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メタボ健診とどう付き合う  インタビュー(2)  (08/05/18)

 メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目し、40―74歳のすべての人を対象に行う特定健診制度がスタートしました。医療保険者ごとに対象者の受診率などの目標が定められ、達成率が低いとペナルティーが科せられるなど、これまでにない制度への戸惑いの声も聞かれます。今回は国民健康保険の保険者である市町の首長と、実際に受診者と向き合う健診専門医という違った立場で制度にかかわる県内の2人に、制度に対する評価や今後の課題を伺いました。

静岡市医師会健診センター長
田内 一民氏
 たうち・かずたみ氏 1949年、徳島県生まれ。順天堂大医学部卒。2000年から現職。総合健診指導医、日本総合健診医学会理事、元静岡健康管理センター所長。
測定データ統一が利点

 ―ふだん患者や受診者と接している医師として、新しい健診制度をどう評価していますか。

 「健診の目的は、従来の早期にがんや成人病などを発見するということから、その人の生活習慣のどこに問題があるかを見つけてそれをどう変えるか、個人の健診データをいかに長期にわたって経過観察しながら、健康状態を見ていくかということに変わっている。そういう視点から見ると、今回の生活習慣病を中心にしてメタボ健診を実施するというのは、そんなに不思議な話ではない。今までの健診制度と大きく違うのは、健診を義務化することと成果の上がらない保険者にペナルティーを科すこと。批判はあるが、国が健診を後押ししてくれるととらえれば良いのではないか。行政による後押しと確実なフォローはわれわれにとっては非常に喜ばしい」

 ―新しい健診制度のどのような点がメリットだと思いますか。

 「一番良かったのは、今までばらばらだった健診データの測定値を統一したことだ。これまでは医療機関が違えば、同じ血液でも試薬や機械、方法などによって測定するデータが違い、さらに同じ数字が出たとしても医師によって評価が違った。静岡県では24年間かけてデータを統一しようと努力し、どのセンターで健診を受けてもほぼ同じような数字が出るところまで持ってきたが、例えば、よその県で健診を受け、転勤で静岡県にやって来た人のデータは使えなかった。ところが、データで判定する特定健診は医療機関によって違う数字が出てきたら評価が異なるので、今年4月までにデータを全部統一するということになった。メートル原器に合わせるようなものだ。ただ、受診勧奨項目にあるLDLコレステロールは統一が間に合わなかった。これだけはまだ問題がある」

 ―腹囲などの判定基準に批判もありますが。

 「8学会が作成したメタボの判定基準で評価するので、年齢、性別の点から当てはまらない人が出るのは当たり前だと思う。しかし、最初は何らかの基準が必要で、これは何年かすればデータがどんどん蓄積されてくる。今までは基準がばらばらだったせいで、データの蓄積もせいぜい数万人だったが、今後、何千万人分が集まるようになれば、分析も簡単にできるはず。判定基準もそれに合わせた形で、またレベルの高いものになっていくだろう。新制度の狙いは太っている人はより病気になりやすいから、今回はそういう人たちを中心に、生活習慣を改善するよう重点的に対策を講じましょうということ。確かに腹囲が基準以下でも高血圧の人や糖尿病の人はいるが、最初から問題のある人すべてをすくい上げようとは考えていない」

 ―新制度にどのような効果を期待しますか。

 「1年に1日ぐらい、自分の健康について考える時間があってもいい。メタボ健診は腹囲、血圧、血糖値など基準がはっきりしていることや腹囲、血圧などを自分で測れることなどのメリットがある。また、毎日30分の運動と食事をコントロールすれば、1カ月に1キロぐらいのペースで体重を落とすことも可能。生活習慣を改善する努力をすれば、効果が得やすいという点でも、メタボに焦点を当てたのは正解だったかもしれない」

 ―制度上の問題点、あるいは今後、課題になる点は何だと考えますか。

 「健診による効果と医療費の削減というのは根本的に別問題。健診の効果があがって長生きする人が増えれば、社会全体としては医療費が増える可能性もある。医療費が増えた減ったで、今度の健診制度の効果を評価するのは勘弁してほしい。それとメタボ以外の健診をどうするかも課題。今まで市町村は老人保健法プラス胃や胸部レントゲン撮影などの健診を行ってきたが、特定健診が義務化されたことで、お金のある市町村はほかの健診もやるが、ないところは特定健診だけということにならないか。また、特定健診でひっかかったからといって病気ではない、病気になる手前だから気を付けましょうという警告だということを、受診者に理解してもらうことも重要だ」



