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どうなってるの?子供の学力」   インタビューなど  (05/01/09)




 新春第一回トークバトルのテーマは「どうなってるの?子供の学力」です。先日発表された経済協力開発機構(OECD)の「生徒の学習到達度調査」(PISA)や、国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)で、日本の順位が落ち込んでいるという結果が出ました。日本の子供たちの学力は本当に危機にあるのでしょうか。PISAで取り上げられた特徴的な問題例を紹介すると共に、日本の子供の学力低下を懸念し、親の階層による影響を指摘してきた苅谷剛彦東大大学院教授(教育社会学)の意見を聞きました。

 東大大学院(教育社会学)
苅谷 剛彦氏
かりや・たけひこ氏 昭和30年、東京都生まれ。東大大学院教育学研究科修士課程修了。ノースウエスタン大大学院博士課程修了。著書に「階層化日本と教育危機」(有信堂)、「教育の世紀」(弘文堂)などがある。
広がる成績の「格差」 教える力の衰退危ぐ

 ―先日発表されたOECD学習到達度調査と、国際数学・理科教育動向調査の結果をどう見ましたか。

 「気になるのはできる子とできない子の格差が広がっているということです。 PISAでは読解力、数学的応用力、科学的応用力の三科目とも、三年前より成績の差が開いています。 特に下位の生徒の得点が落ちることで、平均点が落ちているというところを押さえておく必要があります。 TIMSSでも小学四年生の理科や中学二年生の数学の平均点が前回より明らかに落ちているということが分かりました」

 ―できない子の得点がより落ちているということは何を意味しているのでしょうか。

 「PISAでもう一つ注目したのは、家庭環境が子供の数学的応用力に及ぼす影響が欧米並みに大きかったという結果です。 私たちがこれまでに行ってきた調査でも、塾に行っていない子供の得点が過去より落ちているということが分かっていましたが、 今回初めて大規模な国際調査で家庭環境の影響がはっきりしました。 八十年代ぐらいまで日本の子供の学力は平均も高く、格差も小さく、親の学歴や職業、経済力など『階層』による差も 小さいと言われていましたが、階層差が問題になっている英、米、ドイツ並みになっていると分かったのはショックでした」

 ―学力低下の原因は何だと考えていますか。

 「二〇〇〇年と二〇〇三年の高校一年生で何が一番違うかと言えば、学校五日制による授業時間の短縮です。 不況の影響で高学歴志向が弱まったという社会の意識の変化が子供たちの学習意欲を低くしたかもしれませんが、 三年や五年でこんなに大きく変わるとは考えにくい。 もう一つは私の研究でも明らかにしていますが、学習意欲が低下しているのは全員ではなく、家庭環境にも恵まれない、 勉強の不得意な子供たちです。授業が分かるか、分からないかは意欲の大前提でしょう。 体験重視の学習で、子供にとって楽しい授業は増えたけれど、何が身に付いているか分からない。 その分、他の教科の授業を減らしてしまえば、できない子供が置いてけぼりになる可能性が高いですよ」

 ―家庭環境が子供の学力に影響を及ぼすとなると、親は「やっぱり塾に通わせなければだめなのかしら」と不安になると思うのですが。

 「私が言いたいのは、公立学校の教える力が弱まっているということです。 それをどうやって変えていくかを考えなければなりません。家庭環境の影響というのは、 あくまで有利、不利といった傾向性ですから、それを問題と見なすかどうかで教育政策の中身は変わってきます。 なるべく不利にならないように手を差し伸べましょうという考え方を取るのか、子供の時からどんどん競争させて、 弱いものはどんどん落ちこぼれていくのがいいと考えるのかで、社会の見方が全然違ってきます」

 ―日本の子供の学力を向上させるために、具体的にどうしたらよいと考えていますか。

 「日本の子供の勉強時間はほとんど世界最低です。 それもそのはずで、『ゆとり教育』導入の時、マスコミや評論家が口をそろえて『学校での勉強は無意味だ』と言ってきたわけですから。 大人は学校で身に付けた力が現在の生活にどんなふうに役に立っているかということは言わずに、学ぶことの意欲だとか、 意味だとかを子供に求め出した。大人自身が分からないものを子供が見つけるのは難しいですよ。 小学校でも低学年では、無理やり勉強させなくても、勉強に興味を持つものです。 そういう時にしっかり基礎をつけてあげることが大事だと思いますね」

 OECD学習到達度調査(PISA)と国際数学・理科動向調査(TIMSS) PISAは義務教育修了段階の15歳の生徒が、実生活で直面する課題に知識や技能をどの程度活用できるかを評価するテスト。2003年、40カ国・地域で行われ、日本の高校1年生は実施4分野のうち読解力が前回(2000年)の8位から14位に、数学的応用力も1位から6位に下がった。TIMSSは国際教育到達度評価学会が実施している基本的知識や計算力などを問う調査。2003年の調査では、日本の中学2年の数学は前回(1999年)と同じ5位、理科は4位から6位に低下した。小学4年の算数は前回(95年)と同じ3位、理科は2位から3位に下がった。



■次回(1月16日=日曜日)は「どうなってるの?子供の学力」インタビュー

 OECD学習到達度調査の問題例はいかがでしたか。解答するのは大人でも意外に難しかったかもしれません。テストで本当に子供の学力を測ることができるのかどうかという議論はひとまず置くとして、「できる子とできない子の格差が広がっていることが問題」という苅谷教授の指摘には、将来の日本の在り方全般について考えさせられるものがありました。次回も引き続き、子供の学力をテーマに、県内の状況について識者に意見を聞きます。


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