就労体験を行い、一人はそのまま就職し、残りの一人も長期の就労体験に移りました。他の三人も仕事やバイトに定着しました」

 ―支援している若者に特徴はありますか。

 「ワークショップに先立ち、ネットワークが開いた第二種電気工事士の受験講座に通って、合格した若者もいます。その若者は無口で作業も遅いので、『やる気がない』と思われがちですが、実際は違います。完ぺきさを求めながら慎重にやるため、時間がかかってしまうのです」

 ―フリーター問題の本質は何だと思いますか。

 「専門性の高い職種でフリーターをしながら、自由な生き方を選ぶ人もいますがごく少数です。放っておくと未来がない人がほとんどです。そのうち解決するだろうという響きのあるモラトリアムという言葉はきれいすぎる。社会性が足りないことが本質なので、そういう若者は年を取るほど職業適応できません。自分を訓練する機会を自分で見つけられない若者の社会性をどのように訓練するかは、行政が真剣に取り組むべき課題です」

 ―そういう若者にはどのような支援が有効だと思いますか。

 「考えるより、行動させるしかないんです。若者が相談に来たら、その場で面接のアポイントを入れてしまうとか、本人が断り切れない状況をつくって職場体験に連れ出したりするとか。水泳と一緒で、考えても泳げるようにはなりません。浅くてもいいからプールに入れてしまう方がいい。そしてがっちりフォローするということです。仕事がうまくいかない若者には、人生に対して受け身で、言われれば動くタイプも多い。行政ももっとおせっかいにならなければ、この問題は前に進まないと思います」

 ジョブカフェ 都道府県が主体となり、若者を対象とした雇用関連サービスを提供する「若年者のためのワンストップサービスセンター」の通称。職業や能力開発、創業に関する情報提供や適性判断、カウンセリング、研修、職場体験、職業紹介などが受けられる。

 日本版デュアルシステム 企業での実習訓練と教育機関での座学を一体的に組み合わせて若者を一人前の職業人に育てるのが目的。ドイツの職業学校の生徒が企業実習を行うデュアルシステムを参考に作られた。35歳未満を対象に、公共職業訓練施設や専修学校などが訓練生を受け入れて教育を行う。




■次回(5月30日=日曜日)も「フリーター400万人時代を考える」インタビュー(3)
 今回は行政と民間それぞれの立場で若者の就労支援に携わっているお2人にインタビューしました。今野静岡労働局職業安定部長は求人側と求職側のミスマッチを指摘し、津富県立大助教授からは「就職におじけづく若者が拾われないという悪循環に陥っている」との問題提起がありました。次回も「フリーター400万人時代を考える」をテーマに、フリーターの悩みなどを聞きます。


トークバトル表紙へ

ページトップへ
Copyright2002 The Shizuoka Shimbun. All rights reserved.