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「男の育児休業を考える」   しずおかディベート大会「義務化の是非」から   (04/12/05)

 男女を問わず、取得権利がある育児休業ですが、出産した女性の七割以上が育児休業を取っているのに対し、配偶者が出産した男性の育児休業取得率は1%未満。男性の取得はなかなか進んでいません。男女が共に育児に参加してくために、何が必要なのでしょうか。第一回は、男性の育児休業義務化をテーマに二十七日、静岡市で開かれた「しずおかディベート大会」での議論の様子を取り上げます。大学・一般部門決勝は肯定側「しずおか知りたい研究会」、否定側に名古屋大「ヤクルトカルピス」、中高生部門決勝は肯定側に静大付属島田中「スパークラーズ」、否定側は東海大翔洋高「ビバ☆翔洋」が対戦しました。 「男の育児休業義務化」をテーマに、議論を戦わせた
「しずおかディベート大会」=静岡市東草深町の「アイセル21」


大 学 ・ 一 般 部 門 決 勝
【肯定側からの提案】
(1)妻の産後休業八週間の間に、夫に一週間の育児休業取得を義務づける
(2)夫に子供の小学二年生の終了時までに最低二百四十時間の育児休業取得を義務づける。最大九百六十時間まで取得可能とする
(3)対象は従業員三百人以上の企業か、役所に勤める男性とする
(3)取得は時間単位とする
(4)「新育児&介護保険」を創出し、休業中の給料を全額保障する。

肯定側 時短だけでは不十分 
 多くの男性が育児休業の取得を望み、多くの女性が男性にもっと育児にかかわってほしいと考えているにもかかわらず、男性の育児休業取得はなかなか進んでいない。休業中の所得保障が不十分で、取得方法も柔軟性が乏しいことなどが取得を困難にしている。取りたくても取れない現状を変えるには、男性の育児休業を義務化するしかない。より柔軟性の高い制度を作り、円滑に取得できるよう配慮することが重要だ。

 【論拠としたデータ】
 ◇就学前の子供のいる男性会社員の六割以上が育児休業の取得を希望している(日本労働研究機構・育児や介護と仕事の両立に関する調査)
 ◇在職中に出産した者、または配偶者が出産した者に占める育児休業取得者の男女別割合を見ると、女性73・1%に対し、男性はわずか0・44%である(平成十五年度女性雇用管理基本調査)

否定側 家計収入の激減招く 
 肯定側の提案は対象企業や対象者の数、財政的な見込みが示されておらず、実施できる保証がない。できないとすれば、育児休業の義務化により、収入は激減する。家計を支えられず、出産を控えてしまう結果にもなるのではないか。また、義務化は企業に混乱を招く。三十代前後の責任ある仕事を任された従業員が一定期間いなくなれば、企業の業績は確実に落ちる。さらに、従業員自身の能力低下にもつながる。

 【代案】一歳未満の養育すべき子供がいる労働者の労働時間を、所定時間より二時間減らすことを義務づける
 【論拠としたデータ】  ◇子育て期にある三十代の男性従業員の実労働時間が長く、男性の子育て参加を阻害する要因になっている(佐藤博樹共著「男性の育児休業」を参照)
 ◇三十代の平均世帯収入は四十万二千百二十七円で、育児休業取得中の収入保障は十万二千六百三十八円となり、平均消費支出の三分の一にしかならない(平成十五年度版国勢調査より試算)

主な議論
 否定側 「まとまった育児休業取得は職業能力の低下につながり、取得者本人にとってもマイナスになる」
 肯定側 「肯定側案では育児休業を一時間単位で取得できること、八歳まで薄く長く取得できることから、職業能力の低下はないと考える」
 否定側 「肯定側案は財政的な裏付けがない。否定側案の二時間短縮勤務の方が、男性が職務から離れず、収入も確保して子育てに参画できる」
 肯定側 「新しい保険制度を作ったとして、日本総合研究所の試算では、年間一人当たり一万六千円の負担になる。負担は十分可能だ。また、二時間勤務時間を短縮するとして、夫が育児に参加する保証はない。肯定側の提案は通院や学校の家庭訪問など、本当に必要な時に取得することが可能で、より実質的な育児参加ができるはずだ」
 否定側 「いつでも取りたい時に取れるというが、突然『今日休ませてください』と言われれば、企業は混乱する」
 肯定側 「単なる時間短縮勤務では、実質的な育児参加は無理。現行の育児休業制度も原則一回しか取得できないなど硬直化しているが、制度はもっと柔軟にすべきだ」
 否定側 「男性が子育てをしないのは、育児休業が取れないからではない。他にさまざまな選択があり、自分の子供を持つという選択をしにくくなっている現状もある。肯定側は育児サービスを利用しやすくする施策も提案しているが、保育を充実させても、女性に子供を産めというプレッシャーを与えることにしかならないのではないか」
 肯定側 「経験的に、母親が子育てを一手に担うのは本当に大変。上限まで取得したとして九百六十時間、一カ月あたり約十時間、夫が育児に協力してくれれば、どれだけ助かるか分からない」

