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「どうなってるの?子供の学力」   インタビュー   (05/1/23)



 今回のテーマも「どうなってるの? 子供の学力」です。学力低下問題に絡んで、中山成彬文科相が先日、「総合的な学習の時間」(総合学習)を見直す意向を示しました。これはゆとり教育の大きな転換です。県教委の「確かな学力」育成会議のメンバーを務めた丹羽健夫河合文化教育研究所主任研究員に、学力に関する国際調査結果の感想や総合学習の見直しに対する意見などをインタビューしました。また、保護者の立場で小池千鶴静岡市立小中学校PTA連絡協議会理事に、子供の学力についての考えや学校への期待などについてうかがいました。


 河合文化教育研究所主任研究員
丹羽 健夫さん
河合文化教育研究所
主任研究員

 丹羽 健夫さん

にわ・たけお氏 昭和43年から河合塾勤務、理事、進学教育本部長、全国進学情報センター所長を務めた。平成14年から現職。著書に「予備校が教育を救う」(文春新書)など。
総合学習、教科の延長上に

 ―経済協力開発機構(OECD)などの国際調査で、日本の子供の学力が大きく低下しているという結果が出ました。どう分析しますか。

 「結果を詳しく見ると、大きく落ちている能力が三つあります。まず計算力。問題に即して地道に考えを組み立て、辛抱強く計算していく力が失われている。さらに、グラフなどから情報を読み取る統計処理能力、図形問題を解く発想力も低下してきてしまっているようです

 ―低下の原因をどう考えますか。

 「新教育課程の導入が招いた結果であることは間違いないでしょう。統計処理に関しては、そもそも中学で学ばなくなったので原因は明らか。残りは時間割のほぼ三割を割いている総合学習だと思います。学校週五日制の実施で、教科学習が時間的に圧迫されたことが大きい。教科の教え方が表面的になり、本質を掘り下げて教える時間がなくなっていると思います」

 ―現在の公教育だけでは、十分な学力を身に付けることはできないのでしょうか。

 「文科省の調査によれば、全国の中学生の実に75%、高校生の38%が何らかの形で塾に通っている。公教育だけで学力を担えないとは言い切れないが、そうした不安が社会にまん延していることは事実です。OECDの調査の結果で特筆すべきことはもう一つ、できる子とできない子の差が開き、二極分化が進んでいること。これは塾に通っているかいないかの違いと考えていい。そういう調査結果もあります」

 ―総合学習をどう評価しますか。

 「子供たちの知的バックグラウンドを広げるという姿勢は正しいし、可能性を含んでいることは認める。しかしそれは理想論であって、今のやり方では問題が多すぎる。総合学習を効果的に行うためには高度な企画力、教材の準備など膨大なエネルギーが必要になる。そんな若さと能力のある教師は一握り。結果、現状としては総合学習は何でもあり。中には面白い取り組みもあるが、通り一遍の社会見学など、あまり意味があると思えない授業も多い」

 ―総合学習はやめるべきでしょうか。

 「始めたばかりのことであるし、もう少しやって、結果をよく検証してみるべき。ころころ方針を変えるのは現場の混乱を招くだけです。ただ、これからの総合学習は、あくまで教科学習の延長としてとらえるべき。裾野を広げすぎず、教科で学んだことがどう現実とかかわるのかという観点から、取り組んでいくことが大事だと思います」

 ―静岡県の学力をどう見ていますか。

 「何を基準にするか難しいですが、静岡県は県民一人当たりの所得が全国十位程度で、大学入試センター試験の平均は十五位前後。しかし教科の内訳を見ると、理解したことを応用する力が求められる英語や数学はまあまあのライン。弱いのは、理科や社会など、暗記したことがそのまま問われることも多い科目です。学力の中身としては、決して悪いとは言えない。優秀な高校が各地に分散しているのも特徴的で、環境は恵まれていると思いますね」

 ―詰め込み、ドリル的な学習が再評価されることになるのでしょうか。

 「私学や公立の新しい中高一貫校などでは、進学を前面に打ち出し、訓練による正解発見学習に走る動きが一部で見られます。しかし、進学実績を上げるために、訓練的な学習を重視するのは見込み違い。現在では大学が求める学生像も変わってきている。独立行政法人化で大学は生き残りをかけ、研究実績を残そうと必死。新しい研究領域を切り開く能力を持った人材を真剣に求めている。当然、入試問題も急速に変わりつつある」

 ―これからの教育に求められることは。

 「少子化の時代、勝ち残ることができるのは、教科の本質、面白さを理解させ、学ぶ楽しさを教えることができる学校。これまで以上に全人的な教育が期待されています。そのために大事なことは、力のある教員をどう確保していくかということ。教職課程の必要性なども精査し、より多様で魅力ある人材を確保できるよう、教員養成の方法を考え直す必要があるでしょう」


