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携帯電話はベストフレンド?」   インタビュー(2)  (05/03/20)

 今回も引き続き、「携帯電話はベストフレンド?」がテーマです。中学生・高校生へのインタビューを通じて、携帯電話などの電子メディアと生徒指導の在り方を研究している酒井朗お茶の水女子大子ども発達教育研究センター教授兼センター長に、主に高校生の携帯電話使用の実態について聞きました。また、浜松市内で13日に携帯電話の危険性についての勉強会を開いた「親たちのエンパワーメントフォーラム2004実行委員会」の長沢弘子委員長に、勉強会の狙いなどをインタビューしました。

 お茶の水女子大 子ども発達教育研究センター長   
酒井 朗さん
さかい・あきら氏 専門は教育臨床論、教育社会学。著書に「電子メディアのある『日常』―ケータイ・ネット・ゲームと生徒指導」(学事出版)などがある。   
通信代のため“バイト生活”

 ―授業中に携帯電話でメールやゲームをする生徒が一時期問題になりました。携帯電話に対する高校の指導は現在どうなっているのでしょうか。 

 「多くの高校では携帯を持ち込み禁止や使用禁止にし、違反者に対しては携帯を預かり、一定期間後に返却するという指導をしています。進学や正規の就職をする気がなく、高卒資格を得るためだけに高校に通っている生徒にとっては、授業は退屈なもの。そういう生徒にとって、携帯が手近な遊び道具になっているのは確かです。だからといって携帯を取り上げても、そういう生徒は漫画を読んだり、居眠りしたりするだけでしょう」

 ―高校生の携帯利用には、どんな問題があると考えていますか。

  「携帯代の負担者を調べたところ、進学校では親が払うことが多く、非進学校では自分でアルバイトをして払っていることが多いことが分かりました。携帯は毎月平均1万円程度かかる高額な消費財です。携帯を使うためにバイトをし、携帯代を払うためにバイトするという連鎖構造がしっかりできてしまい、余計勉強どころではなくなってしまいます

 ―生徒指導で、これまでとの決定的な違いはありますか。

 「若者に携帯が普及してCDの売り上げが落ちたそうですが、CDならお金がなければ買わないということも比較的容易にできます。しかし、携帯は持たないと仲間の輪に入れないので、いったん持ったらなかなかやめられません。高額な消費財に振り回され、生活の基軸が高校からバイトに移ってしまう。そういう生徒のことを、仲間の研究者は『パートタイム高校生』と呼んでいます」

 ―携帯を生徒指導に活用することはできませんか。

 「メールで生徒の相談に乗っている教師も実際にいます。岐阜県可児市では不登校児にメールでコミュニケーションを取っているそうです。対面コミュニケーションがうまく取れない子供たちには有効活用できると思います。ただ、メールだと真意が伝わりにくいという問題もあります。教師が生徒を励ますつもりで送ったメールが、個人的な好意を表すメールだと受け止められてしまったり、セクハラになってしまったりすることもあり、注意が必要です」

 ―大学教育では携帯電話は活用されていますか。

 「多くの大学では休講情報などを携帯で見られるシステムを大学本体が持っていますし、教員も授業の感想や質問を携帯のメールで提出させたり、ゼミの連絡事をメーリングリストで流したりすることはよくあります。大学では教員と学生が顔を合わせる機会が少ないので、携帯は欠かせないツールになっています。教員と学生が1対1でつながることができる効果は大きいですね」

 ―高校生は出会い系サイトなどの危険性についてどう認識しているのでしょうか。

 「私たちのインタビューでは、3分の1の高校生にいわゆる『メル友』経験がありましたが、『メル友』の人数はごく少数の例外を除いてせいぜい数人で、メールの相手はあくまで身近な友人が中心でした。出会い系サイトについては危ない目に遭った経験を直接友人から聞いている生徒もいるため、自分は近寄らないというのが大方の態度でした。高校生もある程度、大人と同様に危険性を認識しているととらえられます。むしろ友達の友達、中学の友達の友達などという形でつながっていくことが多い。それをどう評価するのかという問題はあると思いますが」

 ―携帯に対する今後の指導の在り方をどう考えますか。

 「新しいメディアが登場すると必ず警戒の声が上がりますが、流れを食い止めることはできないでしょう。携帯があることを前提に、どう利用するかということを、料金の支払い方を含めて詰めて考えなければなりません。『使ってはだめ』と言うだけでは効果がありません。また、距離が近づきすぎて攻撃的なメールが交わされるなど、心理的な問題もあります。今後は見知らぬ他者との出会いの危険性だけでなく、携帯を介した友達関係の難しさについても指導していく必要があると感じています」


親たちのエンパワーメント フォーラム2004実行委員長     
長沢 弘子さん
ながさわ・ひろこさん 浜松市市民協働推進委員、NPO法人アクション・シニア・タンク会員、みんなで着物を着ましょうの会「和(やわらぎ)」事務局などを務める。
使用法や危険 子供と話して