 

中 高 生 部 門 決 勝
【肯定側からの提案】
(1)女性と法的に婚姻関係を結んでいる男性に対し、子供が生まれてから一歳になるまでに連続して一カ月以上の育児休業取得を義務づける。期間は事業所と相談の上、任意で選べる
(2)平成十八年四月から実施し、実施までの二年間、自治体の広報や報道機関を通じ、男性に育児休業の意義について啓発する
(3)休業中の給料は全額保障し、負担は雇用保険40%、地方自治体30%、事業所30%とする。

肯定側 母親のストレス深刻 
 父親が育児に参加しないことで母親の育児ストレスが大きくなり、子供の生命に危険を及ぼすほど虐待が深刻化している。父親の育児休業を義務化すれば、育児ストレスから女性を救い、育児の充実を図ることができる。子供が父親と母親の愛に包まれて育つこと、安心して子育てができる社会になることは、子供の未来に非常に重要だ。

 【論拠としたデータ】
 ◇平成十五年中に警察が摘発した児童虐待は百五十七件、被害児童は百六十六人で、四十二人が死亡している(平成十六年度版青少年白書)
 ◇虐待者の内訳は実父母が約83%で、そのうち実母が58・6%と圧倒的に多い(東京都福祉局児童虐待の実態調査、平成十三年十月発行)

否定側 企業の4割が独自策 
 男性の育児休業が義務化されれば、取得者の仕事は強制的に中断されることになる。特に従業員数の少ない中小企業では、一人でもいなくなれば業務に大きな支障が出る。また、取得者の収入が減り、家計に大きく影響するデメリットもある。男性が育児休業を取らない最も大きな理由に、収入が減少することがある。短時間勤務など、独自の育児支援策を取る企業は増えているので、育児休業を必ずしも義務化する必要はない。

 【論拠としたデータ】
 ◇日本の中小企業の総社員数の平均は五八・二人である(中小企業家同友会のホームページより)
 ◇日本企業の99・7%は中小企業である(中小企業庁のホームページより)
 ◇サラリーマン世帯の一カ月の平均収入は五十二万五千円。現行制度の育児休業中の給与保障は最も得られる時でも約二十一万円となり、平均消費支出額三十一万八千円に満たない(総務省統計局のホームページ、平成十五年の統計から算出)

主な議論
 肯定側「給与は全額保障を前提とし、収入は減少せず、家計への負担は発生しない」
 否定側「給与の全額保障は現実的でない。男性の育児休業取得率は現在0・5%程度だが、全員が取得するとすれば負担はばく大だ。雇用保険から給与の40%負担するとして、年間に生まれる子供の数から単純に計算すると、三千億円もの支出が発生することになる。支給水準はもっと低くせざるを得ない」
 肯定側「社会的な負担は大きいかもしれないが、社会が変わらなければ女性の負担は増えるばかり。社会的理解を進めた上で、負担増はやむをえない。女性や子供の幸せは、お金には換算できない」
 否定側「育児休業で従業員が不在になることにより、大きなプロジェクトなどが中断される可能性もある」
 肯定側「育児休業を取れる期間には幅があるので、大きな事業などは避ければいい」
 否定側「どんな時に育児休業を取ったとしても、仕事は中断される。業務にブレーキがかかることは確実だ」
 肯定側「企業が独自の育児支援策を進めているというが、どのくらいの企業が関連した制度を持っているか、どのくらいの人が制度を利用しているのかデータはあるか」
 否定側「利用者数は不明だが、短時間勤務や残業免除など、独自の支援策をとっている企業は全体の40%を超える。強制的に義務化しなくても、育児の不安を分かち合うことはできるはずだ」
 肯定側「残業などが免除されたとしても、家に帰れるのは夜。実質的な育児参加は難しく、女性や子供の存在への理解は進まない」

 

 




■次回(12月12日=日曜日)は「男の育児休業を考える」インタビュー特集
 審査の結果、大学・一般部門は、肯定側のデメリットを鋭く指摘した否定側の「ヤクルトカルピス」が、中学・高校部門は「子供の未来はお金に換えられない」と社会的負担が増えるとする批判をはねのけた肯定側の「スパークラーズ」が勝利を収めました。みなさんはどちらに軍配を上げますか。次回は「男の育児休業を考える」インタビューです。今年、実際に育児休業を取得した静岡市の男性職員と、子育て経験者の女性に、それぞれの立場から見た「男の育児休業」について意見を聞きます。


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