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観光と地域活性化を考える  インタビュー(2)  (08/04/27)

 「観光立県」を掲げている静岡県も、激しさを増す地域間競争にさらされています。首都・東京も今や人気の観光地。アジアの行楽地も強力なライバルです。厳しい環境の中、来年3月に迫った富士山静岡空港の開港は大きなビジネスチャンス。県内では新たな観光戦略を模索する動きも官民問わず活発になっています。今回はこだわりと地域への愛着を持って誘客を図っている県内のグループのリーダー2人にそれぞれの取り組みと観光にかける思いを聞きました。

浜松おかみさん会会長
牧田 徳子氏
 まきた・のりこ氏 浜松市生まれ、浜松おかみさん会会長。地域への奉仕として竹林を整備する浜名湖竹取物語の会長も務める。舘山寺レイクホテル花乃井女将。
風情生かし産業と連携

 ―舘山寺温泉も観光客が減少し、旅館の現状は厳しいようですが。

 「舘山寺だけでなく、日本旅館はどこも荒波にもまれています。旅館は宿屋家業。企業として成長していないのが現状ですが、多くの旅館は簡単に割り切れることができませんでした。旅館は人の生きざまやうれしさ、悲しさを見てきたからです。旅館は日本に根付いた文化ですが、基本的には家族経営です。だから家業という形態からドライに抜けきることができなかったわけです。それが苦境に陥っている一因だと思います」

 ―日本旅館の魅力は何ですか。

 「外資系ホテルは決められたシステムで動きますが、日本旅館は一宿一宿が違う雰囲気を持っています。家には住んでいる人が醸し出す雰囲気というものがあります。それを大きく膨らませたのが旅館なんです」

 ―日本の観光地は“独立独歩”に見えますが。

 「舘山寺のような観光地には日本らしい風景や風情を想像していらっしゃる人が多い。素朴さが残り、のんびりした家庭の生活を垣間見ることができるのが旅の良さでしょう。それがなくなってきてしまっているんですね。街づくりに統一性がない。ヨーロッパは屋根の色をオレンジ色に統一するとか、壁の色も同じにするんですね。日本は無制限、中途半端なんです。こうしたことは住んでいる人たちに自覚がないと駄目です。観光は文化度のバロメーターだと思います。残せるものはいかに残すか。建物の内部はどんなに近代的、快適空間であっても外側は周囲と調和を図り、昔の良さを生かす。家並みや壁の高さ、色などを好き放題でやっていては決してきれいには見えません」

 ―再生するにはどうすればいいですか。

 「土地に目いっぱい建物を建て土地を食いつぶし、風情までもなくなってしまったと思うんです。浜松は花の一大産地なのにそうした人たちと観光が連携していない。土地が豊かなために、ほかの地域では珍しくて貴重なものなのに『こんなもの普通よ』になってしまう。豊かでいい場所だということを住民があらためて認識することが大切です」

 ―そのためには行動することが大事ですね。

 「来年、長さ120メートル、10メートル幅でフジの花をフラワーパークに植えることを計画しています。フラワーパークでは平成13年から夜桜を始めました。ソメイヨシノや八重桜がライトアップされてとてもきれいなんですよ。花には感動させる力があります。旅館をつくれば誰でも来る時代はとっくに終わっています。再生させるには、小さなことでもいいからまず行動することです」

 ―舘山寺の魅力をPRすることも足りないと感じますが。

 「舘山寺温泉は入り込み客は減っていますが、全国に比べればその比率は少ないです。でも社会情勢は劇的に変化しているのに旅館は変化し切れていないのが現状です。変化することの怖さもありますが、従来と同じことをずっとやってきたことは大きな反省点です。行政も観光PRに積極的とは思えません。JR浜松駅に降り立っても観光の街といったわくわくした雰囲気が感じられない。観光客を受け入れるといった姿勢が弱いのではと感じています」

 「日本の魅力って何でしょう。シティーホテルは大きな会議やイベント、商談。旅館はくつろぎを提供し、日本の文化も紹介しています。人の魅力、モノの魅力、土地の魅力が1つになることがパワーになり、活性化につながると思います。母は51歳で亡くなりましたが、土地をきれいに使うことはとても大切と口癖のように言っていました。今、生きている人たちは地球の管理人です。次の人たちにきれいに管理したものを引き渡す。土地も人と同じ。生きているんです。上手に利用してほしいと願っているんです」



