|
|
| 「フリーター400万人時代を考える」 インタビュー(3) (04/05/30) |
| フリーターの増加は次代を担う人材が育たないうえ、税金や年金財源の確保に影響が出たり、未婚化・少子化が進んだりすることが心配されています。今回のテーマも「フリーター400万人時代を考える」です。フリーター経験者でNPO法人「育て上げネット」スタッフの安田英文さんと、フリーター生活をポジティブに生き抜く知恵を著書「知って得するフリーター読本」にまとめた金子雅臣さんに、これからのフリーター対策の在り方を聞きました。 |
| |||||||||||||
―高校卒業後、フリーターを五年間やっていたそうですが、なぜ就職しなかったのですか。 「都内の私立進学高に入学したら、周りはできるやつばかり。すっかり勉強の目標を見失い、二年で中退したんです。定時制高校に再入学して卒業しましたが、親にこれ以上お金の迷惑をかけたくないし、ほかの人がやっていないことをやりたいというプライドもあって、農業を目指そうと、長野県のレタス農家や北海道の牧場などでバイトをしていました」 ―どうでしたか。 「農業で生計を立てるのは現実的に難しいことが分かり、二年ぐらい前から別の道を探そうかと考え始めました。ハローワークに三、四回行ったのですが、求人票はたくさんあっても、興味のある職種や業種は全くありませんでした。面接は二社受けたのですが、営業をやりたいという希望が通らなかったうえ、サラリーマンは自分がやりたいこととは何か違うと思い、就職活動はやめてしまいました。当時はスポーツ関連とか農業とか、好きなことにかかわる仕事でなければ嫌だと思い込んでいたんですよね」 ―そのころはどんな気持ちでしたか。 「当時、チラシ配りなどのバイトで稼いでいたのは月十万―十五万円。年を取ってからのことを考えると、別の仕事を探さなければいけないという焦りはあったのですが、どこへ行ったらいいか分からない。もどかしい思いでフリーターを続けていました。そんな時に『ヤングジョブスポットよこはま』(YJS)ができたことをテレビで知り、昨年九月、初めて訪問しました」 ―YJSの印象はどうでしたか。 「アテンダントと呼ばれるスタッフは自分と同世代の人が中心なので、何かほっとしました。自分がよく利用したのは、さまざまな職業人から仕事や生き方の話を聞くフォーラム事業です。フォーラムの講師やアテンダントと話すことで、仕事観をもっと広げなければいけないと思うようになりました。そんな時に『アテンダントにならないか』と誘われたので、自分の可能性を高めるため、やってみることにしました」 ―アテンダントとしてどんな活動をしたのですか。 「積極的にやろうとしたことは、フォーラムの企画です。もともと自分はあまりよくしゃべる方ではなかったのですが、講師と交渉する際、講師から『交渉がうまいね』『営業に向いているよ』などと言われると、自信がついてきて、就職に対する怖さが減ってきました。工場見学にも積極的に同行しました。工場の仕事はきつい、汚い、単調でつまらないというイメージがありましたが、実際に現場を見て、作業員や経営者の方と話をしてみると、『ものを作る人って格好いいな』と素直に思いました」 ―フリーターなどの若者には、どんな支援が必要だと思いますか。 「若者はいろんな世代の人と話をすることで、職業に対する意識も高まっていきます。しかし、フリーターや無職の若者は社会から孤立しがちです。彼らの居場所になるYJSのような場所がもっと必要だと思います。また、フォーラムの企画を通して学んだのは、新しいことを始めるのは怖いけれど、やってみなければ何も分からないということです。成功や失敗を体験することで、新しい道が開けると思います。そのためには失敗をフォローしてくれる環境が大事だと思います」 ―若者の居場所づくりのために大切なことは何ですか。 「若い人が入っていけるような、若者が若者を支援するシステムが必要だと思います。YJSのアテンダントはみな私服で、自分のようなフリーターやピアスを着けている若者もいました。フリーターや無職の若者は引け目を感じているので、スーツ姿の大人に対しては自分を出せない人が多いし、今の若者は親や教師以外の大人とまともに話したことがないので、大人が上から物を言ってもなかなか受け入れません。あくまで同じような目線で、一人ひとりの悩みを親身になって聞いてあげることが大切ではないかと思います」 |
| |||||||||||||