 ―勉強会の参加者の反応はどうでしたか。

 「冒頭で浜松市内で実際に起きた携帯電話絡みの危険な出来事の再現劇を行ったのですが、子供の携帯使用の実態を知って、ショックを受けた人が多かったようです。子供たちにとって携帯はもはや電話ではないということが常識なのに、大人は電話だと思っているのが問題の根底にあると思います。その意識の乖離(かいり)を埋めなければ、なかなか危険性を実感することは難しい。まず実態を知ってもらうという意味では、勉強会を開いて良かったと思っています」

 ―浜松市内では実際にどんな出来事が起きているのですか。

 「1月には埼玉県の女子中学生が出会い系サイトで知り合った男に誘拐されて浜松市で見つかったという事件があったばかりです。女子中学生が出会い系サイトで知り合った男に会いに行き、男の車に連れ込まれそうになったという事例もありました。携帯に絡む危険は遠くの話ではありません。一刻も早い対応が必要です」

 ―子供に携帯を持たせなければ安心していられるのでしょうか。

 「携帯を持っていなかった子供が携帯を持っていた友達に誘われ、危険な目に遭いそうになった事例もあります。中学生が友達のつてでプリペイド携帯機を手に入れ、コンビニでプリペイドカードを買い、親に内証で携帯を使っていたという事例もありました。『うちの子には携帯を持たせていないから大丈夫』というわけにはいきません」

 ―出会い系サイト以外にどんな危険がありますか。

 「チェーンメールも危険です。利用料金を不正に請求されたり、グロテスクな写真が送られてきたりするという話はよく聞きます。中学入学前に同級生を通じて顔写真付きのチェーンメールが中学の上級生に出回ってしまい、非常に困っているという小学生の話も聞きました。これは新手のいじめとも言えるのではないでしょうか」

 ―子供たちは携帯の危険性をどの程度認識しているのでしょうか。

 「先ほど挙げた事例では、女子中学生たちは車内からシンナーのようなにおいがしたため、危険を感じて逃げ出したのですが、その後で別の友達に『一人で行かなくて正解だった』と悪びれる風もなくメールで報告していたそうです。果たして本当に怖さを分かっているのかと首をかしげたくなります。でも、善悪の判断が付かないのが子供ですから、親が守らなければなりません」

 ―親はどうしたら良いと思いますか。

 「親は『みんなが持っている』『便利で安心』というキーワードに弱いので、子供に携帯をねだられるとつい買い与えてしまいますが、何のために使うのか、どうやって使うのかということをぜひ家庭で話し合ってもらいたいですね。携帯電話の危険性は他人事ではないという意識を持って、家庭で話し合いをしてもらえば、少しはブレーキが働くのではないでしょうか」

 ―携帯には便利な面もあるので、上手な使い方を身に付けさせたいですよね。

 「携帯は確かに非常に優秀なツールです。インターネットに接続して電車の接続状況を調べることもできるので、私も先日電車を乗り間違えた時にはとても助かりました。フリースクールの関係者は『携帯は命綱だ』と言っています。子供からいつSOSが入るか分からないので、24時間つながるようにしているそうです。地震の時も子供に持たせておけば、携帯があって良かったと思うでしょう。携帯の問題を考えると、矛盾している面が多く、判断基準が非常に難しいのが悩ましい点です」

 ―確かにそうですね。今後、どのような活動展開を考えていますか。

 「今回の勉強会はドコモ・システムズや浜松市教委も問題を認識し合って、共催することができました。携帯を利用して子供を危険な場所に誘うのは大人ですから、健全育成や生涯学習と絡めて、地域ぐるみで活動する必要があるでしょう。親、PTA、市教委が連携を取りながら、それぞれできることをやっていきたいと考えています」


■SBSテレビ・ラジオでも「携帯電話」テーマに企画

  SBSは、静岡新聞と連動して携帯電話に関する企画を展開します。  SBSラジオは3月28日―4月1日、「とれたてラジオ」(午前6時半―9時)の7時台、ゲストコーナーに識者を招き、携帯電話の最新事情や周辺環境などを紹介します。 SBSテレビ夕刊(午後5時45分から)は4月、毎週月曜日に「携帯電話の功罪」を取り上げます。番組ではみなさんのご意見を募集します。あて先はファクス[054(284)9006]または電子メールtvukan@digisbs.com



■次回(3月27日=日曜日)は「携帯電話はベストフレンド?」投稿特集

 酒井教授と長沢さんのインタビューはいかがでしたか。酒井教授は高校生が携帯代を払うためにバイトをするという連鎖構造ができ、「パートタイム高校生」化しているという問題を指摘しました。長沢さんは携帯電話が絡む身近な危険事例について詳しく紹介してくれました。次回は投稿特集です。携帯へのイメージはプラスですか、マイナスですか。携帯の使用について家庭で決めているルールはありますか。奮って投稿をお願いします。


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