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温暖化対策どう進める  インタビュー  (10/01/23)

 地球温暖化対策として、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスを2020年までに1990年比で25%削減−。鳩山由紀夫首相が打ち出した積極方針は世界の注目を集めるが、国内では財界中心に批判的な声も根強い。日本はどう進むべきか。

環境エネルギー政策研究所長
 飯田 哲也 氏
 いいだ・てつなり氏 1959年、山口県生まれ。京都大原子力工学科卒。NPO法人環境エネルギー政策研究所長。25%削減の政府検討チーム委員、事業仕分け人も兼務
 企業の削減努力が基本

 −25%削減構想をどう評価しますか。

 「地球温暖化対策はこれまで欧州連合(EU)の孤軍奮闘だった。そこに、ともに政権交代した日本と米国が加わって、前向きの機運に変えたことは意義が大きい」
 「日本の論調はこの水準でも大変という感じだが、発展途上国が要求する削減レベルに先進国平均で届いていない。温暖化による被害を少なくするため、先進国は2020年までに1990年と比べ25〜40%減らさなければならない。25%はその最低水準だ。最近は科学者から、それでも甘いという評価もあり、いっそうの削減が求められる可能性は十分にある」

 −目標は達成可能ですか。

 「やるべきことをやれば可能だ。日本はこれまで実効的な政策が皆無だった。発電、製鉄、セメントなどの産業は約180事業所だけで国内で排出されるCO2の50%以上を出している。その削減が重要だ。全体に排出量の総量枠(キャップ)を設けて企業間の取引を認めるキャップ・アンド・トレード制度導入が基本になる」
 「利益を落とさずに削減する手段はある。例えば日本は鉄の生産コストが高いので、リサイクル鉄に特化する。鉄鉱石から作る鉄に比べてエネルギー消費量が4分の1で済むので、これをもっと大量に国内で回す。製鉄所やセメント工場の自家発電は石炭火力から天然ガスに変える、省エネで劣る事業所に対策を促す。こういう施策で25%削減の大半は達成できる」

 −電力会社はどうでしょうか。

 「電力会社は石炭火力発電所を90年代からひたすら増やしており、さらに増やす計画だ。まず増設は直ちにやめる。短期的には効率が低い順に既存の石炭火力を閉鎖し、天然ガスを使う高効率のコンバインドサイクル発電に変える必要がある」
 「一方で自然エネルギーの導入を極めて大胆に図る。民主党は、自然エネルギー電力の割合を現在の10%から25%に引き上げるとマニフェスト(政権公約)に掲げた。それを実現するため、自然エネルギーの長期にわたる買い取りを電力会社に義務づける固定価格買い取り制度の導入などを進めるべきだ」

 −対策を進めるための財源はどうしますか。

 「国による大きな投資は不要だ。再生可能エネルギーの利用や省エネへの投資は最終的には企業にエネルギー費用の節約として戻る。企業は海外から化石燃料を買い、年間20兆円払っている。それが減らせるので、究極的にはそこを財源にできる。キャップ・アンド・トレードの導入で生まれる膨大な財源は、将来の低炭素社会構築に向けたインフラの整備に使えばいい」

 −家計負担がかなり増えるとの見方もありました。

 「麻生太郎前首相が言った『世帯当たり36万円の負担増』は今すぐ国民全員が負担するかのような誤解を与えた。実は経済成長が続くことを前提に、可処分所得が20年には今より76万円増え、豊かになるという試算だった。それなのに何も対策を取らない場合に比べ可処分所得が22万円少なく、光熱費が14万円高いという点だけを強調した」
 「温暖化を放置すれば、将来20%の経済損失が出る可能性がある。今1%の投資をすれば、それを回避できるチャンスがある。温暖化を引き起こしたのは先進国の今の世代。責任ある政治家なら、わたしたちにはより多く負担する責任があると伝えるべきではないだろうか」



 日本経団連21世紀政策研究所研究主幹
澤 昭裕 氏
 さわ・あきひろ氏 1957年、大阪府生まれ。一橋大卒業後、通産省。2004年から08年まで東大先端科学技術研究センター教授。07年から現職

 消費者への転嫁不可欠


 −鳩山由紀夫首相の25%削減構想は海外で高く評価されましたが。

 「そうだろうか。オバマ米大統領は『大胆な案に印象づけられた』と皮肉っぽい反応で、欧州連合(EU)は日本が突出した負担をしてくれることを喜んだというのが実情ではないか。唯一評価できるのは、各国の参加を前提条件とした点だ」
 「京都議定書交渉は、自国の負担を最小限に抑えるよう各国間で激しい交渉が行われ、その結果、合理的な根拠もない削減目標が課せられた。その愚を繰り返さないため、産業界から家庭まで各部門別に潜在的な削減可能性を科学的に分析し、そのコストに基づいて実行可能なことを積み上げていくセクター別アプローチに方向転換しつつあった。その中であれば先端技術を持つ日本が主導権をとれる可能性が高いのに、鳩山構想は再びトップダウン方式に戻してしまった」

 −25%削減をそのまま進めた場合の日本経済への影響は。

 「07年度実績は柏崎刈羽原発が動いていないこともあるが、90年比で9%増。昨年秋からの急速な景気後退で温室効果ガス排出量は減ったが、それでも09年の見通しはせいぜい横ばいかマイナスになる程度。10年先とはいえ、国内対策(真水)だけで目標を実現しようというのがいかに困難かが分かるだろう」
「温暖化対策を進めると経済を縮小せざるを得なくなり、税収が減り財政事情が一層悪化する。このためある程度成長率を確保する必要があるが、成長率を上げるとCO2も増えてしまい、さらに対策を強化しなければならないというジレンマを抱えている」

 −民主党はマニフェストに国内排出量取引制度と地球温暖化対策税(環境税)の創設をうたっています。

 「排出規制が強化される流れは当然だが、導入を自己目的化するのはおかしい。現在、日本経団連の傘下企業は分野ごとの自主行動計画で十分成果をあげており、それで目標が達成できれば制度を入れる必要はない」
 「排出量取引は、上限内に抑えられない企業は排出権をよそから買い入れることになるが、価格は期末の需要次第なので期初にはわからず、ヘッジしておかなければならない。そこに金融機関のうまみが生じるが、財務技術にたけた人材が手薄な中小企業には負担が大きい。先行導入している欧州諸国をみても上限が恣意(しい)的に決まる問題もある」

 −どちらかといえば税の方が望ましいと?

 「税の方が透明性が高い。ただ、脱化石燃料の効果をあげるためにはガソリンなどへの暫定税率分をそっくり環境税に移すだけでは足りない。ガソリンは生活必需品に近いので例えば1リットル当たり300円前後にしなければ消費抑制効果が出ないのではないか。それよりもエネルギー消費全般に広く課税する仕組みを考えていく必要がある」

 −今後の政府の役割は。

 「増税は一般に抵抗が強いので、一般国民には無縁のような感じがする排出量取引を推す空気があるが誤解だ。07年度の家庭を含めた民生部門のCO2排出量は90年比42%も増えている。誰も触れたがらないが、企業への排出量規制のコストがきちんと消費者に転嫁されないと、国民の化石燃料消費量は減らない。それを伝えるのは政治の仕事だ。その際、低所得者や、寒冷地が割を食うという格差をどうするかもきちんと議論していく必要がある」



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