 牧之原市長
西原 茂樹氏
 にしはら・しげき氏 1954年、牧之原市生まれ。金沢大工学部卒。2005年から現職。相良町議1期、県議4期。県生活習慣病対策協議会副会長など歴任。

保健指導の成果未知数


 ―特定健診を実施する国民健康保険の保険者の立場から、特定健診をどのように見ますか。

 「問題となっている後期高齢者医療制度と同様に準備期間が短く、説明不足の状況だと感じている。ただ、市町が実施主体となる分だけ、市民により真剣に説明してきた結果、後期高齢者医療制度ほどは混乱せずにスタートできる。メタボに対する国民の関心は高いので、全体としては推進していけば良い制度だと思うが、健康づくりの側面でなく、医療費をいかに抑制するかという目的が前面に出すぎたために制度をいじりすぎたという感じは否めない。同じ特定健診にもかかわらず、保険者が違うと費用が違ったり、項目の追加などで健診内容が違うことにも違和感を感じる」

 ―制度がスタートしました。どのように対応していきますか。

 「当面、受診率向上に努めていく。3月までの特定健診の申し込み状況を見ると、40歳―74歳の国保被保険者のうち、約30%から申し込みがあった。本年度の受診率の目標40%は何とか達成できるかもしれないが、平成24年度の65%を達成するのはかなり厳しい。達成するには、かかりつけ医での受診が前提になるだろう。保健指導の成果を上げられるかは、やってみないと分からないというのが本当のところだ。ただ、市民には『健診を受けてくれないと、あなたの国保税が上がってしまう』と呼び掛けていく。市町がペナルティーを科せられると訴えても、一般の人に実感してもらうのは難しい」

 ―保健指導の成果が上がらない場合に、後期高齢者医療制度への支援金が減算されるなどのペナルティーには、市町などから反発が強いですね。

 「国はこれまで莫大なお金をかけて健康づくりをやってきたが、実際には医療費はどんどん膨らみ、国民の健康が劇的に改善したということもなかった。ところが今度はいきなり市町などの保険者に、健康づくりの責任を取れと言ってきた。国は何の責任も取らなかったのに、保険者には実績が上がらなければ、ペナルティーを科すというのはひどい話だと思う。今はペナルティーを科すと言っているが、実際には国と自治体の議論が行われ、もっと現実的な方向に向かうのではないか。ただ、このことは市民の健康づくりに実績を挙げる点で、チャンスととらえることもできる。無駄を省けるし、いろいろなアプローチも可能になるはずだ。与えられたカードの中で、全力で取り組みたい」

 ―市民はどのように受け止めていると感じていますか。

 「牧之原市では、これまでも国保で人間ドックに補助金を出していたが、今年は資料の中に特定健診とセットでやる人間ドックの案内を入れたところ、申し込み数が昨年の3倍に増え、初めて受診するという人が急増した。特定健診に関する運動をいろいろやる中で、市民の間で健康への関心が高まっているのは事実。榛原総合病院では、空いているフロアを健診センターにして、健診と人間ドックを専門にやろうということで準備をしている。総合病院の健診機能を強化していきたい。どこの医療機関でも、いつでも健診が受けられるようになると、受診率は大幅に向上すると思う」

 ―今後、制度を推進するための課題は何でしょう。メタボの判定基準に批判があることについてはどう考えますか。

 「加入している保険によって料金が違うのは、公平公正の点から問題があるのではないか。また、企業では半強制的に行われるため、受診率は良くなるだろうが、特に国保では、メタボぎみであることを自覚しているような人たちに受診してもらうのは難しい可能性がある。判定基準はどこかで区切らなければいけないので、一定の数値でスタートしたこと自体は認める。ただ、あいまいな部分、例えば男性で腹囲85センチを超さないけれども、血圧や中性脂肪が高いなどの問題がある人もたくさんいる。そうした場合は、運用面で保健指導の対象として拾い上げることをしていかなければいけないのではないか」




■次回(5月25日=日曜日)は「メタボ健診とどう付き合う」投稿特集
 インタビューはいかがでしたか。田内さんは健診データの測定値を統一できた点を指摘し、蓄積や分析が進めば判断基準もレベルの高いものになるだろうと主張しました。西原さんは、平成24年度の受診率65%達成は難しいことや、保健指導の成果が上がらない場合にペナルティーを科されることに疑問を呈しつつ、市民の健康づくりへのチャンスととらえることもできるとしました。次回は投稿特集です。皆さんが考える健診の利点や課題、在り方などをお寄せください。お待ちしています。


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