 「しずおか体験教育旅行」事務局長
宮城 島史人氏
 みやぎしま・ふみと氏 54年旧清水市生まれ。本職は東海大学社会教育センターの営業チーフリーダー。地域の文化や芸能を啓蒙するNPO法人三保の松原・羽衣村の理事長も務める。

過疎地への誘客も視野


 ―まずは「しずおか体験教育旅行」はどんな活動をしている組織か教えてください。

 「平成7年、静岡、清水両市の旅館や海洋科学博物館、登呂博物館などを会員に『静清地区教育旅行を考える会』の名称で発足しました。バブルがはじけて観光客が大幅に減った時期で、景気に左右されない観光は何かないかと検討し、主に小中学生に的を絞った教育旅行の誘致を考えました。さらにこの地区にできるだけ長時間滞在してもらえるよう見学型ではなく、体験型のプログラムを提供していくことを決めました。今は県中部地区全体をエリアに体験型の教育旅行を誘致しています」

 ―合併前から静岡市、清水市が連携していたわけですね。

 「県外から訪れる人からすれば静岡市も清水市も同じ1つのエリアですが、たとえば当時、学校の先生が静岡市の担当者に旅行のことを問い合わせても教えてもらえるのは静岡市のことだけで清水市の情報は手に入りません。そこで行政では難しい市の境を超えたPRを展開するパンフレットを作って誘致を始めました。旅館やホテルの紹介も行政だと特定の施設だけを宣伝するわけにいきませんが、われわれは会員のホテルだけを堂々と売り込めます」

 ―反応はいかがですか。

 「最初のターゲットは横浜市内の350の小学校でした。その多くが修学旅行で日光を訪れていたので、東照宮の本家は静岡の久能山にありますよ―とダイレクトメールを各校に送りました。その結果、今では10校のうち1校が静岡に来てくれます。海あり山あり、歴史や文化にも恵まれた静岡は教育のメニューには事欠きません。その素晴らしさに気付いてくれたのか修学旅行の6年生だけでなく、体験学習の5年生も数多く横浜から足を運んでくれるようになりました」

 ―海外からの誘客も図っているのですか。

 「3年前、東海大と交流のあった上海の学校の中高生を招いたのが初めてです。上海は静岡よりも都会で、生徒は田舎体験を望んでいたので、有度山では伐採した竹でご飯をたいたり、器や箸(はし)も竹で作ったりしました。三保で地引き網も体験しました。上海の子どもたちはディズニーランドにも行きましたが、アンケートをとったところ、1番楽しかったのは静岡での体験だったという回答が目立ちました。あくまで国内を重点に誘致活動をしていますが、中国や台湾、韓国向けのパンフレットも作製しました」

 ―海外では「静岡」の知名度はいかがですか。

 「台湾で会った学校の先生は『静岡』は知らないが、富士山は知っていました。富士山があるなら静岡はいい所ね―と話は進みます。ただ今の訪日旅行は最初に料金ありきの価格戦争になっています。でもわれわれは中身で勝負するつもりです。満足のいく内容ならその料金に納得してくれると信じています」

 ―内容は体験型にこだわっていくわけですね。

 

「国は全国すべての小学生に農山漁村で長期宿泊の体験をさせる施策を打ち出しました。われわれのしてきたことは間違ってなかったと自信を持ちました。何でも詰まった幕の内弁当のような旅行プランは用意しません。教育や体験に特化した旅行を大人にも外国の人にも売り込んでいけばいいと考えています」

 ―今後はどのような戦略を立てていますか。

 

「静岡市では中山間地の過疎化が問題になっています。そこに住んでいる方に地域の自慢をどんどんしていただき、子どもたちをどんどん送り込んでいく。それが地域の活性化にもつながります。子どもの受け入れはボランティアではなく有償で引き受けてほしい。そうでないと長続きしません。そのためにも地域をよく知る現地のコーディネーターを育成していこうと思っています」




■次回(5月4日=日曜日)は「観光と地域活性化を考える」投稿特集
 牧田さんの話からは、日本の文化といえる古き良き旅館の情緒を守っていかなければという使命感も伝わってきます。一方、体験型の教育旅行こそ生きる道―と宮城島氏の信念は強そうです。手応えも感じている様子です。2人とも立場も手法も違いますが、故郷をどうにかしたいという気持ちは同じと言えるでしょう。次回は「観光と地域活性化を考える」の投稿特集です。読者の方々の感想や意見をお待ちしています。地域が元気になるような観光戦略の提案も歓迎します。


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