―著書では「フリーターは怠け者」という世論を批判していますね。それはなぜですか。 「百人以上のフリーターと話しましたが、彼らはぜいたくでもわがままでもなく、大いに悩んでいます。フリーター問題がクローズアップされた当初から、彼らに対するバッシングには違和感がありました。あえて昔と異なるとすれば、今の若者は戦後民主主義の中で自由に育ったので、就職して拘束されることに、われわれ世代より抵抗感が強い。しかも今はリストラや終身雇用の崩壊など、働くことに対する悪いイメージばかり流れています。それはわれわれ世代の責任であって、いくら若者を責めても解決策は出てこないことを、大人が分かっていないと感じたのです」 ―フリーター問題がなぜ重要なのでしょうか。 「このままでは若者が社会的弱者になるということです。年功序列から能力主義に移行し、企業は即戦力を求めるようになっています。昔のように若者を育てる余裕がなくなり、即戦力にならなければ単純労働で使い捨てるような働かせ方になっています。また、そもそも『何のために働くか』を含めた問題があります。昔は食べるために働くとか、お金を貯めて楽するために働くとかいうことが身近な目的でした。今は結婚し、子供を持ち、家を建てて―などという長期的なライフプランが立てにくくなっています。若者の夢を閉ざしたのではろくな社会になりません」 ―企業側からはコミュニケーション能力がない若者が増えているとの指摘もありますが。 「それは事実でしょう。東京都がフリーターと就職先を集めて合同面接会を開いても、若者はなかなか企業のブースに行って話を聞こうとしません。『この会社もいいけど、あの会社もいい』などと会場内で立ち止まっている。私が『とにかく話を聞いて、就職するかどうかは家に帰ってから考えればいい』と声をかけると、若者たちは『それでいいんですか。話を聞いたら就職しなければ悪いと思った』と言って、喜んで面接を受けに行きます。見方によっては優しいし、傷つきたくないという弱さもあります。しかし、それは若者だけの責任ではありません。働く側と働かせる側の架け橋をどう作っていくかは、若者と大人の両方の責任です」 ―それではどうしたら良いと思いますか。 「自分を振り返っても、大学卒業時に一生この仕事をすると決めていたわけではありません。若者の就職を一生の一大事を決めるように迫るのではなく、フリーター経験を社会が評価するように、働く側のシステムを変えなければならないと思います。フリーターでも仕事をすれば必ず何かを学ぶはずです。例えばバイトで店長を務めたということは、他の店員に技術が勝り、管理力があるということであり、大変評価されるべきです。それがその後の就職活動では評価されず、履歴書にも書けないというのはおかしい。また、企業側も今はもう正社員よりフリーターやパート、派遣社員を多く求めているのだから、そういう働き方を前提にして生きていけるスタイルに変えなければなりません。今のような悪い労働条件ではなく、正社員との格差縮小に本気で取り組むべきだと思いますね」 ―制度として改善すべきところはありますか。 「女性のパートとも共通する問題ですが、フリーターにも社会保険を払ってもらい、代わりに年金をきちんと支払うシステムを作るべきです。私の持論としては、国がフリーターの退職金制度を設けたら良いのではと思っています。一年勤めると一ポイントたまり、職場を移っても働いた年数分の退職金がもらえるという仕組みです。また、米英などでは会社名ではなくキャリアが重視され、特にセールスの技能は高く評価されます。アルバイトでも売る仕事の経験を積めばセールストークは身に付くはずですが、日本には共通の技能評価基準がありません。会社名で評価するのではなく、個人の技術・技能をきちんと評価するシステムをこれから作ることが大切だと思いますね」 |
ヤングジョブスポット 雇用・能力開発機構が運営する若者の就労支援施設。ハローワークのように職業紹介のための施設ではなく、将来の職業生活について考えたり、さまざまな職業に触れ合ったりする機会を提供している。昨年度、全国15カ所でオープンしたが、県内には設置されていない。
|
![]() |
|
■次回(6月6日=日曜日)は「フリーター400万人時代を考える」投稿特集
安田英文さんは当事者だったからこそ分かるフリーターの悩みや、若者による若者の支援という新しいモデルを示しました。長年労働行政に携わってきた金子雅臣さんは、国の社会保障制度そのものの見直しの必要性まで指摘していました。次回は投稿特集です。フリーターに未来はないのでしょうか、それともこのまま社会に定着していくのでしょうか。ふるってご意見をお寄せください。 |