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携帯電話はベストフレンド?」   NTTドコモシンポジウムから  (05/03/13)


 携帯電話の普及がもたらす社会的、文化的影響を分析し、モバイル社会の問題と対策を探ったシンポジウム=東京都千代田区の有楽町朝日ホール
 わたしたちと携帯電話のかかわりを考えるトークバトルの第2回は、5日に東京で開かれた、NTTドコモ「モバイル社会研究所」主催のシンポジウム「モバイル社会の生活の質と安全」の一部を紹介します。安全、安心が社会の大きな関心事になる中、携帯電話にも、使用上の安全性確保に加え、生活の安心を支えるさまざまな役割が期待されています。同研究所が取り組む研究テーマの中から、災害時の携帯電話活用、携帯電話の不正利用防止、迷惑通信対策の3つを取り上げました。

 ―災害時の活用―
 東洋大学社会学部教授   
中村功氏
中村 功氏
メールの情報伝達有効

 国内で使われている携帯電話は今年1月現在、8577万台。約5000万台の固定電話をはるかに上回り、個人の情報通信メディアの主役として普及している。今や携帯電話には、従来の公衆電話や自宅の固定電話が担っていた以上に、社会の基幹インフラとしての期待が持たれている。

 安全が社会の大きなテーマになり、「いざという時のため」に携帯電話を持つ人も少なくない。普段から利用し、最も慣れ親しんでいる情報機器である携帯電話には、災害時にも優れた力を発揮できる可能性がある。

 災害時の情報ニーズには、(1)避難を助けるための情報提供(2)迅速な救助・救援のための情報伝達(3)安否情報の提供―の3つがある。こうした視点のもと、携帯電話活用の可能性に触れながら、本年度に発生した災害時における情報伝達の問題点に触れたい。

 昨年7月の新潟・福島水害の被災地で行った聞き取り調査では、ほとんどの自治体で、避難勧告発令の決定は遅くなかったものの、情報伝達の手段が欠如していたため住民に情報が行き渡らなかったことが分かった。

 電話は不通になり、広報車は危険で活動できず、コミュニティFMは聞いている人がいない状態。防災無線はなかったり、機能しなかったりした。伝達システムは、人が情報を引き出す「プル型」でなく、より積極的に情報を届ける「プッシュ型」であるべきだ。FMは利用しやすく、降雨中も聞きやすいが、ほとんど聞かれていなかった。

 「プッシュ型」情報としては、同報無線に加え、携帯メールを使って避難勧告を伝達する仕組みが有効だろう。台風で大きな被害が出た兵庫県豊岡市で行ったアンケートでは、「もし携帯メールでの情報配信サービスがあったら利用するか」との問いに、50%以上の人が利用したいと答えた。

 また、救助情報に関連しては、全国300の消防本部に聞いたところ、想像以上に携帯電話が利用されていることが分かった。消防本部と病院の間は固定電話連絡だが、救急隊と病院、救急隊と患者の間の連絡は携帯電話が使われ、消防本部と救急隊の間も、無線連絡に加え、かなりの割合で携帯電話が使われている。9割の消防本部が「携帯電話が不通になると困る」と回答した。

 安否情報については、近年災害用伝言版が普及し始め、新潟県中越地震では電話による伝言サービスは約35万件、iモードによる伝言サービスは約25万件の利用があった。しかし、実際に被災した地域の中では、ほとんど使われていない。

 使わなかった理由は、「知らなかったから」が最も多く、次いで「メールが使えたから」だった。今後さらに周知していく必要があるだろう。

 携帯メールについては、同じく中越地震の調査では、「すぐに使えた」18・2%、「なんとか使えた」57%で、「まったく駄目だった」は24・8%。発信規制が行われた通話に比べ、かなり使いやすかったといえるだろう。


 ―不正利用防止―
 東京大学先端科学技術研究センター教授   
玉井克哉氏
玉井克哉氏
リスク認識し自衛必要

 携帯電話はデジタルカメラ、GPS(衛星利用測位システム)、非接触ICカード機能など、さまざまな機能を備え、もはや単なる通話の道具ではない。新しい技術が次々に融合し、ますます便利になる一方、意図しない利用方法によってさまざまな問題が生じてきている。

 高機能化が進む中、利用者が意識したことのない部分で、安全性が確保されていない領域もある。企業は安全性を高める努力をするとともに、利便性を強調するだけでなく、利用者にリスクを知らせていく義務があるだろう。

 携帯電話を使っている人のうち、暗証番号を設定している人は7割いる。しかし、うち2割は買ったときのままで、新たに設定し直していない。また、設定している人のうち半数は、暗証番号をほとんど変更していない。

 自分や家族など、何らかの誕生日を暗証番号に設定している人も7割近くいる。暗証番号を誕生日にした場合、本来1万通りある番号が、366通りに限られてしまう。また、キャッシュカードなどと暗証番号を同じにしている人も相当数いるが、犯罪者にとってこれほどいいことはない。避けるべきだ。

