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大型店の郊外出店規制を考える  インタビュー(1)  (06/05/14)

 郊外に進出するスーパーなどの立地を規制し、中心市街地を活性化させる「まちづくり三法」の改正が進んでいます。今国会では三法のうち、延べ床面積が1万平方メートルを超える大型店の郊外立地を原則禁止する都市計画法と、商店街などの活性化計画の中から、効果が認められる地区を選び、重点的に支援する中心市街地活性化法の改正案が審議中です。残る大規模小売店立地法(大店立地法)も政府や市民の間で改正に向け、議論が活発化してきました。県内でも静岡、浜松両市の郊外で大型ショッピングセンターの出店が相次ぐ一方、中心街では西武静岡店(静岡市)の撤退や、閉店から約4年半が経過した松菱(浜松市)跡に大手百貨店が浮上するなど注目を集めています。今回は全国のスーパーなどで組織する日本チェーンストア協会の今野一正理事と、都市計画が専門で浜松市都心再生戦略会議メンバーを務める静岡文化芸術大の根本敏行教授に、それぞれの改正が与える影響や今後の展望などについてうかがいました。

日本チェーンストア協会理事
今野 一正さん
こんの・かずまさ氏 昭和23年、東京都生まれ。46年、通商産業省(現経済産業省)に入省。資源エネルギー庁、貿易局などで執務。平成14年、中小企業庁事業環境部企画課企画官を最後に退官。同年から現職。   
人間の命 何よりも大事

 ―まちづくり三法の改正について、どのような考えを持っていますか。

 「基本的に規制強化には反対です。企業は自由に創意工夫を凝らし、競争するべきですから。ですが、根底にあるのは消費者のためという気持ちです。地域住民が何を望んでいるか、見極めながらやっていくことが大事です。しかし、三法改正議論の取っ掛かりが大型店と地元中小店との対峙(たいじ)としてとらえられ、とにかく大型店はけしからんと言われてきました。店舗の規模の問題ではありません。企業である限り、消費者がどう考えて買い物するか、商業者に対しどんなことを期待しているか、という観点で商売をしないといけない。消費者の視点が欠けては、国や地方自治体からいくら補助を受けても商売は成り立ちません

 ―郊外型大型店の進出と、中心街の衰退の関係はどうみますか。

 「大型店の郊外進出が、中心市街地の衰退に全く影響を与えなかった、とは言い切れません。一般的に街全体が過当競争にあるとも言われていますが、商業者としてはまだ開発の余地はあると思っていますし、これまでも住民生活に寄与してきたと認識しています。また、郊外進出は何も商業者の意図だけで進んできたのではないと思います。街の在り方は戦後から60年たつ間に変わってきました。昔は鉄道を起点に街が広がり、繁栄してきましたが、車が普及し、住宅開発も郊外で活発になりました。これに伴い、道路整備をしたり、学校や病院などの公共公益施設も郊外にできました。そうすると、レジャー施設、商業施設も必要になってくる―そうした流れがあります」

 ―出店規制はまちづくりにどんな影響を与えますか。

 「あまり規制を受けない場所、例えばバイパスなどの道路沿いに出店が進むことが考えられます。中心部でも新たな競争が起こり得ると予想されます。一方、街全体では過度の出店で単位面積当たりの売り上げが落ちているという話を聞きます。出店規制で過当競争の抑制にもなるという意見がありますが、商業者は基本的に店を繁栄させたい気持ちを持っています。事前に商圏を調査し採算が合うのか、住民が何を望んでいるのかなどを総合的に判断します。その結果、立地する価値があれば出店するでしょう。そうした意味で競争は常にある、という見方ができます」

 ―本当に郊外店と中心市街地は共存できないのでしょうか。

  「中心地で長年、商売をされてきた方には、消費者の好みや考え方の変化を十分把握してくれるよう望みます。そうしたことは大型店の運営者は得意なんですね。例えば、大型店の運営に携わり、退職を迎えた人をTMO(まちづくり機関)などで活用してもらう。大型店で培ったノウハウを中心部の商店、商店街の運営に役立ててもらうことも、共存の1つの方策ではないでしょうか。それぞれの持つ機能や得意分野を持ち合い、協力してまちづくりに寄与していけたら、と提案しています」

 ―三法改正を受け、今後はどのような対応が必要でしょうか。

 「多様な施設を中心地に集中させると言いますが、中心部が既に機能していない街はどうするのか。都市化している郊外を今後どうするのか考えないと、かえって中心地に施設を集中させることは投資過大になり、自治体の財政ひっ迫につながらないでしょうか。街によって抱える事情は違います。そこに一律に規制を敷いてもすべてうまくいくとは限りません。そうした事情を踏まえ、自治体がどう三法を運用するかが鍵を握ると思います。県や市町村は都市計画マスタープランをしっかり作り、住民や事業者に示すことが必要になります。地元や中小企業を守る気持ちは分かりますが、初めから大型店だけ排除する、という対応では街は活性化しないのではないでしょうか。多種多様な施設をどう組み合わせるか、行政は広い視野を持って計画を策定してほしいですね」