 静岡市立小中学校
 PTA連絡協議会理事

小池 千鶴さん
静岡市立小中学校
PTA連絡協議会理事

 小池 千鶴さん

こいけ・ちづる氏 平成16年度、静岡市立小中学校PTA連絡協議会理事、母親委員長。静岡市教育基本構想検討委員会委員も務めた。
学校教育 保護者が関心を

 ―日本の子供の学力が低下しているという先日のOECD調査の結果などを見て、どう感じましたか。

 「これまでも学力が落ちているという報道はありましたが、今回はっきりした数値が出たことでやはりと思いました。ただ、それに過敏になってはいけないという思いもあります。これを良いきっかけとして、自分たちの子供が通っている学校で、どういう教育が行われているかを知ることが大切だと思います。例えば参観会には出席しても、保護者会に出る親が少ないというのはどの学校でも同じようです。ということは、学校の現状を知らない親が多いのではないかと思うんです。仕事の都合もあるでしょうが、もしかしたら学校に関心がないのではないかと思うこともあります」

 ―親が学校にあまり期待を持っていないということなのでしょうか。

 「学力に関して言えば、学校で基礎学力を身に付けてほしいという願いは、どの親も持っていると思いますね。ただ、基礎学力を付けるには、やはり毎日こつこつ勉強することが大切です。その忍耐力が子供だけでなく、親にも欠けていて、試験の点数を即上げられるものなら上げたいという思いから、習い事や塾に行かせたりしているのかなという気もします。学校はみんなが平等に学べる場ですよね。家庭の経済力で学力が二極化してしまうのは良くないと思います。『学校が駄目なら塾』ではなくて、なぜ学校で学力が身に付かないのか、そもそも学校で本当に学力を身に付けることができないのかどうかを含めて、まず学校と話し合うべきではないでしょうか」

 ―学校週五日制に関しては、どう受け止めていますか。

 「初めは共働き家庭などでは子供が家で一人になってしまい、本当に土曜日を有意義に過ごすことができるのかなという疑問を持ちましたが、それは学校だけの問題ではなく、家庭でも積極的に考えなければいけないことだと思うんです。今、各地のPTAで注目されている『おやじの会』のように、家庭や地域が連携して、子供にとって良い時間の過ごし方を考えなくてはいけないのかなと思います」

 ―総合学習については「体験ばかりで何が身に付いているのか分からない」という批判もありますが、どう思いますか。

 「総合学習自体について批判するつもりはありませんが、基礎学力があってこその総合学習であり、もし基礎学力が損なわれるようであってはいけないと思います。例えば総合学習で環境問題をテーマに地域について調べることによって、思ったより道路にごみが落ちていることが初めて分かったということもあるんですね。そういう身近な問題については子供たちの心に残りますし、何らかの力が身に付いているように思います。ただ、総合学習が科目とどのようにつながっているのかなというところはありますけれども」

 ―学力低下傾向を受けて、全国一斉学力テストの復活という話も持ち上がっていますが、どう感じますか。

 「中学生の子供を持つ親の間では、自分の子供の学力が見えてこないという悩みはよく聞きます。昔と違って、県内一斉学力テストの順位が本人にも知らされないからです。今は学力でも運動でもなるべく競争をしない傾向があり、進路指導でも本人の希望を重視するようなところがありますが、子供の希望が自分の学力に見合っているとは限りません。全国一斉学力テストを復活させるかどうかはともかく、子供が自分の学力を見極められるような指導はしていただきたいですね」

 ―これから学校にどんなことを期待しますか。

 「学校に不安や疑問を感じた時に、それを持っていく場所をつくっていただきたいですね。『開かれた学校』と言われていても、実際はなかなか聞きにくいんですよね。それから先生たちには、教育のプロとして自信を持っていただきたいですね。学校内で起きる事件や不祥事で、親たちが学校に不安や疑問を持っていることは確かだと思うんです。だからこそ先生たちには安心して子供を預けられるような学校をぜひつくっていただきたいと思いますね」




■ 次回(1月30日=日曜日)は「どうなってるの?子供の学力」投稿特集
  丹羽さんと小池さんのインタビューはいかがでしたか。丹羽さんは日本の子供の学力低下について「新教育課程の導入が招いた結果であることは間違いない」とし、「これからの総合学習は教科の延長としてとらえるべき」と提言しました。小池さんは「自分たちの子供が通っている学校で、どういう教育が行われているかを知ることが大切」と、保護者の関心の高まりに期待を寄せました。次回は投稿特集です。総合学習の見直しや削減は、果たして学力向上につながるのでしょうか。ご意見を積極的にお寄せください。


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