 市販ソフトによる暗証番号の解読も相当容易にできる。実験したところ、時間がかかっても20秒程度で、簡単に解読することができた。例えば、レストランなどでテーブルに携帯を置いてトイレに立てば、暗証番号を盗まれてしまうこともあり得る。

 最近では、指紋認証機能の付いた携帯電話も出てきているが、これも決して万全ではない。指紋認証システムは、例えば携帯電話に付いた指紋を採取して、ゼラチンで人工の指を作ることで簡単に破ることが可能だ。非接触ICカードを搭載した携帯電話も今後普及が見込まれるが、非接触ICカードには、市販のカードリーダーで容易に読める部分があり、注意が必要だ。

 上着の外側のポケットにカードや携帯を入れていれば外から接触してデータを読み取れる。何曜日にどこからどこまで電車に乗るというように利用履歴から行動を知られてしまうようなことはあり得る。

 読み取ったデータを自動的に記録するソフトを作り、小型の読み取り機を手袋に入れるなどすれば、気付かれずにデータを盗むことが可能だろう。人のカードを読んだだけで犯罪とみなすことは難しく、取り締まりも困難かもしれない。企業が外から読み取りにくいよう製品を改良していくことに加え、読み取り面を外側にしてポケットに入れたりしないよう、利用者へのPRが必要だ。

 もちろん一定の行為を犯罪化し、取り締まっていくことは必要だが、法的制度には少なくとも2、3年はかかる。その間は、事業者、利用者のレベルで対応していかなくてはならない。

 便利さと危険は常に隣り合わせであることを忘れず、リスクを理解しながら使うことが重要だ。


 ―迷惑通信対策―
 弁護士   
横山経通氏
横山経通氏
現行法では排除に限界

 本人の承諾を得ず、広告宣伝のために送られる迷惑メールや架空請求、ヤミ金の督促、ウイルスメールなど、携帯電話やパソコンを取り巻く迷惑通信がはんらんしている。平成13年、NTTドコモが扱った携帯あてのメールは、9・5億通。しかし、このうち実に8億通はあて先不明で、無差別に送った迷惑メールの可能性が高い。

 迷惑通信は基本的に、迷惑な発信をする人に責任がある。しかし、発信する側は身元が特定されないよう、たくみに迷惑通信を行うため、発信者へのクレームが不可能だったり、次々と違う業者から来たりすることから、被害者側で迷惑通信を行った人の責任を追及することが困難だという現実がある。

 そこで、事業者に何らかの対策を求める声が上がる。しかし通信事業者には、「通信の秘密」と「役務提供義務」を守ることが法により義務づけられている。つまり、メールの内容を見て迷惑メールと判断したり、迷惑メールだからといって届けないということは、原則的にできない。通信の自由を保証しているこの規定のはざまで、事業者は対応に苦慮してきた。

 迷惑通信の対策、規制の歴史を追ってみると、日本では昭和50年ごろから、迷惑電話が社会問題化した。平成6年には特定番号からの着信を拒否するサービスが始まっている。10年には発信番号通知サービスも始まった。

 その後は、パソコン通信における迷惑メールが急増。11年には浦和地裁で、大手プロバイダーのニフティの会員にわいせつDVD販売目的のメールを大量送信していた業者に対し、送信を禁止する仮処分命令が下された。13年には同様に携帯電話へ迷惑メール送信していた業者に対し、横浜地裁が送信禁止の仮処分を決定している。

 この決定を契機に、こうした業者を取り締まるための立法への機運が高まった。14年には特定電子メールの適正化に関する法律が制定され、未承諾の広告メールを送信する場合は、表題に未承諾広告の断りを付けることが義務付けられるようになった。

 ところが、併せて事業者が未承諾広告メールを受信拒否するサービスを始めると、表示のない違法メールが急増した。同法に違反した場合の処罰は、まず総務大臣が措置命令を出し、それでも従わなければ刑事罰を科すことになっている。しかし実際には、捜査権限を持たない行政機関が調査をするのは難しく、なかなか業者を特定できず、有効な対策ができないのが現状。直ちに刑事罰を科せるような法改正も考えていくべきだろう。

 また、14年には有線電気通信法が改正になり、いわゆる“ワンギリ”には直ちに刑事罰が科されることになり、こちらは沈静化している。



■次回(3月20日=日曜日)は「携帯電話はベストフレンド?」インタビュー

  シンポジウムはいかがでしたか。携帯電話がはらむさまざまな問題や可能性について話を聞くことができました。次回は引き続き、「携帯電話はベストフレンド?」がテーマです。携帯電話という新しいメディアについて考える時、どうしても気になるのが子供とのかかわりです。携帯電話によって子供たちの生活はどう変わったか、これからの時代、携帯とどう付き合っていったらよいか―などについて、教育の専門家と子供を持つ保護者に意見をうかがいます。


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