静岡文化芸術大教授
根本 敏行さん
ねもと・としゆき氏 昭和32年生まれ。東京大大学院修了。専門は都市計画、地域計画。三菱総合研究所、兵庫大経済情報学部教授を経て現職。浜松市都心再生戦略会議、浜松市都心政策研究会メンバーも務める。
自治体の「やる気」が重要

 ―今回のまちづくり三法の改正はどのような内容でしょうか。

 「今までの大店立地法は、中心市街地への大規模店出店には、駐車場の設置義務などが足かせになっている部分もありました。今度の改正でこの点が見直され、個別の建物ではなく地域としての再開発が可能となるほか、治安や景観上問題となっている閉店後の建物を企業が撤去するよう市町村が指導できるように見直される方向です。改正都市計画法は大型店の出店規制以外にも、各市町村に都市計画によって、土地の用途地域をきめ細かく作れる仕組みも与えています。中心市街地活性化法の改正は、事業計画を立てた中心市街地に優先順位を付け、補助金などを付ける仕組みが現在よりさらに厳格化されます」

 ―三法の改正で具体的にはどのような影響がありますか。

 「大きな変化の1つとして、改正都市計画法は県が旗振り役となって複数の市町村で商業施設の広域調整を求めていることです。例えば、ある町に大規模店が建つと、『わが町も』と隣の町がさらに大きな店を作る―といった大型店の誘致合戦で地域の商業が疲弊することを防ぐためです。これが進めば、“自分の町さえ良ければ”という地域のエゴは通らなくなるでしょう。一方、中心市街地活性化法の改正で、各中心街が提出した活性化計画のうち効果が見込まれる地区が重点的に補助金などで支援されます。2つの法律に共通することは、やる気のある町は優遇されるが、ない町は今のまま、ということです。このままではさらに地方の中で格差が広がる可能性もあり、市町村や街の商店街は、戦略的な計画が一層必要になります

 ―改正を踏まえて、中心市街地にはどのような対応や変化が求められているのでしょうか。

 「今までの中心市街地の再開発は、郊外型の店舗と同じ土俵に乗ってしまった施設ばかりでした。それを防ぐためには『都市』の再定義をしなければならないと思います。私は郊外型店舗は『大量生産、大量消費』型で売られるものは評価の定まった“コピー”を売る場所。一方、都市はそのオリジナルを作る“創造”の場所と考えています。私はこれらの問いを解くキーワードになるのは『都市居住』だと思っています。人のにぎわいは物販だけではありません。若者の文化も含めた『都市の猥雑(わいざつ)性』が新たなものを生み出す原動力になっているのではないでしょうか。浜松でも中心街に多数のマンションが立ち並び、人が住むようになりました。この人たちを取り込む街にできるかどうかが大きなポイントと考えています」

 ―これに対して大規模店はどういった手を打ってくると考えられるでしょうか。

 「三法が改正されるとスクラップアンドビルドが簡単にはできなくなるので、徐々に量から質への転換を迫られてくると思います。浜松駅前にできた高級ブランドの『コーチ』が好調なことからも、消費者は郊外と中心街を自然に使い分けている。“文化の発信”という中心街が本来持つ機能を郊外店は少しでも得ようとしてくるのではないでしょうか。これは都市にとっては脅威ですね」

 ―中心街の活性化にはどのようなモデルが理想と考えますか。

 「商店街を中心とした第三セクターや商工会、商工会議所などを想定したTMO(まちづくり機関)型の活性化は、最終決定権も市民にあります。市民の側にノウハウのない日本ではこういった英米流のやり方はなじまないのではないでしょうか。私が理想と考えるのはドイツなどのように、プロセスに市民が参加しながらも、行政が積極的にかかわる形です。ドイツのミュンヘン市では、土地の3分の1を市が管理して街にふさわしくないテナントは入居を認めず、逆に必要な業種の店舗は賃料を下げてでも入居をさせます。このような形でならば三法改正の最大の目的である『魅力あるまちづくり』も達成できると思います」



■次回(5月21日=日曜日)も「大型店の郊外出店規制を考える」インタビュー
 郊外への大型店出店規制について、学識者、商業者の立場から語ってもらいました。立場は違いますが、改正された法を県や市町村がいかに運用するかがまちづくりの鍵になるようですね。次回は実際に郊外に大型店が出店している浜松市の中心部と郊外で、それぞれ店舗を営む経営者に大型店から受けた影響や、まちづくりへの思いなどをうかがいます。 


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